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サラリーマン、異世界で英雄になる①

あらすじ

佐藤慎太郎は、退屈で無感動な日常を送っていた平凡なサラリーマン。仕事に追われ、家族との関係も冷え切り、唯一の楽しみは晩酌とニュース番組だけ。しかし、ある晩、突然彼の部屋に現れた異世界への扉によって、慎太郎の平凡な生活は一変する。

彼が足を踏み入れた先には、魔法や超能力を持つ者が暮らす、異次元の世界が広がっていた。そこで彼は、「選ばれし者」として迎えられ、異世界を守るための役目を果たすことを命じられる。慎太郎は最初、戦闘や魔法に対して無力だったが、次第に現実世界で培った「問題解決能力」を駆使し、仲間たちと共に数々の困難を乗り越えていく。

やがて、彼は自らの力の源泉が「地味な努力」や「戦略的思考」であることに気づき、魔法や力任せの戦闘ではなく、計画と判断力で異世界を救う鍵を握る存在となる。そして、世界を滅ぼそうとする悪しき力との壮絶な決戦に挑むことになる。

最終的に慎太郎は、悪しき力を封じ込め、異世界を救うことに成功。しかし、彼の役目はまだ終わっていなかった。異世界と現実世界をつなぐ扉を開くこととなり、彼は両方の世界を守る責任を背負い、新たな冒険が始まるのだった。平凡なサラリーマンから、世界を変える力を持つ英雄へと成長した慎太郎の物語は、まだ終わりを迎えない。

第1章: 退屈な日常の崩壊

佐藤慎太郎は、ただのサラリーマンだった。朝、目覚まし時計が鳴ると、彼は無表情で布団から抜け出し、無駄に感じる出勤準備をこなしていく。朝食も昼食もコンビニの弁当がほとんどで、味も何も感じず、ただ胃袋に流し込むだけ。駅に着けば、同じ顔ぶれの乗客たちと一緒に満員電車に揺られ、無意味に時間を浪費する。彼にとって仕事はただの義務であり、情熱も興味もなかった。

「今日も一日、また何も変わらないな…」

仕事終わりの帰り道、ふと心の中で呟いた。疲れた顔で会社のビルを出ると、彼はすぐに近くの居酒屋へ向かう。仲間と呼べる人間もいないので、いつも一人でカウンターに座る。酒を飲みながらテレビを眺め、流れてくるニュース番組に目を向けるだけの時間が、彼にとって唯一の「楽しみ」と呼べるものだった。テレビ画面の中で、他人の物語が進行しているのを見ながら、慎太郎は自分の無力さを感じていた。

家に帰ると、冷えた部屋に誰もいない。小さなダイニングテーブルには、食べかけの弁当が置かれ、ただ一人で黙々とそれを食べる。その後、ソファに倒れこむと、ボーっとテレビを見ながら時間を無駄に過ごし、目が重くなったところで、眠りにつくのが日々の流れだった。

だが、その晩は何かが違った。

眠りに落ちる直前、彼はいつもより少しだけ不安な気持ちを抱えていた。明日の会議でまたあの無理難題を押し付けられるのかと思うと、憂鬱な気持ちが湧き上がった。しかし、そのまま眠りに落ち、気がつけばいつものように寝室の天井を見上げていた。

だが、目を開けた瞬間、世界が違っていた。

部屋の中に、突然、大きな扉が現れていたのだ。扉は真っ白な光を放ち、その光が慎太郎の目を引き寄せるように広がっていた。最初は夢かと思ったが、あまりにも現実的で、周りの静けさも異常だった。部屋にぽっかりと浮かんだその扉は、どこか無機質で不気味であり、彼は身動きが取れなかった。

「これ、何だ…?」

慎太郎は思わずつぶやくと、扉の前に一歩近づいた。足音もなく、扉は開かれ、彼の目の前に新たな世界が広がっていった。

目の前には、見たこともない風景が広がっていた。空はどこまでも青く、太陽の光が異常に強く輝いている。だが、最も驚くべきは、その景色の中に浮かぶ巨大なドラゴンだった。まるでその存在が世界の一部であるかのように、悠然と空を飛んでいる。建物も見慣れない形をしていて、まるで未来の都市か、はたまた異次元の遺跡のように感じられた。

「こんな…場所、どこだ?」

慎太郎はその不思議な光景に言葉を失った。ただの夢だと思いたい気持ちが強かったが、身体が異常に重く、彼は現実の世界に引き戻されることはなかった。しばらくその場に立ち尽くしていると、遠くから誰かが歩いてくるのが見えた。

その人物は、ひとりの男だった。身なりはとても奇抜で、顔には優れた戦士のような雰囲気が漂っている。その男が慎太郎の前に立つと、何も言わずに一礼をした。

「あなたが選ばれし者です。」

その一言が、慎太郎の全身を震わせた。頭の中が混乱し、体はまるで動けないように固まっていた。選ばれし者? 何がどうなっているのか、全く理解できなかった。

だが、これが夢でないことはすぐに分かる。目の前に広がる世界、そのすべてがあまりにも現実的だったからだ。

「選ばれし者として、あなたには世界を救うための力を授けます。」

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