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派遣社員、ブラック企業をぶっ壊す!②

第四章:経営陣との対立

労働基準法を無視し、社員たちを酷使し続けてきた 株式会社 東都システムサービス。
しかし、今、その体制に 亀裂 が入り始めていた。

直樹の動きに気づいた経営陣が、ついに 「反撃」 に出る。

経営陣の圧力
ある日の午後、直樹がオフィスの端で給与明細を見ながら未払い残業代を計算していると、不意に肩を叩かれた。

振り返ると、そこには険しい顔をした 田村課長 が立っていた。

「佐藤、ちょっと来い」

(……来たか)

直樹は静かにファイルを閉じ、立ち上がった。
向かった先は、フロアの隅にある 会議室。

中に入ると、そこにはすでに 二人の男 が座っていた。

一人は 総務部長の宮崎。
五十代半ばの小太りの男で、無愛想な顔つきが特徴だ。

もう一人は 専務の藤沢。
スーツをピシッと着こなし、常に冷静な表情を浮かべているが、その目つきには 敵意 が滲んでいた。

扉が閉まると同時に、宮崎部長が 低い声 で言った。

「……お前、余計なことしてるんじゃねぇよ」

「派遣のくせに、生意気なマネをしやがって」

田村課長が続ける。

「俺はな、ずっと見てたんだよ。お前が何かコソコソやってるのをな」

直樹は静かに二人の顔を見回し、椅子に座った。

「何の話ですか?」

「とぼけるな」

藤沢専務が ピシャリ と机を叩く。

「お前、うちの社員たちに変なこと吹き込んでるそうじゃないか?」

「変なこと?」

「労基法だの、残業代請求だの、くだらねぇことだよ」

直樹は ゆっくりと笑った。

「くだらない、ですか。じゃあ、お聞きしますけど……」

ファイルを開き、給与明細のコピーを机の上に並べた。

「これ、どう説明するんですか?」

そこには、社員たちの未払い残業代の計算結果 が明確に示されていた。

毎月最低15万円以上の未払い残業代が発生している。
それが 社員全体に適用されれば、未払い総額は数千万円に及ぶ可能性がある。

藤沢専務の眉がわずかに動いた。

しかし、宮崎部長は鼻で笑う。

「ハッ……そんなもん、どこにでもある話だろうが」

「そうですね。でも、どこにでもある話でも 違法行為 であることに変わりはありません」

「チッ……」

「違法行為をしているのはどっちですか?」

直樹の言葉に、田村課長の顔が赤く染まる。

「てめぇ……!」

拳を握りかけるが、藤沢専務が手を上げて制した。

「……佐藤、お前は派遣社員だよな?」

「ええ、そうですが」

「なら、関係ないだろう。正社員でもないお前が、なんでこんなことをしている?」

「関係ない?」

直樹は軽く笑い、視線をまっすぐ藤沢専務に向けた。

「俺が見たんですよ。毎日遅くまで働かされて、心がすり減っていく社員たちを」

「派遣だからって、見て見ぬふりはできません。俺は……そんなの、嫌なんでね」

「……お前なぁ」

宮崎部長が呆れたようにため息をつく。

「そんなに正義感振りかざしたって、どうにもならねぇんだよ。世の中ってのは、そういうもんだ」

「はぁ……そうですか」

直樹は苦笑しながら、スマホをポケットから取り出した。

「じゃあ、これはどうです?」

彼が画面をタップすると、録音データが再生された。

『タイムカードは適当に押しとけ。どうせ勤務時間なんて調整できるんだからよ』

『残業代? そんなもん払えるかよ。黙って働け』

再生されたのは、田村課長の発言の録音 だった。

「……っ!?」

田村課長の顔が一瞬で蒼白になる。

「なっ……」

藤沢専務も目を細めた。

「お前……まさか」

直樹は静かに言った。

「証拠は揃ってます」

「労働基準監督署に通報する準備もできています」

「そして、会社に改善が見られなければ、集団で未払い残業代を請求します」

静寂。

まるで、オフィスの空気ごと凍りついたかのようだった。

しばらくして、藤沢専務が 低く呟くように言った。

「……お前、クビになりたいのか?」

直樹は 即答した。

「どうぞご自由に。でも、その場合はすぐに 労基署とマスコミに情報提供 させてもらいます」

宮崎部長が顔を歪める。

「おい……脅してんのか?」

「脅しじゃありません。選択肢 です」

直樹は真っ直ぐに彼らを見据えた。

「会社が このまま違法行為を続けるのか」

「それとも 改善するのか」

「……どっちを選ぶんですか?」

会議室には、しばらく誰の声も響かなかった。

直樹 vs. 経営陣

全面戦争が、ついに始まった。

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