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餅太郎②
第五章:飢餓の村の救済
餅太郎が次に訪れたのは、飢餓に苦しむ小さな村だった。そこは、厳しい乾季が続き、農作物は枯れ果て、土地は干からびていた。村人たちは日々、どうにか食べ物を見つけようと苦しみ、子どもたちは衰弱し、顔色が悪く、大人たちも重い足取りで働くことすらできない状態だった。村の広場では、何人かの村人が集まって、どうにかして食糧を分け合っている様子が見受けられたが、その食べ物もほとんどが底をつきかけていた。
その村に、ある日突然、餅太郎が現れた。荒れた道を歩き、疲れきった村人たちの目に餅太郎の姿が映ると、まるでその風景に奇跡が現れたかのように感じられた。村人たちは最初、その存在に驚き、誰もが何を求めているのかと警戒心を抱いていた。しかし、餅太郎はただ微笑みながら、無言で大きな袋を広げ、そこからふわっと白く輝く餅を取り出しては、村人たちに手渡していった。
「これが、お前たちの助けになるだろう。」餅太郎は静かに言った。その声は温かく、まるで全身からやわらかな光がこぼれ出ているかのように、村人たちの心に深く染み渡った。
村人たちは、初めて手にする餅に恐る恐る手を伸ばし、ひと口食べてみることにした。瞬間、彼らの顔に驚きが広がった。餅の中には、ただの食物を超えた力が宿っていた。それは、失われた体力を一気に取り戻すような栄養豊富なもので、温かくてほっとする味わいが広がると共に、体の中から力が湧き上がってくるのを感じた。
「この…温かさ…!」「これが、私たちの食べ物か…?」村人たちは声を上げ、みるみるうちにその表情が明るくなった。餅を食べたことで、彼らの体が少しずつ元気を取り戻し、目に力が宿っていった。
餅太郎はその後も次々と餅を作り、村のすべての人々に行き渡るようにした。そして、彼は村人たちに言った。
「お前たちは今、力を取り戻した。だが、力を得ただけでは何も変わらない。これからはお前たちの力を合わせて、この村を再生するんだ。」餅太郎の言葉は、村人たちの心に響き、すでに力を取り戻した彼らは、再び畑を耕すために立ち上がる決意を固めた。
村の人々は、餅太郎の言葉に背中を押されるようにして、徐々に作業を始めた。まずは水路を修復し、次に干からびた土を耕し、必要な作物を植える準備を始めた。その作業が進むにつれて、村人たちは次第に協力し合うようになり、以前のような疲れた表情ではなく、希望に満ちた顔が広がっていった。特に子どもたちの顔に、久しぶりに笑顔が戻り、その元気さに周りの大人たちも勇気づけられた。
餅太郎は、村の広場で村人たちの作業を見守りながら、静かに微笑んでいた。彼は言葉少なに、ただその場に立ち続けていたが、その存在がどれほど力強いものであったかは、村人たちには十分に伝わっていた。
数週間後、畑に新たな芽が出始め、村は少しずつ活気を取り戻していった。かつて飢餓に苦しんでいた村は、今や次第に栄養が豊富で、力強い作物を育むことができるようになった。村人たちは、餅太郎から学んだ協力と努力を大切にし、その力を使って新しい未来を築いていくことを誓った。
餅太郎は、村を後にする時、再び村人たちに微笑みながら言った。「お前たちは、もう自分の力で生きることができる。これからは、この村を支え合いながら育てていってほしい。」そして、村人たちは餅太郎に感謝の気持ちを込めて、最後の別れを告げた。
餅太郎は再び旅路を進み、次の場所へと向かっていったが、彼が与えた力と希望は、この村に永遠に刻まれることとなった。
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