現代版 わらしべ長者 — 小さな一歩が未来を切り開く
迷走の先に見えた道
現代の日本、東京都内のとある町に、ヒロキという名の若者が住んでいました。大学を卒業してから、ヒロキの生活はまさに迷走の連続でした。大学では特に目立った専門分野を選ばず、何かしらのスキルを身に付けることなく卒業してしまいました。周りの友人たちは、すでに内定をもらって就職が決まり、それぞれの未来に向かって歩み始めていましたが、ヒロキは焦りと不安を感じるばかりでした。
「自分だけ取り残されているのではないか?」と毎日のように思い、就職活動も上手くいかず、何度も面接で振られては落ち込んでいました。どんな仕事を目指していいのかもわからず、ただ「安定した仕事に就かなくてはいけない」というプレッシャーだけが重くのしかかっていたのです。
そんなある日、ヒロキは地元のコンビニでアルバイトを始めることになりました。「とりあえず生活のために働こう」という気持ちが大きかったものの、その選択肢にも不安がありました。周りには大学卒業後に正社員としてバリバリ働くことを期待されているのに、アルバイトを選んだ自分が情けなく思えたのです。実際、最初の頃は「これでいいのかな?」と自問自答する日々が続きました。
コンビニでは、レジを打ったり、商品の棚を整理したりといった基本的な仕事がメインでした。正直、毎日が単調で、繰り返しの作業に疲れることもありました。お客さんと会話を交わすことも少なく、ヒロキは一人で黙々と仕事をこなすことが多かったのです。通勤途中の満員電車で、何度も「あの時、もっとしっかり就職活動をしておけばよかったのでは?」と過去を振り返り、自己嫌悪に陥ることもありました。
しかし、そんな日々の中で、ヒロキを支えてくれたのはコンビニの店長でした。ある日、仕事が終わる直前に店長から声をかけられました。「ヒロキ、君にはすごくいいコミュニケーション力があるよ。もっとお客さんと会話してみな。笑顔で接すれば、お客さんも喜んでくれるし、君の仕事ももっと楽しくなると思うよ」と言われたのです。
その言葉は、ヒロキにとって目から鱗のようなものでした。自分の強みがあることに気づかなかったのです。確かに、人と話すのは苦手ではなかったし、常連客と顔を合わせることも多く、その度に軽い挨拶や会話を交わすことはありましたが、店長の言葉をきっかけに、もっと積極的にお客さんとコミュニケーションを取るようになりました。
最初は照れくさい部分もありましたが、徐々にヒロキは「いらっしゃいませ!」や「お疲れ様です!」だけではなく、少しでもお客さんと心温まる会話をするよう心掛けました。例えば、天気の話や近所の出来事、忙しい時間帯の少しの冗談など、ちょっとした気配りと心のこもった言葉で接するようになったのです。それにより、ヒロキの周りには、少しずつ常連客が増え、顔を見て挨拶を交わすだけでなく、買い物の際にも何気ない会話が生まれるようになりました。
ヒロキは、ただのアルバイトという仕事の中でも、自分の成長を感じることができました。最初は「これでいいのかな?」と不安でいっぱいだった日々が、少しずつ自信を持って過ごすことができるようになったのです。コンビニの店長の一言が、ヒロキにとって大きな転機となり、「どんな仕事も意味があるんだ」ということを学びました。そして、コミュニケーション能力をさらに高めていくことが、次のステップに進むための礎となることを、少しずつ実感していったのです。
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