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深夜2時の着信

あらすじ

主人公のもとに、深夜2時ちょうど に毎晩かかってくる 謎のワン切り電話。
知らない11桁の番号からの着信に、最初はただの 間違い電話 かと思っていた。

しかし、一週間経ってもワン切りは止まらない。
苛立ちと不安に駆られた主人公は、ついに 折り返し電話をかけてしまう。

通話の向こうから聞こえたのは、低く冷たい声――

「もう遅い」

その日を境に、主人公の生活は急激に崩壊していく。

口座の残高がゼロになり、クレジットカードには身に覚えのない高額請求が並ぶ。
さらに、スマホのギャラリーには、誰も撮ったはずのない"自分のアパートの玄関前"の写真 が保存されていた。

撮影時刻は、昨夜の深夜2時――ワン切りが鳴った時間と同じだった。

恐怖に駆られた主人公は警察に相談するが、証拠となるはずの写真はなぜか消えていた。
「見られている」という不気味なメールが届き、古いスマホを捨て、新しい端末に変えても、ワン切りは止まらなかった。

ついに、ワン切りの主は"直接"接触を試みてくる。

深夜2時。部屋のチャイムが鳴る。
郵便受けには、一枚の写真が入っていた。

そこに映っていたのは――

"今まさにスマホを覗き込んでいる主人公の姿"だった。

やがて、スマホの画面に表示されたメッセージ。

「次は、直接会いに行く」

それ以来、ワン切りはピタリと止まった。
だが、主人公は逃げ切れたわけではなかった。

引っ越し、新しい番号に変え、誰にも住所を教えていないはずなのに――

どこへ行っても、深夜2時になると背後に"気配"を感じる。

決して振り向いてはいけない。
なぜなら、あの番号の持ち主はもう電話の向こうにはいないのだから――。

―― その電話、決して折り返してはいけない。

序章:深夜の着信

夜はすでに更けていた。
部屋の中は静まり返り、カーテン越しに月の光がぼんやりと差し込んでいる。

布団の中で微睡んでいた俺は、不意に響いた振動音で目を覚ました。
スマホが枕元で震えている。

「……?」

半分眠ったままの頭で、ゆっくりと手を伸ばす。
画面を確認すると、そこに表示されていたのは 見知らぬ11桁の電話番号 だった。

非通知ではない。だが、登録されていない番号。

こんな時間に誰が?

仕事の関係者か?
それとも、友人が酔った勢いでかけてきたのかもしれない。

だが、何かが引っかかった。

――この時間に電話をかけてくる理由があるだろうか?

午前2時。普通なら、誰もが眠っているはずの時間。
この番号には見覚えがないし、心当たりもない。

「……出るべきか?」

指が通話ボタンの上で止まる。

だが、その瞬間――

プツッ

電話は切れた。

ワン切りだった。

「……なんだよ。」

眠気とともに微かな苛立ちがこみ上げる。
間違い電話か、それとも悪質なイタズラか。

時計を見ると、2時ちょうど。
偶然か?

不審に思いながらも、すぐにスマホを伏せ、布団をかぶった。

しかし、翌日――いや、それ以降も 毎晩 決まって2時ちょうどに、同じ番号からのワン切りが続くことになるとは、その時の俺は知る由もなかった。

最初は無視をしていた。だが、日が経つにつれ、次第に気味が悪くなっていく。

気になり、番号をネットで検索してみた。
だが、該当なし。

「まあ、放っておけばいいか…」

そう思っていた。

それが、取り返しのつかない間違いだった――。

第一章:折り返した代償

ワン切りは相変わらず続いていた。

毎晩、午前2時ちょうど。

スマホの画面が光り、バイブレーションが静寂を震わせる。
それを無視して、ただ目を閉じてやり過ごす夜がもう何日続いただろうか。

最初は気味が悪いだけだった。

だが、一週間も同じことが続くと、次第に苛立ちが勝ってくる。

「いい加減にしろよ…」

ベッドの上でスマホを握りしめ、俺は深く息をついた。

今夜も、また2時ちょうどに着信があった。
相変わらずの11桁の番号。

拒否しても意味がない。ブロックしても、翌日には別の番号でかかってくるかもしれない。
どうせなら、一度折り返して、決着をつけるべきではないか?

イタズラなら怒鳴ってやればいい。
業者なら、二度とかけるなと警告すれば済む話だ。

「……もううんざりだ」

決心すると、俺は着信履歴を開き、番号をタップした。

呼び出し音が鳴る。

ツー…ツー…ツー…

何の変哲もないコール音だ。
なのに、妙な不安が胸の奥に巣を作るような気がした。

それでも、何も起こらないまま時間が過ぎる。
誰も出ない。

「……やっぱり、ただの嫌がらせか?」

落胆と安堵が入り混じる感情で、通話を切ろうとしたその瞬間だった。

カチッ

通話が繋がった。

「……聞こえる?」

不意に耳元に響いたのは、低くくぐもった声だった。

男とも女ともつかない、奇妙に冷たい声。
背筋にじわりと寒気が這い上がる。

「……誰だ?」

返事を待つ間、妙な違和感を覚えた。

息遣いが、一切聞こえない。

通常、電話口の向こうには微かな雑音や、呼吸音があるはずだ。

だが、この相手は違った。

まるで、そこには 何もいない かのように、音がしない。

ようやく、相手が再び口を開いた。

「……もう遅い」

囁くような声だった。

静寂を切り裂くその言葉に、心臓が凍りつく。

「……は?」

思わず聞き返す間もなく、通話は一方的に切れた。

何だったんだ、今のは。

不気味なイタズラか、それとも単なる間違い電話か。

「……ふざけんなよ」

妙な胸騒ぎを覚えながらも、俺はスマホを放り投げ、布団を被った。

しばらくは動悸が収まらなかったが、次第に疲れが勝って、眠りに落ちた。

その時は、ただそれだけの出来事。

だが、翌日から、俺の身の回りで異変が起こり始めた。

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