無敵の道、スポーツ王への挑戦②
第5章 地方大会での飛躍
風が心地よく吹き抜ける初夏の朝、颯太は村の駅に立っていた。肩には荷物を背負い、全身には山崎から受けた厳しいトレーニングの成果が詰まっていた。今日は待ちに待った地方大会の日。村の期待を背負い、颯太は都会の競技場へ向かう列車に乗り込んだ。
車窓から見える山々と田畑を眺めながら、颯太はこれまでの日々を思い返していた。山崎の厳しい指導と、何度も自分の限界を超えようと努力した日々——それらすべてが、今日のためにあったのだと思うと、胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
「よし、やるぞ。」
小さく呟いたその言葉は、颯太自身への決意の表明だった。
複数競技に挑む覚悟
地方大会のメインイベントは「デカスロン」だった。デカスロンは陸上競技の十種競技を指し、短距離走、走り幅跳び、砲丸投げ、高跳び、400メートル走、110メートルハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500メートル走という多岐にわたる競技が含まれている。身体能力だけでなく、精神力と戦略が問われる種目だ。
颯太がデカスロンにエントリーしたのは、山崎の助言によるものだった。
「お前は一つの競技だけじゃなく、いくつもの力を持っている。それをすべて試せるのがデカスロンだ。」
最初は不安もあったが、颯太は「自分だけのスタイル」を見つけるための挑戦として、この種目に挑む決意を固めていた。
驚異的なパフォーマンス
大会初日、颯太は短距離走でその俊足を発揮し、観客を驚かせた。特にスタートダッシュの鋭さと、最後までスピードを維持するスタミナは群を抜いていた。次の走り幅跳びでは、空中で体をしなやかに使い、記録を大きく伸ばした。
砲丸投げや円盤投げといったパワー系種目では苦戦が予想されたが、山崎直伝の「効率的な力の使い方」が功を奏し、他の選手に引けを取らない記録を叩き出した。
「颯太、いいぞ! 自分のリズムを崩すな!」
観客席からの応援の声に混じって、山崎の低い声が響いた。その声が颯太の背中を押した。
2日目の最終種目、1500メートル走。デカスロンの総合成績が大きく左右される重要な競技だ。颯太は序盤から安定したペースで走り、最終ラップで他の選手を一気に抜き去るスパートをかけた。その瞬間、会場中がどよめいた。颯太の走りには、ただ速さだけでなく、「最後まで戦う」という強い意志が込められていた。
村の人々からの応援
颯太のパフォーマンスは、地元の村でも話題になっていた。村に設置されたスクリーンには大会の映像が映し出され、村人たちは声を張り上げて応援していた。颯太が走る姿を見て、小さな子どもたちは「颯太兄ちゃん、すごい!」と目を輝かせ、年配の人々も「村の誇りだ」と拍手を送っていた。
大会終了後、颯太は表彰台の上に立っていた。総合2位という好成績だったが、それ以上に彼の戦いぶりが称賛されていた。司会者が「次世代のスター」として彼を紹介すると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。
さらなる高みを目指して
大会後、村に帰った颯太を迎えたのは、村人たちの温かい祝福だった。手作りの垂れ幕や花束が彼を迎え、みんなが口々に「よくやった!」と褒めてくれた。しかし、颯太はその声援に応えながらも、心の中である決意を固めていた。
「これで満足してはダメだ。俺にはまだやるべきことがある。」
颯太は再び山崎の元を訪れ、静かに言った。「先生、次の目標に向けて、もっと厳しいトレーニングをお願いします。」
山崎は微笑みながら答えた。「お前ならきっとやれる。これからが本当の勝負だ。」
颯太の挑戦はまだ始まったばかりだった。地方大会での成功を糧に、彼はさらに高い舞台を目指して走り続ける——その瞳には、次なるゴールを見据えた確かな光が宿っていた。
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