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餅太郎①
あらすじ
新年の餅つきで不思議な餅「餅太郎」が誕生した。おじいさんとおばあさんの愛情を受けて成長した餅太郎は、心優しい性格と癒しの力を持つようになる。やがて世界を旅する決意を固めた彼は、困難に直面する人々を助けるために旅立つ。荒れ果てた村での農作物の復興や戦争で傷ついた兵士たちへの癒しを通じて、餅太郎は人々に希望を与え、平和を取り戻すための大きな役割を果たしていく。
彼の存在が戦争終結の鍵となり、世界に再び平和と温かさをもたらす物語である。
第一章:不思議な餅の誕生
新年の朝、おじいさんとおばあさんは、毎年恒例の餅つきをしていた。寒さの中、炭火のあたたかなぬくもりが家の中を包み込み、木臼に杵を力強く打ち込む音が響く。それはまるで、新しい年を迎えるための儀式のようだった。おばあさんは、細やかな手つきで杵を使いながら、できるだけ美味しい餅をつこうと心を込めていた。
「今年もいい餅ができるといいね。」おじいさんがにっこり笑いながら言うと、おばあさんもにこやかにうなずいた。餅つきが終わる頃には、外はすっかり暗くなり、風の音が家の窓を揺らしていた。あたりはしんと静まり返り、おばあさんはようやく火を消して、つきたての餅を丸め始めた。
そして、できあがったばかりの餅が一つ、二つと並べられた。その中に、ひときわ異様な輝きを放つ餅があった。まるで金色の光がほんのりと漏れ出ているかのような、誰も見たことのない不思議な光景だった。おじいさんとおばあさんは目を丸くして、その餅を見つめた。
「これは…一体何だろう?」おばあさんが声を潜めながら、そっとその餅に手を伸ばす。すると、まるでその手を待っていたかのように、餅がぴょんと跳ね上がり、ふわりと空中に浮かび上がった。
「おや、なんだろう?君は…?」おじいさんが驚きの声を上げると、餅は小さな音を立てて、まるで人のようにふわりとおじいさんの手のひらに降りてきた。餅は丸くてふわふわしており、まるで生きているかのように軽やかな触感があった。
おじいさんとおばあさんは、その餅を不安げに見つめたが、どこか懐かしくも感じられた。長年一緒に暮らしてきた二人は、その不思議な出来事をどう受け止めてよいのか分からなかったが、なんとなくこの餅が特別な存在であることを直感的に感じ取った。
「君、名前はどうしようか?」おばあさんが穏やかな声で尋ねると、餅は何も答えなかったが、まるでうなずくようにふわりと動いた。その様子を見て、おじいさんがにっこりと笑って言った。
「君の名前は『餅太郎』だ!これからは我が家の一員だな。」おばあさんは「餅太郎…いい名前ね」と微笑んだ。
それからの餅太郎の日々は、まさに奇跡のようなものだった。餅太郎は、家の中で過ごしながらも、夜になるとまるで空を飛んでいるかのように宙を漂うことがあり、昼間はおじいさんとおばあさんの手伝いをすることもあった。特に、おばあさんが家事をしているときには、餅太郎が何気なく手伝うような仕草を見せ、その優しい存在感でおじいさんとおばあさんを楽しませていた。
日が経つにつれて、餅太郎はますます成長していった。おばあさんの作る餅を少しずつ食べることで、彼の体は大きく、力強くなっていった。しかし、どんなに大きくなっても、餅太郎の心は常に優しく、穏やかであった。その優しさは、周りの人々にも広がり、村の人々が餅太郎を見かけると、自然と笑顔になり、温かい気持ちが心に満ちていった。
ある日、おじいさんは言った。「餅太郎、お前はただの餅じゃない、きっと何か大きな力を持っているんだ。君の力が必要なところがきっとどこかにあるはずだよ。」その言葉を聞いて、餅太郎は少しだけ考え込み、そして決意を固めたように目を輝かせた。自分にはきっと、何かしらの大きな使命が待っているのだろうと感じていたからだ。
その夜、餅太郎は夢の中で不思議な声を聞いた。「君の力は、世界を変える力だ。」その言葉に背中を押されるように、餅太郎は次第に旅立つ決意を固めていった。
餅太郎の冒険は、ここから始まったのだった。
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