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未来を売る男①

あらすじ

村上亮という若者は地味な日常の中で出会った謎の通販サイト「ノヴァマート」について調べ始める。亮はインターネットセキュリティの専門家で、普段は特に刺激のない生活を送っていた。だが、友人の健太から「ノヴァマート」という通販サイトの話を聞き、興味を引かれる。このサイトではタイムトラベル装置や未来予知眼鏡など、非現実的な商品が取り扱われており、健太は実際にそれらを手に入れて使ったという。だが、未来予知眼鏡を使った健太がその力に囚われ、最終的に姿を消してしまう。亮は健太の失踪とサイトとの関係を追い始め、サイトの背後に潜む深い闇に気づく。

亮は再び「ノヴァマート」を調査する。サイトには完璧な商品ページとレビューが並び、セキュリティが強化されるたびに亮は疑念を抱くようになる。彼はサイトのコードを解析し、商品のデータだけでなく、購入者の個人情報や予測データが秘密裏に集められていることを発見する。亮は、このサイトが単なる通販サイトではなく、何か大きな陰謀に関わっていることを確信し、調査を続ける。

亮はサイトの運営者である「古川凛」の正体を追う。表向き、古川は成功した企業家であり、彼の会社は未来技術に関するビジネスを展開しているが、その急成長には説明がつかない部分が多いことがわかる。亮は、古川が未来からの情報を手に入れ、それを商業化しているのではないかと推測する。調査を進める中で、亮は古川の抱える秘密とサイトが持つ危険性を解明しようとしていく。

第1章: 未来を買う男

村上亮(むらかみ りょう)は、東京の片隅でひっそりと暮らす若者だった。インターネットセキュリティの専門家として日々を送っており、特別な功績を上げることもなく、目立つことなく暮らしていた。昼間は無名のセキュリティ会社に勤務し、クライアントのシステムを守るためにコードを書き、夜は自分のために自由な時間を過ごす。唯一の楽しみは、たまに友人たちと集まって飲みに行くことくらいだった。

彼の仕事は常に冷静で論理的だ。新しい技術やトレンドを追いかけることには興味を示さなかったが、ある日、同僚の健太から耳にした「ノヴァマート」という通販サイトの話が、亮の平穏な日常に波紋を広げることになった。

「ノヴァマートか…?」

亮は、健太が話すその通販サイトの名前を繰り返しながら、自分のPCにその名前を入力してみた。サイトは予想以上にシンプルで、洗練されたデザインで満ちていた。トップページには「未来のアイテムをあなたの手に。タイムトラベル装置、未来予知眼鏡、瞬間移動マシン。」といった、信じがたい商品が並んでいる。

「冗談だろう…」

亮は眉をひそめて画面を見つめた。こんなサイトが存在するなんて、どこか非現実的な感じがした。それでも、何か引き寄せられるように、彼はページをスクロールしていった。未来を予知できる眼鏡や、過去へタイムトラベルする装置など、SF映画のようなアイテムが並んでいた。その一つひとつに、驚くべきほど精緻な説明が添えられていた。

「実際に存在するのか…?」

亮は半信半疑でそのサイトを閉じ、翌日、健太と飲みに行くことになった。

居酒屋で乾杯した後、亮は健太にその通販サイトの話を切り出した。

「なあ、最近『ノヴァマート』って通販サイト知ってるか?」

健太は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべて言った。

「うん、知ってるよ。俺、あそこでタイムトラベル装置買ったんだ。」

亮は驚きすぎて、思わず手元のグラスを置いた。

「なに!? 本気で言ってるのか?」

「もちろん本気さ。実際、使ってみたんだよ。」

健太は楽しそうに話し始めた。タイムトラベル装置を手に入れ、実際に数分間、過去に戻ることができたというのだ。亮はその話を信じられなかったが、健太の目はどこか真剣だった。

「それだけじゃない。未来予知眼鏡ってのも手に入れたんだ。」

健太は小さな眼鏡を取り出し、亮に見せた。その眼鏡は、未来の出来事を視覚的に捉えることができるという。彼は、眼鏡を使って未来の出来事を予知し、次々とそれが現実になったと話す。しかし、徐々にその予知が現実に現れると、健太は次第にその力をコントロールできなくなり、目の前に迫る予知に恐怖を感じ始めていた。

「最初は面白かったんだよ。でも、だんだん、予知を使うのが怖くなってきて…」

亮はその言葉に、ふと不安を覚えた。予知が現実になるとすれば、それはもはや単なる夢物語ではなく、現実の力になってしまうのだ。

「それで、お前はどうしたんだ?」

健太は顔を曇らせ、静かに言った。

「次々と予知が現実になった。俺が何を言っても、すぐにそれが現実になるんだ。でも、予知を使いすぎたら、なんだか次第におかしくなって、今はもう何が起こっているのか分からない。」

亮は不安に駆られながらも、その話の続きが気になった。

「どういうことだ? お前が予知をして、それを止める方法はなかったのか?」

健太は黙り込み、しばらくしてから、重い口を開いた。

「実は、あの日、未来予知を使いすぎたせいで、俺はあの日から…見えなくなったんだ。」

亮はその言葉を理解できなかった。健太が予知を使いすぎたせいで失踪したというのだ。彼は、何が起きたのかを知りたくてたまらなかったが、健太の表情がすべてを物語っていた。

その後、健太は突然姿を消し、連絡も取れなくなった。亮は「ノヴァマート」に再び目を向け、そのサイトに異常がないか調べ始める。しかし、何かが不気味に感じられるそのサイトには、他の誰も触れられない深い闇が隠されているようだった。

亮は、自分が思っていた以上に深い危険に巻き込まれていることを徐々に感じ取り始めた。未来を手に入れることの代償とは一体何なのか、その真実を知るべき時が来たのだと、亮は感じていた。

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