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裏切りのアイドル①

あらすじ

物語は無名のアイドルグループ「スカイビート」の一員、中原美沙を中心に展開する。彼女はグループ内で目立たず、ファンの数も少ないが、他のメンバーの魅力を妬むことはなく、冷静に周囲を観察し続ける。美沙の特技は人々の本音を見抜く能力で、これがやがて彼女の最大の武器となる。

ある日、大手プロダクション「アスパーク」の重役、佐藤悠介がオーディションを主催し、美沙と運命的な出会いを果たす。冷徹で計算高い悠介は、アイドルグループを操作しようとするが、美沙は彼の意図を見抜き、逆に彼を利用する計画を練る。

美沙はグループ内での立場を強化するため、他のメンバーを観察し、彼らの弱点を見抜き、巧妙に関係を築いていく。特にトップアイドルの藤崎瑞穂に接近し、彼女の内面の弱さを利用することで、グループ内での存在感を高めていく。

次第に美沙は、冷静な観察と計算高い策略で、無名のアイドルから一歩ずつ自分の道を切り開いていく。彼女の物語は、アイドル業界の華やかさの裏で繰り広げられる、冷徹な戦略と心理戦のドラマへと発展していく。

第1章: 無名のアイドル

物語の始まりは、無名のアイドルグループ「スカイビート」の一員、中原美沙(なかはら みさ)から。グループの中で彼女は目立たず、他のメンバーたちと比べてファンの数も少ない。彼女はどこか影の薄い存在で、グループ内でもファッションセンスや歌唱力、ダンスのキレで他のメンバーに遅れを取っていると感じていた。華やかな舞台の裏で、ひっそりと自分を磨き続ける美沙は、日々の練習に埋もれ、次第にその存在感を消していく。

しかし、彼女は他のメンバーたちが持っているものをうらやむことはなかった。アイドルとしての才能や魅力は他の人に任せ、彼女は常に周囲の人々を観察していた。美沙は、他のアイドルたちが持つ自己表現や華やかなパフォーマンスに圧倒されながらも、心の中では冷静に、そして計算高くその状況を分析していた。彼女の美沙の目に映るのは、外見の華やかさではなく、人々の心の動きだった。

最初、彼女は自分の感覚がどこから来るのか分からなかった。周りの人々の表情や言動から、何気ない一言に隠された感情を読み取ることができる。それは、アイドルとしてのパフォーマンスにはあまり関係のない、日常の些細な出来事に隠された人々の心の動きだ。最初はその能力がどれほど貴重なものなのか、理解できなかったが、日々の仕事の中で、少しずつその力を自覚し始める。

例えば、同じグループのメンバーがリハーサル中に気を使った言動を見せた瞬間、彼女はその裏に隠された心の葛藤を察することができた。メンバーが笑顔で話しかける背後には、彼女が持つ焦りや恐れが見え隠れしていた。そして、ある日、美沙はその気づきをきっかけに、他のメンバーたちの気持ちを微細に感じ取ることができるようになり、そのことが自分にとって大きな武器であることに気づく。

彼女の最大の特徴は、人々の心の奥底にある「本音」を見抜く力だった。それは表面的な言葉や表情からは分からない感情の機微を感じ取る能力で、他のアイドルたちが競い合っているステージの背後で静かに力を蓄えていた。彼女はそれを利用する方法を自然と学び、次第に周囲との関わり方を巧妙にコントロールし始める。

グループ内で目立たないことを逆手に取る形で、美沙は他のメンバーたちの間で起きている微細な力関係を把握し、上手に立ち回るようになる。誰がどんな言葉で傷つき、誰が本当に信じていることは何か。それらを感じ取った美沙は、次第に自分の位置を少しずつ確立していく。

美沙は自らを主張するのではなく、他人を操ることに特化した。しかし、彼女が最も注力していたのは、無名であり続けることの重要性だった。目立つことなく、ただ周囲の心理を読み取り、自分の計画を慎重に進める。華やかなアイドルの世界の裏側に隠れ、何気なく人々を自分の思う方向へ導いていくことこそが、彼女の戦略だった。

そして、そんなある日、グループのプロデューサーが美沙に声をかける。それが、彼女の運命を大きく変えるきっかけとなる――。

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