人糞はオフィスにいる。
5人で会議をしていた。その日はなんとなくグズグズと、我らの会議は煮詰まっていた。先週、いや先々週か。一人のディレクターがおもむろに言霊爆弾を落とした。
『ここのフロアの便所は人糞が落ちてるんですよ。』と。
人糞??耳を疑う。おい、お前は一体何を言い始めたんだ。
我らのオフィスがあるフロアには、2社が存在している。我らの会社とここら一体のビルを管理している管理会社の2つの事務所。
常識的に考えて、管理会社の男性陣が人糞を撒き散らすとはどうも思えない。
ここら一体の店子さんにとって、マイナス過ぎるイメージだ。では、一体誰だ?うちの会社の社員か?、いやまさか・・・。
私の頭の中は軽く混乱をきたした。
ディレクターは続けた。
『その人糞を誰かが踏んだみたいで、男子トイレの床に人糞の後が続いていて、吐きそうになったんですよ。』と。
一人が言う。
『俺も見たことある。・・・・・』
ディレクターの言ったことをまとめてみた。
1)人糞は男性便器の便座・床の両方に落ちている。1回だけではない。
2)何度も何度も流されていない人糞を見たことがある。
一体どういうことだ!?
我々は最早ディレクターではない。
我らは既にレイトン教授と化しこの不可解な事件の謎解きにチャレンジすることにした。
そんな気分をぶち壊すように、言い出しっぺのディレクターが続けた。
『僕は、監査役が怪しいと踏んでますね。』
監査役が人糞を撒き散らしている?!!我が社の??!!!!
同席していたメンバーが一斉に頷いた。
『奴ならありえる』・・・・・と。
監査役はいつもは違うビルで勤務している。
だが、なぜか私たちのチームのあるフロアによく来て、トイレに籠っている。
その言葉を裏付けるような発言が飛び交い、会議は進まなかったものの我らは確信を経て会議室を後にした。
そして、会議室を出た後、驚愕の事実が!!!
真横の小部屋が開きっぱなしになっていて、何故か容疑者監査役が一人で居たのだ。
そして彼はおもむろに我らに伝えた。
『ごめんねぇ』と。
筒抜の会議室だ。丸聞こえの会議室だ。
人糞に関してのごめんねぇなのかは謎のままではあるが、絶妙過ぎるタイミングの為、5人の疑惑は確信となり、それぞれはデスクに戻って仕事をした。