サービスドッグと言う考え方。
アメリカは、いやここNYは特に犬に対して寛容な場所である。
犬と一緒に入れる店や、犬を連れていける会社も沢山有り、地下鉄やバス、色んな所で犬を見かける。
さて、その中にサービスドッグと言う免罪符の様なものがある。言わば色々なハンディキャップの人向けに居る介助犬の様なものである。
つまり、オールフリーで犬を連れていける。
例えばレストランの中。(テラスは大体どこでも連れていける)
結構簡単にその免罪符は取得できるらしいのだが。さて。
先日、知人と一緒にシーフードを食べに行った時の事だ。
カニをウマウマと食べているとレストランに突如二人の老女が現れた。
レストランのスタッフが、
"ちょっと犬は店内は"
と言うと彼女は、クッションの入ったリボン付きのトートバッグに入ったこれまたリボン付きのヨークシャーテリアを指差し、
"サービスドッグよ!"
とまくし立て始めた。
明らかに権力を逆手に取ったタチの悪い白人である。
不服そうな店員を見てか、彼女らは客に大声で話しかけ始める。
"サービスドッグの証拠もあるのに私はこの店の中に入れないのよ!これは差別だわ。"
あまりにも女がしつこいせいか、他の客へ迷惑をかけるせいか、とうとう店側が折れる。
基本的にはサービスドッグは断れないのである。
"じゃあ、奥の席へ"
と店員が言う。
"嫌よ。窓際の大きい席が空いてるからそこがいいわ。"
とまたまくしたてる。
丁度私達は、その席の横に座っていた。
"はーやっと座れたわ。"
文句を言いながらその女はドサッとバッグに入った犬を空いている席においた途端、置き方があまりにも乱暴だったせいか、犬がバッグごと席から落っこちる。
"キャン!"
なんて可哀相な犬。そして、この婆あにとっては、
この犬、不幸な事に本当の免罪符代わりの様である。
"あ!"
と思わず声が出て犬を助けようとすると
彼女が私に言う。
"大丈夫よ。落っこちただけよ"
可哀相な犬。
リボンでデコられている小さいヨークシャーテリア。
暫くし、彼女等は移民の多いこのNYで自分達、白人がどれだけ不平等に扱われ、権利を損なわれて居るかをまくし立て始めた。
御年80近そうな彼女等はまだまだ長生きをしそうである。