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vol.013 夢のたね

いつも丁寧に考え抜かれた企画で島の子供達に新しい体験を仕掛けてくれる「星のや竹富島」。

今回の企画では、O先生率いる娘のクラス5、6年生と星のや竹富島で働くエンジニアのAさんを繋いでくれた。キャリア教育の一環で、「島で働くとは?」をテーマにAさんが子供達へ向けてエンジニアの仕事について色々な話しを聞かせてくれた。 

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Aさんの解説つき案内で、現在エンジニアとして取り組んでいる仕事の現場を一緒に歩き見学してきた。その中でも現在敷地内に建設中の海水淡水化装置の現場では、未来の島を豊かにしたいと願うAさんの想いみたいなものが伝わってきた。 (現在竹富島は、石垣島から海底パイプを使い水を引いている)

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海水淡水化装置を災害時に動かす予定の電力は太陽光を使用するソーラー発電だ。ソーラーパネルが設置される予定の場所や、200トンの水や50トンのお湯を溜めておく為のタンクなどを見学した。 

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施設内の電気やプールの水の温度をコントロールする制御盤が設置されているAさんの作業部屋では、携帯からも温度などの遠隔操作ができる話を聞かせてもらった。

室内のダイニングへと移動してからは、Aさんの生い立ちや、エンジニアとして働くことについてや、Aさんのこれからの目標などの話を伺った。

Aさんが幼少期に病気を患い療養していた時に、父親からレゴブロックを与えられ夢中で遊び続けた話や、小学生の時にプラモデルでバイクの模型を作り大会で優勝した話や、中学生の時に家中にある電化製品を分解して壊してしまった話や、高校生の時には、壊したそれらを最後まで組み立て直すことができた話など、その話からは、Aさんというエンジニアの「人生の地図」を広げて見せてもらったような感覚を覚えた。

Aさんの作業デスクのパソコンスクリーンには、バイクの写真が映し出されていた。小学生の時に作ったプラモデルのバイクは、エンジニアとして大人になった今、本物のバイクに変わリ、幼少期に夢中で組み立てたレゴブロックや、中学高校の頃の機械への好奇心は、今のAさんの仕事へと確実に結びついている。 

「叶えたい夢があるならば、たくさんの人に自分の夢を語ってください。それを聞いた人の中にはきっとあなたを応援してくれる人が現れるでしょう」というAさんから子供達へのメッセージには、Aさん自身が体験して来た真実が含まれている。「一人では成し遂げられないことも、人が集まれば、大きなことが可能になる」という言葉にも現在進行中の海水淡水化装置の実現化が垣間見えた。

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「 今の僕の仕事は、大きなプラモデルを組み立てているような感覚だよ。そりゃあ楽しいよ」と笑顔で少年のように話すAさん。そんなAさんを見ていたら、制御盤のある作業部屋をフッと思い出した。バイクの写真がデスクトップ画面のパソコンが有るあの部屋は、まるで星のや竹富島という大きな施設内にあるAさんの小さな秘密基地みたいな場所だなと思った。

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帰り際に広報担当のHさんに、「面白いお話でした。でも、5、6年生の子供達には、ちょっと早かったかも。まだ、将来のキャリアについて具体的に想像するのは難しいと思うから」と伝えると、「いつか、人生の選択をする時に今日の話を少しでも思い出してもらえたら、それで良いと思います」とHさんが答えた。 

今はまだ先のことかもしれない。けれど、いつか遠く忘れた頃に、子供達の記憶の中に蒔かれた「夢のたね」から、ひょっこり芽が出る日を楽しみに待ってみようと思う。


【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。


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