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vol.010 ミツロウラップ

海に囲まれた珊瑚礁の島に暮らしていると、ニュースや雑誌の記事などで取り上げられている海ゴミの問題が現実的に目の前に広がっていて、「どうにかしなくては」と海岸清掃などをする度に焦りを感じる。 

娘の通う学校では環境問題を取り上げた授業やプロジェクトが実地されている。

ある日、娘が学校から帰ってくると「今度授業でミツロウラップ作るよ!」とウキウキした様子で教えてくれた。ミツロウラップとは、ミツロウでコーティングされた布のことで、サランラップのような食品用ラップフィルムの代わりに食べ物を包んだりでき、何度も再利用できることから環境にも優しいとされる代物だ。

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以前から食品用ラップフィルムは買わないようにしていたけれど、景品にもらったりすれば、使っていた。使う度に、「無駄なゴミを出してしまうなぁ」と心が痛かったので、ミツロウラップ作りプロジェクトの話を聞いた時には、私も作ってみたいと即座に思った。

娘の学校は小中一貫校の小規模校で、娘の学級は5、6年生の複式学級だ。女の子ばかり6名なのでまるで女子校みたいな雰囲気である。思春期の女の子ばかりを相手にしなくてはいけない先生たちを気の毒に思うこともあるけれど、娘の担任のO先生は楽しそうだ。

地域と学校の関係性が近いのが離島の学校の良いところで、「ミツロウラップ作り見学させてください」とお願いしたところ、「 一緒に作りましょう」と授業に参加できることになった。当日はワクワクしながら教室へと向かった。

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6名の女の子たちに混ざって、ミツロウの粒を25cmの正方形の布にしきつめ、ワックスペーパーをかぶせた上からアイロンでミツロウを溶かしながら布をコーティングする作業を行なった。最初はミツロウの量を間違って、縁からロウが溶け出してしまったり、足りなくて足したりしていたが、終わる頃にはなんとなくコツをつかめた気がした。何よりも、新しいことにチャレンジして何かを作り出すのは楽しい。

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授業の最後に、「今回作ったものは、お家に持って帰ってお家の人に使ってもらってください。まずは、お家から!」という先生の声かけでミツロウラップ作りの授業は終わった。

秋の始まりを感じさせる少し涼しい風が、細い紐にとめられた完成したばかりのミツロウラップをゆらゆらと動かしていた。

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以前、O先生とお話をした時に、子供たちと作ったものを商品として販売したい、と言っていたので、そのことについて、O先生の考えを聞いてみた。

「作る」ことに興味がある児童達だから、作ることを通して環境問題について一緒に学んでいきたいです。自分達で作ることで商品に愛着を持ち、環境問題についても考えるきっかけにもなると思います。また、商品化して売ることで、環境にとって良いことと、経済活動が結びついて、将来、仕事を生み出すことのヒントになることを願っています。(O先生)

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先日、娘の友達が「O先生に、こんな事やってみたいと相談すると、いつも良いね、やってみよう!って答えてくれるの」と嬉しそうに話してくれた。

「良いね、やってみよう!」が当たり前で育つ君たちの未来は無限大。


【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。



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