vol.025 海でカッパになった日
竹富島の小中学校にはプールがない。一昨年までは石垣島まで通い、プールで水泳学習を行なっていた。
昨年からは、先生たちの粋な計らいにより、竹富島のコンドイ浜で水泳学習が行われている。海が大好きな娘は、数日前からワクワクしながら「海でキュウリ食べるよ」と何度も言っていた。なんのことだろう? と興味が湧き、当日仕事の合間に車を走らせてコンドイ浜まで行ってきた。
私が到着したのがちょうど休憩時間に入るところで、小学1年生から中学3年生までの竹富っ子たちがパシャパシャと海水を跳ねさせて遊んでいた。
少しすると先生がみんな浜に上がるようにと声をかけた。娘の担任のO先生が「みなさん、キュウリがあります。海で食べてください」と子どもたちに呼びかけていた。「あ!例のキュウリだ」と思いながら子どもたちを眺めていると、それぞれが一本ずつキュウリを袋から取り出しそのままかぶりついていた。キュウリ片手にザブザブと海に入っていく子もいた。
若い元気のある先生はキュウリ片手に「写真とるよ〜。はい、キュウリ!」と中学生女子グループの写真を撮っていた。
この後も、浜でのレクリエーションなどの予定が組まれているようだったが、残してきた仕事が気になり車へと歩き始めた。帰り際に水着を着た校長先生と教頭先生を見かけた。彼らも竹富っ子たちと一緒に海に入っていたようだ。
白砂からの照り返しが眩しくて、クラクラした。振り返ったらゼリーみたいな青い海に子どもたちがプカプカと浮いていた。
それから数日後、学校で育成会の集まりがあり、娘の教室で作業を行った。教室の後ろの壁には、「今日は、川ではないけど海でカッパになりました。」という一文から始まる娘の絵日記が貼られていた。
【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。