年会費の掛かるドM専用クレジットカード
2024年10月15日追記:
本記事の中で検証した「ドM専用クレジットカード」だが、本記事を執筆後に実は意図せず「オトクなクレジットカード」であることが判明した。
詳しいことについては次の記事の中で紹介するので「ドM」の人たちはしばらく待っていて欲しい。いや、しばらくと言わずずっと待っていても構わない。
追記、終わり。
クレジットカードについてあれこれ調べているとだいたい、3つのグループが形成されていることがわかる。
1つめが、たぶんもっともメジャーだと思われる「ポイ活系」。
2つめが、「優待系」。
そして 3つめが、「特定店特化型」である。
ポイ活系
ポイ活系は私が得意な分野ではないので説明は割愛するが、要はクレジットカードでの支払時に付与されるポイントがなるべく多く得られるメリットがある。ポイ活系で良いなと思ったのが JACCS が発行する「Ponta Premium Plus リボ専用カード」。支払いがすべて自動的にリボ払いになるという制約はあるものの、基本ポイント還元率が 2.0% と高い。「Ponta Premium Plus」は 10年以上前 (2013年ころから?) からある定番のクレジットカードのようだが、2024年に入った頃 (3月くらい?) からライバル他社の高還元率クレジットカードの廃止が続いていることから乗り換え組が大量に発生、2024年8月ころから新規入会が一時停止となっている。
JACCS は過去にも 2.5%還元を狙えるプラチナ・カードの還元率を下げるなど、会員獲得後にサービス内容を変更してくるので油断はできないが現実的に常時2.0% の還元率を得られるカードが他にあまり無いので使えるうちに使っておきたいクレジットカードと言える。
個人的にはお得感は感じないが、三井住友カードのゴールドプリファード、プラチナプリファードは優待をバッサリ切り捨ててポイント還元率に振ったスペックで 20代30代のポイ活系リーマンにものすごく人気があるらしい。
優待系
優待系はポイントの還元率は低いものの、付いてくる優待が使いやすいというもので、ほとんどは年会費がそれなりに掛かってくるクレジットカードになる。各社のプラチナ・カードは概ねこの優待系と言える。JCBプラチナ、AMEX、三井住友トラスト Diners Club など。
特定店特化型
特定店特化型は特定の店舗で優待が大きくなるタイプで、例えば無印良品で使いやすい MUJIカード、イオン系のイオンカード、マルイの EPOSカード、楽天の楽天カードなど。ANA や JAL の名前がついたマイル系クレジットカードのこのジャンルだ。三菱UFJニコスや三井住友カードのプリファードたちも、セブンイレブンとローソンでスマホタッチ決済で高還元率キャッシュバックのキャンペーンをやっているので、限定的には特定店特化型とも言えるかもしれない。
これらはいずれも激しい会員の獲得合戦を繰り返しており、入会する人も多いだろう。ウェブで実際に使っている人の声も見つけやすい。
一方で真逆の、「何も優待がない、得もしない、年会費が掛かる」クレジットカードというのは情報が少なく、実際に使っている人の声を聞くことも難しいと思う。
そんな持ってても何も得をしない「ドM専用のクレジットカード」に興味が湧いていて、一つ、実際に入会してみることにした。
迷った 2つのクレジットカード
「ドM専用のクレジットカード」の要件は以下の通り。
・年会費が掛かる (割引制度などもない)
・ポイント還元率が低い (マックス 0.5% まで)
・これといった優待が無い
かつ、できれば、
・入会特典がない
とすばらしい。
そんなクレジットカード、世の中にあるのかよ、と思われるかもしれないが意外と珍しくなくてできればあれこれ申し込んでみたいものの「年会費が掛かる」ことから複数を持つことは負担となる (ドM にとってはご褒美でもある) ので、とりあえず 1~2枚だけ入会してみることにした。
最後まで迷ったのが次の 2種類。
・三井住友ビジネスカード for Owners プラチナ
・UCカードゴールド
それぞれのクレジットカードの内容について、カンタンに紹介しておく。
三井住友ビジネスカード for Owners プラチナ
この手のカードはちょっとニッチな分野を狙っていて、副業なんかをやってる人たちが、副業で使う経費などを個人のクレジットカードで支払ってしまうと、事業性決済と呼ばれる「個人のクレジットカードでは NG とされる使い方 」(仕入れたものを売る、は個人だと転売と明確にわけられないため、換金目的での仕入れは規約で禁止されている) になるため、副業している人のための経費精算専用のクレジットカードという位置づけだ。
本来であればビジネスで使う場合は「ビジネスカード」や「コーポレートカード」という種類のクレジットカードを使っていた。ただ「ビジネスカード」は典型的な会社をターゲットとしており、副業のようなスタイルは想定していない。
「ビジネスカード」を発行してもらうには法人の決算書類を用意して (創業当初だと決算書類も用意できないため、そもそも申込みに必要な書類が揃えられない) 審査してもらうなど、ビジネスを始めたばかりの人には敷居が高いところもあり、これまでは個人カードで代用するというグレーな運用が黙認されているところもあった。
副業専用ビジネスカードでは、ビジネスの内容にはノータッチで、「個人の与信」を使うことで発行を容易にするという商品で、審査的には個人のクレジットカードと同等と言えるので本業がちゃんとしている人であればカンタンに発行できるはずだ。また日常の生活費の決済 (自己消費分) に使うことも問題ない。最近では JCB が JCB Biz ONE という、同じような副業専用ビジネスカードを発行している。
こういう少し特殊な位置づけのカードのため、年会費 55,000円(税込み) が掛かる割に優待などは際立ったものがなく、強いて言えば個人用の三井住友カード プラチナと、券面のデザインが違うだけでは、という程度の違いしかない。
そもそも元になっている三井住友カード プラチナは、銀行系のクレジットカードでプラチナ・カード、年会費も他社より高い 55,000円(税込み) で入会審査も厳しいことから、元祖ステータス系カードと言える存在だ。優待がモリモリ付いたポイ活系のプラチナプリファードが出てきたいま、「ステータスとして持つ」以外にメリットのないクレジットカードであり、こちらも「ドM専用のクレジットカード」の一躍を担うと言っても過言ではない。
ほぼ条件を満たしているもののプラチナプリファード同様に、セブンイレブンやローソンでのスマホタッチ決済7%還元にも対応しており、この点が (ドM視点では) 残念だ。
また優待としてプライオリティ・パスが付帯 (三井住友カード プラチナの場合は、自動付帯ではなく他の優待と取捨選択する仕組みになっている)してしまう、Mastercard を選ぶとダイニング by 招待日和が付いてくる、6ヶ月での支払いが 50万円を超えると還元率が 1%近くになる、など、各所からにじみ出るお得感を消し去ることができず、最後まで候補とはなったものの今回は辞退することとした。
UCカードゴールド
かつて、銀行系のクレジットカードと言えば老舗の JCB (元は三和銀行、現三菱UFJ銀行の系列) と JCBフランチャイズ系、三井住友銀行が旗を振る VJA系、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)の DCカード/ダイヤモンドカード系、東海銀行(現三菱UFJ銀行) の MCカード/ミリオンカード系、そして第一銀行(現みずほ銀行)、富士銀行(現みずほ銀行)、日本勧銀(現みずほ銀行)などの連合である UCカード/ユニオンクレジット系があった。
DCカードは親会社の三菱銀行が合併の末、三菱UFJ銀行という巨大銀行に生まれ変わり、その経緯で三菱UFJニコスの一部に取り込まれ、現在ではほぼ新規発行を行っていない。MCカードも三菱UFJニコスの一部となったあとはブランドごと消滅している。
似たような経緯の東京銀行系の東京クレジットサービスは三菱UFJグループの子会社ながら、三菱UFJニコスには合流せず、いまだに独自で VJAフランチャイズとして VISAカードの取り扱いを続けている。なぜか三菱UFJ銀行のウェブサイト内では東京クレジットサービスのクレジットカードについては一切触れられておらず、グループ内での立ち位置は不明 (クレジットカード事業より両替業として存在している可能性がある) である。また信販系といえば JACCS も資本関係的には三菱UFJ銀行系列であるが、いまのところは事業的に独立していると思われる。
UCカードは親会社の合併などがあった末で、すこし複雑な経緯を辿っている。もともとはみずほ銀行系のクレジットカード発行会社兼加盟店開拓を行っており、みずほ銀行が開拓した地銀系クレジットカードの発行業務まで請け負う大手だったのだが、みずほ銀行が突然、流通系クレジットカードであるクレディセゾンを買収する。クレディセゾンは西武セゾングループのクレジットカード会社だったが、親会社の西武のゴタゴタで売りに出され、それをみずほ銀行が買うことになる。
みずほ銀行はもともと UCカードを持っていたとはいえ、クレディセゾンは日本でもトップクラスの会員数を持つクレジットカード会社であり、効率的な営業を行っていることから収益率も良い。ここでみずほ銀行は自社のビジネスだった UCカードを、買収したクレディセゾンに統合する。みずほ銀行系には信販会社であるオリコことオリエントコーポレーションがあるが、こちらはいまのところ合流せずグループ内で独立した地位を保っている。
クレジットカードの発行についてはクレディセゾンが UCカードのブランドを使ってフランチャイズという形で行う一方で、UCカードは加盟店開拓、加盟店管理に注力することでグループ内で棲み分けすることとなった。
ここまでの経緯で言えば、三菱銀行系だった DCカードがニコスカードに統合されるようなもので、UCカードもクレディセゾンの社内でブランドだけが残るかのように思われた。
しかしここでさらに複雑な動きが起きる。三井住友信託銀行(社名に三井住友と入っているが三井住友銀行とは直接の資本関係はない)系のクレジットカード発行会社であった三井住友トラスト・カードの UCカードのフランチャイズ事業を買収、この事業を新UCカードとして展開することになる。要は元々自社の代理店 (フランチャイジー) の事業を譲り受けたことになる。
余談だが残された三井住友トラスト・カードは引き続き、VJAフランチャイズとして VISAカードの発行を行っている。系列の兄弟会社である三井住友トラストクラブは Diners Club の発行を行っているため、ここも関係がややこしい。この会社も今でこそ三井住友トラストと付くが、元はシティバンク系のシティカードであり他社から買収した会社になる。
さらに重ねての余談だが日本で国際ブランドの VISA の名を広めた盟主が三井住友カードなのは誰しもが認識するところだと思うが、一方で Mastercard を普及させたのは往年の UCカードと MCカードだった。三井住友カードは VISA のプリンシパル(主要)メンバーであり、その bin code 4980-xx を見ただけで三井住友カードが発行していることがわかるプレゼンスがある。一方の UCカードもかつては bin code 5250-xx を使っていたがこちらはクレディセゾンに移管しており、三井住友トラスト・カードの事業を引き継いでからは新しい bin code 5283-xx、5344-86 (dカード用?)、5365-13 (dカードゴールド用?) を使うようになった。
一般的にはそれほど知名度が高くない UCカードだが、NTTドコモの金融事業である dカードの発行を請け負っていたり、JALPay の受託、住信SBIネット銀行のデビットカード発行、その他大手企業のコーポレートカードの開拓を強みとしており、業界ではプレゼンスのある会社だと思う。
大手企業にお勤めで組合などから「PRIZE」という従業員向けクレジットカードを勧誘されたことのあるかたも居ると思うが、こうしたクレジットカードの発行業務を請け負っているのが実は UCカードなのだ。
そんな UCカードは受託事業に重点を置いているため、自社発行 (広義でのプロパーカード) のクレジットカードはまったくやる気を感じられず、2024年10月現在、申し込めるのも UCカード一般、UCカードゴールド、UCプラチナカードなど 6種類だけで、それ以外はクレディセゾンが発行するクレジットカードを取り扱うにとどまっている。
この中で UCカードゴールドは、初年度から 11,000円(税込み) の年会費が発生、年会費の割引制度はなし、付与されるポイントは UCポイントで基本還元率は 0.45%程度(引き換えるモノによって変わるタイプ。nanaco経由での Amazonギフトの場合)、UCポイントは付与された翌年9月末で消滅する上に、まともに引き換えられるのが UCギフトカードかスタバカードくらいしかない。
一応、ゴールドカードなので国内主要空港のラウンジ (44箇所?) は使える、海外国内の旅行保険が付帯するものの、むしろこれがない年会費 1万円クラスのクレジットカードを探すのは困難だと思う。
これこそまさに求めていた「ドM専用のクレジットカード」であり、「なにも得しないのに年会費払うだけなの気持ちイイ」を味わうことができる。
そんな UCカードゴールド、もちろんプロパー発行も可能だけどちょっと理由あってフランチャイズの銀行系のものに入会した。