【無料全公開】25卒/26卒就活生に贈る、5,000件以上のESを見てきた現役人事が教える就活ESの作り方(Before/After事例付き)
150名くらいのITベンチャーで採用人事マネージャーをやっている渡邉です。新卒でこの会社に入って、グリーさんやベネッセさんなどをはじめとする300社以上のWebコンサルティングを経験した後、一年前に人事に異動して、現在は全社の採用人事まわりを任せてもらっています。
今回、学生と採用人事向けに「ESの書き方(及び評価のポイント)」についての記事を書いてみようと思います。
この記事を書こうと思った背景
①自身の就活経験
自分は大学時代、テニスサークル、居酒屋バイト、塾講師といったなんとも代わり映えしないテンプレ学生でした。留学やインターンなどの経験もなく、ネタのキャッチーさでは勝負できなかったため、ESの“書き方”で勝負する必要があり、どのように書けば「この学生には会う価値がありそう」と思ってもらえる”伝わるES”になるのかというのをとにかく考えていたのを覚えています。
就活当時で言うと、ES通過率5%以下と言われる某化粧品メーカー(最終前で落ちました)や某食品メーカー(面接5回あると聞いてめんどくさくなって受けませんでした)などにも通過しました。受ける受けないは関係なくてきとーに色んな業界の企業に数十社エントリーしましたが、書類選考はほぼ通過して、結果、某大手IT企業の内定を獲得しました(その後紆余曲折あって今のベンチャーに入社しましたが)。
②新卒採用で学生と関わってきた経験
ベンチャーに入ってからはWebコンサルの仕事をしてきましたが、それと並行して14卒以降の新卒採用にはずっと関わり続けてきたので、おそらく延べ5,000人以上の学生のESをみてきたと思います。
その中で、留学やインターンなどのテーマに依存しすぎていて、”伝える努力や工夫を怠っているES”を山程見てきました。たまにサイレントお祈りされたムカつくといった投稿をしている就活生のツイートを見かけますが、”人事が読みたくなる、思わず会いたいと思ってしまうES”にしようと、ちゃんと考えて作っている学生がどれくらいいるのだろうと疑問を抱きます。
③中途採用も含めて人事になってから感じたこと
人事に異動して他社の人事の方々と交流するようになってわかったのは、皆同じような課題感を抱いていたり、成果を出している優秀な人事は沢山いるけどかなり属人的になってしまっていて、会社としての再現性はそこまで高くなかったり…といった実情があることです。
現場社員も含めて採用に関わる人数が増えてくると、個々人の雰囲気で選考を進めてしまったり、仮にその人の中に明確な基準があったとしても、それが言語化・可視化・共通化されていないケースが増えてきます。会社としての判定基準をしっかり作っておいたほうがそれをベースに一定の精度で判断できるようになる、という意味では書類選考でも色々と工夫できることはありそうだなと感じました。
④個人的な想い
今の時代、内定者ESはWebで手に入るし、就活対策本や講座などもありますが、一企業の人事がフラットかつオープンにESの評価や作り方について徹底的に解説する記事を出しているケースを見たことがなかったので、全部出しちゃうのは面白いかなと思って書きました。
この記事を読んでくれた人が、就活生にしても、新卒採用に取り組む採用人事にしても、もっとレベル上がって、より本質的なところに時間をさけるようになるといいなと思ってます。
さて、前置きが長くなってしまったので、そろそろ本題に入ります。
誰に読んでほしいのか
①ESが通らずに困っている就活生
②“なんとなく”で評価してしまっている採用人事
①ESが通らずに困っている就活生
自分と同じようにサークルやバイトなど勝負するネタ自体が弱くて困っている学生、留学やインターンなどのネタはあるけど何故か書類落選してしまう学生の皆さん。サマーインターンの締切は終わってしまったと思うので、これからオータムやウィンターインターンの選考に向けてESの書き方をブラッシュアップする上での参考になれば幸いです。
②“なんとなく”で評価してしまっている採用人事
本来読んでほしい人はどちらかと言うとこっち。
企業として、採用人事としての共通の評価項目をちゃんと持っていますか?個人の“なんとなく”の印象で合否を決めてしまっていませんか?留学経験がある、インターン経験がある、学歴が高いといった表面的なステータスではなく、自社にマッチする学生、ステータスに関係なく優秀な学生を見極めるための仕組みや基準をもっておくべきですが、割と個人的な感覚で合否判断をしてしまっている会社もそれなりにあるのではないでしょうか。
この記事で伝えたいこと
・ESの書き方には答えがある(企業としての評価基準をもっているか)
・ネタがキャッチーじゃなくても大丈夫(ネタの面白さだけで評価しない)
・ネタやテクニックではなく「伝わるESを作るための思考法」をインストールしたい(属人的でない再現性のある採用活動をできるようにする)
※()内は採用人事向けに伝えたいことです
ES書き方の書き方については、Webで調べればONE CAREERや外資就活、unistyleなどのように「商社」「外資コンサル」「広告代理店」「メガベンチャー」の内定者のES例みたいなものはいくらでも公開されていますが、「駄目だったES」というのはあまり手に入らない印象です。受かった人のESをみることももちろん学びはありますが、あくまで結果論でしかないので「どうして受かったのか」を紐解くことは出来ません。
どちらかというと、”駄目なES”と”受かるES”の違いはどこにあるのかを分析してみた方が、具体的にどこに気をつければいいのかが理解しやすいし、自分で作る際にも応用をきかせやすいと考えました。
なので、実際に学生の書いたESを添削した上で、ESの書き方について解説してみることにしました。今回bosyuというサービスでnoteで公開することを条件にネタをもらって添削しました。
数名の学生さんから応募がありましたが、慶應SFCの学生さんのネタを使わせていただくことにしました(Yさんありがとうございます)。
さて、ではES添削をしてみましょう。
慶應SFCのYさんのES(Before)※原文ママ
さて、どうでしょう。学生さんは自分のESと比較してみてください。採用人事の方はこのESが送られてきたら合格にしますか?
では今度は自分が添削したESを載せてみます。(※因みにYさんとは会ったこともなく、ES以外の情報はもらっていないため、元ネタだけを情報源に添削してみました。)
現役人事が添削したES(After)
Before、Afterそれぞれを読み比べてみて、いかがでしょうか。学生さんは自分のESと比較してみてください。人事の方はそれぞれのESが提出された時に書類を通過させるのかを考えてみてください。
YさんのES(Before)の課題分析
センテンスごとに、どこを改善できそうかを解説していきます。
⇒具体性がないのでパッと見で、何に取り組んだのかわからない。最初の一文として目に留まる文章になっていない。
⇒状況説明長過ぎる。400文字という限られた文字数の中で、前提情報として必要なものに圧縮したい。
⇒関係構築のための具体性がなく、納得感がない。関係構築のため、自分の話を聞いてもらうためにどんな工夫をしたのかがない。
⇒上記施策だけで本当に全スタッフが有効利用するようになったのか「?」が浮かぶ。
⇒結果論的に副産物としてたまたま得られた成果っぽく見えるのでもったいない。最初からこれを目的に取り組んだことにしたほうがいい。
⇒余分。不要。ノイズでしかないので削除。
⇒具体性がなく、誰でも言える内容になってしまっている。自身の学び(アピールポイント)として伝えるべきことは本当にこれなのか。
ESを読んだ所感
・「〜た。」の連続で味気なく、途切れとぎれの印象を抱く
・具体性がない(エピソード、わかりやすい成果、数字的根拠)
・コミュニケーションとって、相互理解して成果だせました、って誰でも書ける内容になってしまっている
・限られた文字数のなかで「伝えるべきこと」が書かれておらず、「伝えなくていい」ことに文字数を割いてしまっている
うん、とてもとても、もったいないですね。
では、どういったことに気をつけてESを書けばいいのでしょうか。
ESを書く時に注意したいポイント
・正直ネタはなんでもいい
・大事なのは「自分が伝えたい想い」ではなく「企業が何を見たいか」という視点で書くこと
・主体性、協調性、思考力、成果コミットあたりは共通で必要(その他、営業力、メンタルタフネス、専門性…など業界、企業、職種によってみたいポイントは変わるはずなので、そこは個別調整が必要)
・総合職(ビジネス職、営業職)なら「顧客視点を持っていて、コミュ力があって、売れる人間であること」をアピールしたほうがいい
・個人で成果を出すだけではなく、組織人としてチームで成果をだせる人間であることアピールしたほうがいい(証券営業など単独行動系の仕事なら別)
・ESは受験でいうと「日本的な、評論、随筆、小説」ではなく、「英文読解」だと認識する
⇒英文読解:コンクルージョンファースト、課題、具体的なアクション、結果、得られた成果や経験…という順番
・「〜した」は味気ない、「〜だ、である」は偉そう。「〜です、ます」が一番読んでいて印象はいい、ハズレがない
以上を踏まえて、添削したES(After)について解説していきます。
現役人事の添削ES(After)の解説
⇒コンクルージョンファースト。最初の一文で、理解してもらえるように。「お!他と違って面白そう」と思わせる(人事はひたすらES見て、飽きているので)。
⇒問題提起。
⇒課題分析。「顧客視点」と「企業視点(業務効率)」の2側面で言及。
⇒「顧客視点」「理想定義」「コミュニケーション」「巻き込み」
⇒「業務効率化」「仕組み化」。例えばカテゴリ分類については、文字数増やせるなら「アウター、ボトムなどのアイテム別にわけた、ブランド別にわけた、色別にわけた、シーズンものと定番をわけた…など具体的に示せると尚良し。自分だけではなく、みんなができるようにマニュアル作成したなども書いてもよい。
⇒結果。課題解決。
⇒副次的な効果にみせつつ、アパレル接客業としては大事なところなので改めてアピール
⇒わかりやすい数字成果
⇒学びと得られたスキル。仕事で必要なスキルでもあるので、「この子は仕事できそうだ」というのをイメージさせる。
⇒改めて自分一人ではなく、協調性もって仕事できることをアピール。企業に入ると自分一人だけで仕事をすることのほうが少ないので、組織人として働けそうだというイメージ。
…といった感じです。
改めてBefore・Afterを比較してみる
上記の要素があるかないかという視点でもう一度Before、Afterを見比べてみると、どちらの方が魅力的な学生に見えるのかは一目瞭然ではないでしょうか。
Before
After
今回の事例だけでは、参考情報としては限定的な感じもするので、これまでみてきて出会ったESネタについても多少解説いれてみます。
よくあるもったいないES例(パターン別)
・色々書かれている自己紹介系
「僕は何事にも主体的に取り組む人間です。中学高校自体は野球部で主将をやっていました。大学では英語を勉強しようと毎日2時間勉強してTOEICの点数を100点上げました。また、レストランのアルバイトではお客様に喜んでもらうために積極的にコミュニケーションをとっています。」
⇒もうカオス。ESで何を伝えたいのか全然伝わらない。ネタが多すぎので絞ってほしい。
・受験勉強がんばりましたネタ
「大学受験でテストの点数が低くて志望校に受からない状態だったので、毎日2時間徹底的に勉強を続けた結果、第一志望には受かりませんでしたが、第二志望に受かることができました。」
⇒就活生はみんな受験勉強を乗り越えてきているので、受験ネタ自体が危うい。受験頑張りましただけでは評価できないです。
例えば、偏差値30の状態から1年間の受験対策で東大に受かった。1年間のスケジュールをくんで、英単語や文法などをとにかくインプットする基礎固め期、教科書を3周して全体理解と知識の定着期、具体的な設問を説いていく応用力をつける期間と分けて対策しました…的な感じで戦略的・計画的に取り組んだとかならまだ読める内容になるかもしれません。が、おすすめはしません。大学でもっと頑張ったことあるでしょう。
・恋愛ネタ
「大好きだった子に告白した時に振られた失恋のショックで、立ち直れませんでした。自信をつけたいとおもって一念発起し、企業でのインターンをはじめました。Webマーケティングのスキルを身につけたことで、自信をつけて何事にも積極的に取り組めるようになりました。」
⇒意味不明。話の筋が通っていないように感じます。インターンネタを推したいなら最初の恋愛の話はいらないですね。もし恋愛ネタでいくなら、「振られた理由がコミュニケーション能力の低さだと思って、心理学を学んだ上で渋谷で1000人に声をかけてメンタルとコミュニケーション能力を鍛えました。その中でも上手くいったケースと失敗ケースの違いを分析して〜」とかそういう流れのほうが整合性つくし、面白いですね。(人事によって好き嫌いが分かれそうなテーマではあります)
・幼少期〜中学生ネタ
全体的におすすめしない
⇒今の人生のつながるような強烈な原体験があるなら別にいいのですが、基本的には避けたほうが無難です。なぜならアイデンティティが形成されたあとの大学や高校時代でもっと頑張ったことがあるでしょうと思うので。
”ネタだけ”じゃ評価できないよというESネタ
・ボランティア経験
⇒人のやさしさとかを大事にしている企業だとウケがいいかもしれませんが、「売れる営業」になるイメージがわかない、ビジネスシーンでの課題解決と親和性が低いので、ビジネスとの接続をイメージして書いてみるといいです。
・バックパック、自転車で日本周遊
⇒根性!メンタル!みたいなものが大事になる業界や職種(不動産営業とか?)ならウケがいいかもしれませんが、個人での頑張りになってしまい、チームで成果を出すことを大切にしている企業だとあまり高評価得られないかもしれません。
・海外留学
⇒人種、言語、宗教、文化、生活習慣…など異なるのは当たり前。そこで頑張ってコミュニケーションとりましたということ自体は差別化になりません。そういった環境の中でどんな目標達成。課題解決、チーム作りをしたのかという中身をしっかりと伝えるのが大事です。
・ゼミ、研究頑張りました
⇒専門性が必要な職種、大学での研究が直接その企業の仕事で活きるなら問題ないです。よく見るのが、ゼミや研究室の研究テーマの説明に文字数を割きすぎてしまい、肝心な内容(目標達成や課題解決)を伝えきれなくて終わる、というESはけっこう多いです。勉強とビジネスは求める成果が異なるので、勉強での学びを仕事にどう活かせるのかという接続を意識してみるのが良いでしょう。
・体育会、部活動
⇒部活動系は銀行や商社などの規律を重んじる業界だと相性がいいかもしれません。部活の場合は、ゴールやルールは決まっていて、上下関係が厳しい状況のなかで、継続して努力し続けてきたかということはアピールできます。ただ、ビジネスの場合においては、自分でゴール設定したり、課題解決したり、上下関係なく他者を巻き込んでいくことが必要なケースの方が多いので、「部活動の厳しい環境でやってきたから大丈夫」と安心しないほうがいいです。
・サークルや居酒屋など
⇒テーマ自体で他よりも見劣りするので、上記解説してきたように「いかに優秀なビジネスパーソンになれる素養がありそうか」というのが伝わるESにできるのか次第です。
ESには答えがある、「ESという文法攻略」
ESの書き方にはある程度の答えがあります。
上記内容と順番で書いてみるだけでも、かなりESのクオリティは上がると思います。
ネタ自体のキャッチーさはなくても、”伝え方”次第で他の学生とは差をつけられるはずです。
もちろん、これはあくまでもオーソドックスなものなので、業界、職種、企業カルチャーなどにあわせてチューニングしていくことでもっと精度は上がります。
冒頭で述べましたが、この記事で伝えたいことは
・ESの書き方には答えがある(企業としての評価基準をもっているか)
・ネタがキャッチーじゃなくても大丈夫(ネタの面白さだけで評価しない)
・ネタやテクニックではなく「伝わるESを作るための思考法」をインストールしたい(属人的でない再現性のある採用活動をできるようにする)
ということでした。
学生の皆さんへ
企業人事がESについて公開しちゃうパターンって今までなかったと思うので、就活サイトとか対策本とかとは異なる、わりと生々しい感じの内容として参考になったのであればうれしいです。
採用人事の皆さんへ
よく「優秀な学生が少ない」という声がありますが、企業側の採用レベルが上がっていかないと、優秀な学生は振り向いてくれません。自分たち人事の採用レベルを上げていく、企業としての評価基準を作っていく上で、この記事が参考になったのであればうれしいです。
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(2021年3月23日一部修正)