![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/96554588/rectangle_large_type_2_c7f3db7eb2316831bc2344e1bab229ef.png?width=1200)
【芸術祭レポ】【大地の芸術祭2022】中﨑透『新しい座椅子で過ごす日々にむけてのいくつかの覚書』について
悲劇(一番見たかった作品の鑑賞時間が10分しかなかった件)
先日、水戸芸術館で開催していた中﨑透さんの個展「フィクション・トラベラー」についての記事を書きました。
このとき、石巻での芸術祭リボーンアートフェスについては写真も交えて触れたのですが、去年新潟で開催された「大地の芸術祭」で鑑賞した中﨑さんの作品についての言及が不十分でした。
「新しい座椅子で過ごす日々にむけてのいくつかの覚書」という作品です。
この作品は、かなり山奥の集落内にあるのですが、湯沢駅発着のオフィシャルツアー(観光バスに揺られてたっぷり一日中あちこちの作品を鑑賞できるという触れ込みの公式ツアー。今回は昼食付きにしたので13,000円くらい)に参加することで見に行くことができました。もちろん、自力で車などで作品を見に行くことも可能です。
このオフィシャルツアー、効率的に見れるし運転に自信がなくても作品見に行けるしで便利は便利なんですけど、芸術祭の意向でどうしても作品同士の距離が離れているせいで、移動時間が一番長いという😢
そんなわけで、なんとこの作品については、正味たったの10分くらいしか鑑賞時間がありませんでした(ひどい!)
仕方なく作品内部のあちこちをとにかく写真と動画に撮りまくって、あとでじっくり見るということにして溜飲を下げたのです。。
先日書いた上記記事もせっかく読んでいただいているようなので、追加の形でその時の写真をぼちぼち載せてみます。
(ちなみに今回の「大地の芸術祭2022」は、4泊5日で鑑賞旅行をしました。他の作品の記録も後日まとめて書きたいな)
鑑賞記録(「新しい座椅子で過ごす日々にむけてのいくつかの覚書」)
まずは外観。
![](https://assets.st-note.com/img/1674747449518-ssfMwZ6NvZ.jpg?width=1200)
この建物は十日町市の新座という地区にあります。周りは山だらけで、のどかな感じ。建物のすぐわきにはお寺さんもありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1674747499074-gPjp0uXsQZ.jpg?width=1200)
中に入るといつもの中﨑ワールド。ふつうの民家の中でまぶしく光るネオンが、ここをどこか非日常的な、ふつうじゃない場所に変えてしまいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1674747560095-6gOpCzo9NZ.jpg?width=1200)
今回の展示に寄せて、作家の中﨑さんはこんなメッセージを書いています。
「少し前から長年付き合ってきた座椅子の具合がどうにもよくない。金具がひん曲がり、金属が劣化してなのか亀裂というかおもむろに裂けてきていて、たぶんここ数日で限界だろうというところまで来た。新座地区の資料を漁りつつも、腰の居心地の悪さから明日こそは新しい座椅子を入手しなければと頭の中が行き来を繰り返す。おや、繋がった。作品というのはこういう神の啓示のようなことをきっかけに始まることがたまにある。それが今だ。きっと新座と新しい座椅子という二人の登場人物の物語になるのだろう。とりあえずはこの具合の悪い古い座椅子を新潟まで持っていって座敷にポツンと置いてみることから始めてみようと思う」
何度も使われてへたった座椅子は、日常の世界を表象する典型的なアイテムです。椅子というのはたしかにふしぎで、家具の中でも人間の肉体にとても近い距離にいつもいます。肌に触れる、服の次くらいに人間に近い存在だからこそ、そういう家具はときに持ち主の時間を堆積させたり、持ち主のことを本人よりも雄弁に語りだすのかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1674747883310-toLf089ctC.jpg?width=1200)
続いて二階へ。
![](https://assets.st-note.com/img/1674747919608-uObSBomUqv.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1674747950288-iHiW6du87n.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1674748024084-ZbwlrqXaFA.jpg?width=1200)
各部屋にディスプレイがあり、それについてのインタビューが表示されている。家は大きく、部屋がいくつもあり、それぞれにかつてそこで暮らした人たち一人一人の思い出が堆積し、それを解くように語る言葉がありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1674748050903-yriNmfDhgQ.jpg?width=1200)
ダイニング、というか台所の戸棚の上には古いラジオ。地震があった時などに使うために配置されていたらしい。いまはこの地区の歴史を物語るモニュメントとしての役割を果たしている。
![](https://assets.st-note.com/img/1674748070460-eCpv75IA26.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1674748096712-4zk0lFjg7q.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1674748121828-yoyDBSKxAS.jpg?width=1200)
本当にとにかく時間がなくて、写真を撮るのがせいいっぱいだったのが残念でした。
いまあらためて振り返って思い出してみると、古い家に堆積した住人達の記憶や思い出や生き様なんかが、いまも空気になって家の中に漂っている気配がするような気もしました。本当はそういう空気をゆっくり呼吸しながら、作品世界に埋没するように鑑賞するのが一番よかったんだと思うのだけど…。
現在はこちらの作品は休止中だそうです。次の会期に残っていたら、今度こそゆっくり見に行きたいな。。
(鑑賞日22.11.6)