AIAとのスポンサー契約とスパーズの懐事情 🐓 Levy's World -美しく碧き交渉人-
7月25日、アジアでのプレシーズンツアーの最中にスパーズはAIAと胸スポンサーの契約延長を発表した。今回のコラムではこのスポンサー契約、さらにはクラブ全体の財政状況を概観し、スパーズの今後を占いたい。
2013年に初めてオフィシャルスポンサーになったAIAとは、2014/15シーズンから胸スポンサー契約を結んでいる。2027年まで延長された今回の契約に伴い、Global Principal PartnerとなったAIAとは更なる関係深化とアジア地域でのマーケティング面でのパフォーマンス向上が期待される。
AIAとの契約額は当初年4,000万ポンドとされていたが、football.londonは実際の契約額は約4400万ポンドであると報道している。
この金額はチェルシー、リバプール、アーセナル(4000万ポンド)を超え、ユナイテッド(4700万ポンド)、シティ(4500万ポンド)に次いでプレミアリーグで3番目に高額の契約となる。
出典: Sportsintelligence (画像中のスパーズの契約額は旧契約のもの)
スタジアムネーミングライツの可能性も模索されたが残念ながら今回は見送りとなっており、今後クラブは住居やミュージアムなどの関連設備の完成を待ってスポンサー企業を探す意向だ。
ネーミングライツと袖スポンサーこそ決まっていないものの、今回の契約はスパーズにとって非常に大きな意味を持つ。合計で3億5200万ポンドとなる今回の契約に、15年間の総額で4億5000万ポンドのナイキとのユニフォーム契約を合わせれば総額で8億ポンドを超える巨大な収入を得る見込みとなり、スタジアム建設で負った銀行ローン総額6億3700万ポンドを抱えるクラブにとってはこれ以上ない朗報だ。実際にはローンにかかる利子もあり単純に総額を比較出来るようなものではないが、長期の大型契約により安定した収入を確保したことについては、クラブだけでなく銀行も喜んでいることだろう。さらに今回のAIAとの契約は今後のスパーズのCL(チャンピオンズリーグ)出場権の有無に影響を受けないとする情報もあり、ローン返済のため安定した収入の確保を強く意識していると考えられる。アーセナルがエミレーツを建設した際、銀行はアーセナルがCL権内に入り続けるためにヴェンゲルが長期政権を築くことを望んだという話もある。安定した収入源がないと銀行などの貸主が不安になるのは当然なのだ。
クラブ全体の財政に目を向けると、17/18シーズンの純利益で世界最高額を更新するなどスパーズの収入は右肩上がりである。クラブの試算によると新スタジアム移行によるマッチデー収入は年間で5500万ポンド増加すると言われ(※下記リンク先参照)、ここにNFLやその他イベント開催による収入も加わる。さらには莫大なPL(プレミアリーグ)放映権収入(18/19シーズンは約1億4000万ポンド)やCLの分配金(同シーズンで約9900万ポンド) もあり、スパーズの懐事情はどんどん良くなっている。
(ここ数年で放映権関連収入[紺]が急増。マッチデー収入[黄色]は新スタジアム開業により2019/20シーズンさらに増加予定。商業収入[灰]も順調に成長中。出典は下リンク)
http://financialfootballnews.com/category/tottenham/
実際、良好な財政状況は今夏の移籍市場での動きにも反映されている。移籍市場収支で黒字を確保するSell to buyの方針を捨てて、今夏の移籍市場収支は−8300万ポンドとなっている(Transfermarkt.com)。さらに報道によればディバラの獲得にあと一歩まで迫っていたということもあり、今後もスカッドに多額の投資をすることが予想される。
(赤線は移籍市場における収支を表しているが、デンベレの売却時までは黒字だったことが分かる。出典は下リンク)
今後スパーズとしては、ポチェッティーノの求めるファーストチョイスの選手をたとえ高額になろうとも獲得することを最優先とし、仮に獲得出来なくても無理に妥協してプランBに走るのではなく次の市場に資金を持ち越す、もしくはローン返済を繰り上げるという選択をとることになるだろう。
残念ながら今回ディバラというワールドクラスの選手を補強するという夢は叶わなかったが、良好な財政状況を追い風に真のビッグネームを獲得し、PLとCL優勝に邁進するスパーズの姿を近いうちに拝めるはずだ。
(了)
ライター @yukithfc
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