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アオタケプロジェクト 採択者紹介⑧ 安井番厘さん

アオタケプロジェクトは、青森、秋田、福島地方の若手人材を対象として起業家を発掘・育成しています。採択を終え、現在アイディアを磨き上げている採択者の姿をご紹介します今回ご紹介するのは…

安井番厘さん
沖縄県出身
会津大学
コンピューター理工学部 大学院1年生


ブロックチェーンを活用したデータ連携APIサービス

>>日記データをブロックチェーンに保存し、データが消えない日記アプリを作成してるとお聞きしました。詳しく事業内容を教えていただきたいです。
安井:実は日記アプリから方向転換をしております。当初、日記アプリを作成していましたが、ユーザーがどの程度課金するのかを考えたとき、大きな収益は見込めないだろうという結論に至りました。そのため、より収益性の高い分野へと方向転換し、日記アプリの裏側の処理をAPI化して広く活用できる形にしたサービスの提供にピボットしました。
このAPI化によって、アプリ間でデータの連携がスムーズに行えるようになります。今のデータ連携の方法は、データをエクスポートして変換し、別のシステムに投入する手間が必要です。しかし、自分のサービスである"琥珀API"を使うと、ユーザーはアプリにログインするだけで、すでにデータが連携されている状態になります。つまり、ユーザーが今まで行なっていたデータ連携の手間が消えるということです。これは、アプリ側がユーザーのデータを琥珀APIに預けることで実現しています。
「琥珀APIにデータを預けても大丈夫なのか?」と考えられるかと思います。ここが琥珀APIが他のサービスとは大きくことなる特徴を持つポイントです。琥珀APIは、ブロックチェーン技術などを使い、データの匿名性、安全な保存ができるような設計になっています。
話が難しいので、例えばの話をします。
まずは、今までの方法でのデータ保存の例え話をします。あなた(アプリ側)は、1億円(データ)を業者(データを預かるサービス)に頼んで倉庫に保管してもらいます。業者は、1億円を金庫(暗号化)に入れて山の上の倉庫に保管しに行きました。ここで問題です。業者はちゃんと1億円を保管してくれているでしょうか?1億円という額が大きいのでもしかしたらお金を少し盗んでいるかもしれませんよね?1億円を保管する業者が琥珀APIだとしたらどうなるでしょうか?琥珀APIは、あなたがボタンを押せば、あなたの金庫が透き通るように見えるようになって、あなたは望遠鏡を使って、お金がしっかり保管されていることを確認できます。
そして、お金が欲しくなったらボタン一つであなたの手元にお金が業者を介することなくテレポートしてくるようなイメージです。
つまり、最初のデータ保存の際は、琥珀APIを介する必要があるけど、データの保存確認やデータの取得には琥珀APIを介する必要がないということです。
琥珀APIが世の中に広まれば、小さなサービスが手を取り合って一緒にユーザーの課題を解決したり、活用されていなかったデータが活用されるようになって、新たなビジネスが生まれる可能性もあります。例えるなら、大企業が石像を作っていたのを中小企業が互いのレゴブロックを重ねて一つの像を作る感じです。レゴブロックなので、いろんな形の像を作れるようになり汎用性が高くなります。
多くの小さな課題を解決するシステムの基盤になれたらいいなと思っています。


自身の体験が事業テーマに

>>この事業テーマに決めたきっかけを教えてください。
安井:最初は日記アプリを作ろうとしていました。理由は、日記を書いて、それを数十年後に振り返られるようにしたいと思ったからです。
自分が過去に下した決断について、「なぜそんな決断をしたんだろう?」とわからなくなる時があるんです。
そのため、過去に下した決断の理由を思い出せるように日記を書いていました。
また、最近は1年があっという間に過ぎてしまってこのままだと気づいた時には骨になってしまうと思い、過去にやったことを振り返られるようにしたいと思いました。
でも1ヶ月ぐらい書き続けた後、1週間か2週間ほど書かない期間があったんです。その時に、なんとデータが全部消えてしまって……。
それで「絶対に消えない日記アプリを作りたい!」と思い立ったのがきっかけです。

>>アオタケプロジェクトに参加したきっかけは何ですか?
安井:友達が勧めてくれたことがきっかけです。過去に様々なイベントやプログラムに参加していたからか、特に抵抗もなくやってみようかなと自然に思いました。

アオタケプロジェクトに参加しての感想

>>アオタケプロジェクトに参加してみての感想を教えてください。
安井:採択されたのが7月頃だったのですが、その後は就職活動が忙しく、本格的に取り組み始めたのは10月くらいからでした。それでも就職活動と並行しながら進めていました。そこからシステム開発など、さまざまな作業に取り組み始めました。やはり支援金があると助かりますね。活動の幅が広がると感じます。

>>支援金はどのようなことに使っていますか?
安井:主に開発を手伝ってくれる方への報酬や、ヒアリングにかかる費用、イベント参加のための移動費や宿泊費などに使っています。イベント参加は特に重要で、人とのつながりがビジネスを加速させるきっかけになることが多いです。
例えば、先日の大阪のイベントでは、自分と似たような活動をしている九州大学の方と出会いました。その方と話し合い、一緒に活動しようという話になり、来年2月からその方が自分のプロジェクトに参加してくれることになりました。
こうしたつながりが、新たな展開を生むきっかけになっていると思います。


システム面のことだけではなくビジネス面にも力を入れる

>>システムの開発を進められているとのことでしたが、ビジネスの面については考えていることはありますでしょうか?

安井:最近、このことについてよく考えていて、そのためにいろいろとヒアリングをしています。システムのことばかり考えていると、「このシステムは何のために使えるのか」という部分をうまく言語化できなくなることがあるんですよね。
例えば、企業がAPIを使う手間を省くことや、企業がエクスポートしたデータを変換して他のシステムにインポートする手間を減らす、というような言い回しができます。そういった表現を工夫しながら、ビジネスの面もしっかり考えています。
ただ、ビジネス面と技術面の両方を考えるのは本当に大変で、頭の切り替えが難しいんです。タスクの種類が増えると、それだけでかなり疲れてしまいます。
しかし、現在はチームとして作業しており、作業を分担できるようになってきたので、だんだん楽になってきました。
今は特にビジネス面をしっかり考えている最中、という感じですね。

>>ありがとうございます。これまでビジネスについて考えた経験などはあったんでしょうか。
安井:そうですね。最初に参加したビジネスコンテストは、国が主催する「イノベーション」に関するものでした。また、起業家育成プログラムやアイデアコンテストのようなイベントにも参加しました。
こうした経験で、システム面だけでなく、ビジネス面についても深く考えられるきっかけになったと思います。

今後はヒアリングを重ねてユーザーを見つけていきたい

>>事業内容について、現在の課題はありますか。
安井:現在の課題は、クライアントや需要が本当に存在するのかがまだ明確にわかっていないことです。
検証のため、ひたすらヒアリングや会議を重ねていくつもりです。実際にヒアリングを進める中で「何かしらの課題はありそうだ」と感じることはあるのですが、具体的な顧客像がまだ見えてこないのが現状です。
つまり、「このシステムを使いたい」「連携したい」と明確に言ってくれるクライアントをほとんど見つけられていません。ただ、1つの組織とはすでに連携する予定があります。

>>今後の展望をお聞かせください。
安井:アオタケプロジェクトの期間中にヒアリングを行い、ターゲットを見つけて、実際にシステムを導入してもらうところまでは進めたいと考えています。そして、その後は「未踏プロジェクト」に応募し、採択されたら、さらに開発を進めながらユーザーを見つけていきたいと思っています。

インタビュアーによるまとめ

安井番厘さんは、日記アプリの開発からスタートし、収益性や実用性を追求する中でAPIサービスへと方向転換を図りました。ブロックチェーン技術を活用することで、データの安全性や透明性を担保しつつ、アプリ間のデータ連携を効率化する仕組みを構築しています。
ビジネス面と技術面の両立に苦労しながらも、ヒアリングやイベントを通じて新たなつながりや顧客のニーズを模索し続ける姿勢から、今後の事業の成長を予感させると感じました。
アオタケプロジェクトを通じて、安井さんのビジョンがどのように形になっていくのか、今後の展開が非常に楽しみです。応援しています!

話を聞いた人

佐々木栞
宮城大学事業構想学群2年 宮城県仙台市出身

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