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「見えない痛み」へ差し伸べられた『沙花叉クロヱ』の手 

1月26日に卒業ライブが発表された沙花叉クロヱについて、私が思う彼女の好きなところを書きます。
特段、お気持ち表明の記事ではないのでご安心ください。
また、私自身はホロライブの箱推しみたいな立場であり、記事の内容は全て個人の感想になるので解釈違いはご了承いただけますと幸いです。

沙花叉クロヱと言えば、ぽえぽえ言ってて、風呂キャンセルして、スロカスで、歌うと別人になる、オタクが好きな要素もりもりのアイドルであり、配信者でした。
しかしながら、個人的に彼女の一番好きなところは「真実を正しく捉える目」あるいは「人の深いところまで思慮を巡らせることができる思考」を持っていたことにあります。

彼女の配信を全く見ない人が例えば彼女が口する「ぽえぽえ」みたいなセリフを聞いて思うのは、きっと「あざとい」という単語だと思いますが、私にとって沙花叉クロヱという存在はこの「あざとさ」から最も遠い人物です。むしろ、最も遠いからこそ「あざとさ」を演出できている人物だと捉えています。
それは、彼女が人一倍人間の「仮面」や「裏表」もしくは、「空気を読む」や「普通」みたいなことに対して意識的に対立する立場を取っているように思うからです。
2024年11月29日に発表されたオリジナル楽曲「モードク」は、そんな彼女の本質が最後の最後で発散されたような内容でした。

歌詞にもある『表面じゃ良い子のフリして』といった人の表の顔と裏の顔の乖離、そしてそれに飲み込まれまいという強い抵抗の気持ちが曲全体から伝わってきます。
そして、この抵抗の気持ちは「そういう人を批判したい」ということではなく、彼女自身が人の本質・真実と向き合いたいと強く願った結果生じたもののように見えます。
彼女の配信で私が印象的なのは「スーパーチャット読み」の丁寧さにありました。私自身は沙花叉クロヱに限らずスパチャを送るタイプではないので、大体の場合「スパチャ読み」の時間はその配信を離脱しがちですが、沙花叉クロヱのスパチャ読みは、彼女の丁寧で寄り添うような声がとても心地よく、そのまま聞き入ってしまったことがあります。
「スーパーチャット」はまさしく、「魂と魂の会話」に近い部分があります。お金を払って、絶対に伝えたいと思ったその言葉には文面以上の想いが含まれており、そんなその人の「本質」に溢れた言葉こそ沙花叉クロヱにとって、最も向き合いたいと思えるものだったのだと思います。

彼女の目は、「その人が本当に考えていることは何か」という「真実」や「本質」に常に向けられており、だからこそ人の「見えない痛み」にも一早く気づくことができます。

ホロ鯖ハードコアマイクラ企画にて、天音かなたが裁判のわちゃわちゃの中、重要な証言をすることができずに落ち込むシーンでは、最初にそれに気がつき寄り添います。
「私落ち込んでるんだよね」や「傷ついた」と口で言う人を慰めることは簡単ですが、本当に辛いとき、人は「誰にも言えず」「明るくふるまう」という「本質」を彼女は見ようとしており、そして天音かなたという「気遣いの鬼」であればそれが尚の事であると沙花叉クロヱは分かっています。

また、JPでは初の後輩であるReGLOSSを人一倍気に掛けていたのも非常に印象的でした。
「ホロライブ」という先達が積み上げてきた箱に「助けられて自分がいる」と感じてしまう後輩という立場は、特に「助けてくれ」と表立って言えず、「痛みが見えない」傾向にあります。また、仲間でありながら競争相手である「クリエイター同士」であれば、それはことさら「自分だけ助けを求める」という行為に至り難く、「周りが気づいて声を掛ける」以外に助ける手段がないことも多いと思います。
泣きながら感謝を伝えた轟はじめだけではなく、ReGLOSSの他のメンバーも彼女に早い段階で声を掛けられたことを話しており、これは想像ですがデビュー間もなくの「ホロライブっぽくない」や「何で7期生じゃないんだ」といったReGLOSSに対しての「個性の否定」という風当たりを沙花叉クロヱは感じ取り、後輩へ「普通」という圧力に負けて欲しくないという気持ちから声を掛けていったのではと考えています。

私にとっての沙花叉クロヱという人物は「あざとくて可愛い」わけでも、反対に「サバサバしている」という印象でもなく、「見えない痛みに寄り添える優しい人」でした。
「モードク」という曲で示した「魂で話そうよ」というその背中は、轟はじめが言ったように多くの人を「救った」と思います。
同時に、沙花叉クロヱが手を差し伸べた「天音かなた」や「轟はじめ」は、やはり彼女に非常に近い気質を持つホロメンです。
沙花叉クロヱの「普通」へのアンチテーゼが、これからも「ホロライブ」という事務所のどこかで生き続けることを切に願っています。

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