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人的資本経営元年!?組織の最適な意思決定を支えるパナリットとは

「知の還流」がコンセプトのインキュベーションオフィス「SPROUND」をご利用の企業、通称SPROUNDERの入居者インタビュー第14弾。今回は、パナリット株式会社CEOの小川高子さんにお話を伺います。

IVS KYOTOピッチコンテストファイナリスト、スタートアップワールドカップ2023 TOKYOでの準優勝など、益々注目集まるパナリット株式会社。同社が掲げる「人的資本経営」とは何か、CEO小川さんのアツい想いをお話いただきました。


小川高子/Takako Ogawa パナリット株式会社 CEO

小川さんの自己紹介、共同創業者トランさんとの出会い

小川さん自己紹介

國分(SPROUND):本日はよろしくお願いします。早速ですが、ご経歴を含めて自己紹介をお願いいたします。

小川さん(パナリット):私は、新卒でワークスアプリケーションズという人事給与システムの会社に入社し、そこから人事一筋のキャリアを歩んできました。採用担当としてスタートし、入社して2年が経った頃、Google Japanがものすごい勢いで採用を伸ばしており、突然私に声がかかりました。

Googleのインフラを支える人事というのは面白いと思い、Googleに転職しました。しばらく採用を担当した後、人事の他の領域も見たいと思い、人材開発(トレーニングや研修などをデザインやファシリテーションするチーム)に移り、日本だけでなくアジアパシフィックエリアを見ていました。その後、Googleのアメリカ本社に異動。そこでは約5年間、採用のプロセス設計やGoogleの人事戦略に従事していました。

その後日本に戻ってGoogle Japanで働くという選択肢もありましたが、スタートアップの領域に興味を持ってスタートアップに飛び込み、今ではパナリットの代表を務めています。

共同創業者トランさんとの出会い

國分:共同創業者であるトランさんとはGoogle時代に出会われたとのことですが、どのような経緯で出会われたのでしょうか?

小川さん:Googleは部活がすごく盛んで、Musicians at Googleという音楽サークルで出会い、Google’s Got Talentというショーで一緒のバンドで出演して仲良くなりました。スタートアップを創業するときにトランさんに参加してもらいたいと思ったのは、「Area 120」がきっかけです。

Area 120とは、Googleの有名な20%ルール(自分の本業じゃなくてもパッションのあることを20%使ってやって良いというルール)を100%でやりませんかという、良いアイディアを持っている人達に一定の時間と予算を与えてProof of Conceptを作ってもらうことを支援するプログラムです。約300チームが応募して一握りの人しか入れないプログラムでした。

國分:Area120では、小川さんはどのようなアイディアを考えられたのでしょうか?

小川さん:我々は越境ECのアイディアとして「Shop the Gap」というアイディアを考えました。日本ではすごく高いのにアメリカから輸入するとすごく安く買えることがあります。Googleには「Googleショッピング」というサービスがあって、世界中の品番やカタログIDを持っています。そのデータを見たら、日本⇄アメリカ間で同一の製品なのに50%以上も価格に差がある製品の割合が実に5割もある、ということがわかりました。

このデータを使えば、世界中の不合理な価格差を埋め、最適なショッピング体験をユーザーに提供できる。これはGoogleにとっても良いビジネスになるのではないかと思い、「Shop the Gap」というアイディアとしてピッチしました。

國分:そのアイディアは最終的にArea120で採用されたのでしょうか?

小川さん:アイディアをピッチしましたが、最初アイディアができた時点ではチームに私とトランさんを含めて3人しかおらず、全員ビジネスサイドの人間だったので、エンジニアがいないことが理由で落とされてしまいました。翌年エンジニアをチームに迎えてリベンジしようと思っていたのですが、一方で過去のArea120採択チームのなかに、アイディアをちゃんと見つけなければ今期で終わりと言われている、すごく優秀な2人のエンジニアチームがいることが分かりました。彼らはアイディアを求め、私達はエンジニアを求めていました。結果、彼らと共に取り組むことが決まり、彼らが既にArea120に採択されてていたため、裏口入学できることになったんです。半年間このArea120のプロジェクトに取り組んだのがトランさんと初めてビジネスとして一緒に何かをやった経験でした。

パナリットの事業について

國分:ありがとうございます。どのような経緯からパナリットを起業されて、現在どのような事業を展開されているのでしょうか?

小川さん:パナリットは、People dataの見える化・分析活用ができるプラットフォームを提供しています。きっかけは、シンガポール在住のAppleやUberの人事部長を歴任した人事のキャリアが長い人がいて、彼がPeople Analyticsのソリューションのベータ版を作っていたところにたまたま出会ったというものです。GoogleはPeople Analyticsで有名だったので、このベータ版のプロダクトにフィードバックが欲しいと共通の知り合いが彼と引き合わせてくれました。

そのベータ版のプロダクトを見た時に、GoogleがGoogle社内で使うために作ったものそのものだと思い、これを世界中の企業が使えるようにSaaSの形で展開したら、世界中の組織がGoogleと同等もしくはそれ以上に成功できるのではないかと考えました。

國分:実際に小川さんが、Googleで働かれていたからこそ、べータ版のプロダクトの可能性に気づくことができたんですね。

小川さん:Googleは良い会社とよく言われますが、なぜ良い会社なのかというとデータに基づく根拠ある人事意思決定をしているからだと思います。Googleで働く多くの人達が、多種多様な福利厚生や、Googleの評価、採用制度に納得感を持っていました。更に、採用プロセスを経てきた人はものすごく優秀で、我々が設計したOnboardingプロセスを通ると、短期間でジョブレディーな状態を迎えられる。優秀な人材が幸せに働ける仕組みが一定できていたと思います。

しかし、その仕組みのシークレットソースは「データドリブンな意思決定」。パナリットは世界中の企業にデータドリブンな意思決定(すなわちより良い意思決定)を届けられると思いました。。

國分:人的資本という分野に注目されたのは、小川さんが前職のGoogle時代に、人材開発などをご担当されていたからなのでしょうか?

小川さん:Google社内にPanalytのようなツールがあり、私はいちアナリスト/プロジェクトマネジャーとしてそのユーザーでした。たとえば、現採用プロセスにおける無駄を無くすことができたら、会社にとって年間どのくらいのタイムセービングになるか?そのタイムセービングをお金に換算したら年間いくら分になるのか?タイムセービング以外に従業員のエクスピリエンスはどの程度向上するか?こういったことを、そのツールを使うと弾き出すことができます。

そういうデータがあると、じゃあそのタイムセービングを実現するために、いくらなら施策に投入する意味があるよね、というような話ができてきます。人事データをプロマネとして日々使い、会社に多くのリターンを生み出した経験が、今のパナリットの事業に繋がっていると思います。

合計7ヶ国への導入、グローバルSaaSを目指す上で大切なこと

成功のカギは「選択と集中」

國分:小川さん自身、Google本社でのご経験など国際経験豊富で、パナリットは既に日本以外にも進出されていますが、グローバルSaaSを目指す上で意識されていることはありますか?

小川さん:実態としては、現在日本以外にも6カ国での展開実績があり、イギリス・ブラジル・オーストラリア・インドネシア・シンガポールなどでの導入実績があります。ですが、今となっては、アーリーフェーズのベンチャーはまず1ヶ国、1つのセグメントに選択と集中をしたほうが良いと考えています。

選択と集中をしてからChurn Rateが激減しました。今の年間のChurn Rateは1%未満です。それまでの誰にでも売ります状態の時と比較すると雲泥の差です。2〜3年前のAnnual Revenue Churnは7割くらいで、ほとんど定着していませんでした。この穴の空いたバケツ状態は何かが間違っていると思い、要素分解していくと、いくらグローバルで使えるSaaSといっても、お客さんの解像度を高めていかないといけないプレPMFフェーズで、あっちにもこっちにもいるお客さんをきちんと見れず、お客さんに対して然るべきCSの工数も割けない状態でした。それは戦略が間違っているということで、今は日本に選択と集中をしています。

そのため海外でのマーケティングは基本的に止めていますが、初期の導入実績は今後海外進出できるという証明だとも思います。普通、日本の企業が海外進出するとなったら、精鋭チームを派遣して、お金もすごくかけます。しかし、お金はかけても全く売れない・現地の採用ができないということもたくさんあります。我々の場合、マーケティングコストほぼゼロで海外の企業を取れたのは事実なので、チャンスはあると思っています。チャンスがあるから取るのではなくて、チャンスがあったとしても、いつどのように戦略的に海外へ出ていくのかを決めるのが経営者の仕事だと思います。

注目され始めた「人的資本経営」の考え

國分:現在は国内のマーケットに集中されているということで、昨年週刊東洋経済の「すごいベンチャー100」に選出されたり、今年はIVS 京都のピッチコンテストに登壇されたりと活躍の場を広げられていると思いますが、ここ1年間でパナリットとして大きなニュースなどはありますか?

小川さん:メディアで取り上げられるようになったのもそうですが、目に見えて変わったのは、大企業が注目し始めたことです。大企業も「人的資本経営」に向き合わなければならないという空気感になってきて、人的資本に投資をしていくべきと、我々だけでなく様々な企業が言い始めました。また、先日、プライム上場企業の役員企業の人達がずらっと並ぶ文化会にご招待頂きましたが、そういった人達も志同じく必要性を感じていました。そこがこの一年の本当に大きな違いだと感じています。

國分:人的資本経営に注目されたり、人事に関わるキャリアが長い小川さんが、パナリットのカルチャー作りについて、意識されていることはありますか?

小川さん:グローバルだからこそ、コミュニケーションをブリッジすることが重要だと思っています。特に今、従業員も日本支社の方が多くなってきたので、初期からいた海外メンバーのケアを意識しています。Disengageしないように日本に来る機会を作ったり、全員で顔を合わせる機会を設けたり、Annualでやっている全社オフサイトは2日間みんなで会社の今の事業のことについて知る機会や個人的に知り合える機会などをファシリテートしてきました。今年からはFace to Faceのオフサイトができればと思っています。

SPROUNDのご利用について

國分:パナリットさんのユーザー会「Friends of Panalyt」であったり、Quarterly SPROUNDにご参加いただいたりと、SPROUNDをご利用いただいていると思うのですが、現在どのようにSPROUNDをご利用されていますか?

小川さん:リモートファーストの会社なので、各チーム各メンバーに入社時に自宅で働く選択肢を示しています。ただ、たまに家ではなくオフィスに来たいという人もいます。週に何回も他の人と接点を持って働きたいという人は正会員に、そうでない人には1 Day Passを、各メンバーに自由に使ってもらっています。チームによってはもっとFace Timeが欲しいというチームも出てきており、昨年立ち上げたCBPチームは、Monthly CBPオフサイトを一日中SPROUNDで開催し、会議室を使って議論をしたり、困っていることを共有しています。

SPROUNDで仕事をして、その後飲みに行く流れができてきて、飲みに行く機会を設定しやすくなっているのは良いですね。そのほかにも、海外から来たチームのメンバーに1 Day Passで使ってもらったり、20人以上の人達をお招きした「Friends of Panalyt」という結構大規模な会をやりましたが、そういった時に場所があるというのは大事だと思っています。

今後の展望と意気込み

國分:最後に、今後のパナリットの展望についてお伺いさせてください

小川さん:今年2023年は「人的資本経営元年」とも言われています。人的資本経営を正しく推進するために、まずは見える(=現状値の把握)を促すことが必要です。多くの組織が、人や組織を数字で見える化することにすごく苦戦しているので、しっかりとサポートしていきたいと思っています。実はこれまでは、人事のデータ活用はマーケットがあるのかとと懸念が多かったのですが、ようやく今年に入って「やっぱりマーケットはある」と風向きが変わってきました。我々がやってきたことは正しかったと思います。ここからは、どこまでやり切れるかが大事ですね。

國分:ありがとうございます。人的資本経営が注目され始めている中で、競合他社にはないパナリットさんの強みはありますか?

小川さん:マーケティングメッセージ上では似たようなプロダクトが出てきています。パナリットの強みは、お客さん自身も気づいていない間違いや煩雑なデータを全部整理して「極限まで精確な情報を出せる」ところ。膨大なデータを取り扱うなか、100点満点の回答を出すのはすごく難しいことです。

メンバーも疲弊したり、諦めたくなったりして、「なんで99点じゃダメなんですか」と言われることもありますが、そこを諦めないで、今知りうる情報の中での100点を出すことの意義を、文化としてパナリットメンバーに浸透させていきたいと思っています。人事が扱う情報は、時に人の人生を変えてしまうこともある。だからこそ、人的資本経営においては責任を持って数字を扱うことがすごく重要です。我々は99点と100点の1点を妥協してはいけない、そうデータにコミットする社風を作ることこそ、これから1年我々が一番注力したいところです。

國分:ありがとうございます。パナリットさんが掲げる「人的資本経営」の重要性、会社としての熱気が伝わる貴重なインタビューになりました!パナリットさんの今後のご活躍がさらに楽しみです!本日はありがとうございました!

(文・聞き手:國分輝歩(SPROUND Community Manager) / 編集:上野 なつみ(DNX Ventures))


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