2024年映像の久保史緒里
2024年9月17日、石黒正数先生の初期の大名作『ネムルバカ』の実写映画化が発表された。監督を務めるのは『ベイビーわるきゅーれ』で注目を集める阪元裕吾氏。W主演としてキャスティングされたのは、『恋は光』でも最高だった平祐奈さん、そして我らが久保史緒里ちゃん!
個人的な『ネムルバカ』への愛、実写映画化&久保ちゃんがキャスティングされたことへの果てしない喜び、そして石黒作品への愛そのものを語り始めたらキリがないので今回は抑えるとして。
(学生時代に書店で『それでも町は廻っている』1巻をふと手に取った瞬間のことから振り返ったり、藤子・F・不二雄先生の話に大幅に尺を割いたりする必要が出てしまうので)
今回取り上げたいのは、俳優・久保史緒里その人である。
2024年は、久保ちゃんの(様々なうちの演技にこと関する)活動において、「映像の年」だった。
映画『ネムルバカ』の情報解禁はその最終走者のようなもので、いや公開は来年だし撮影が今年内なのか定かではないしこの後に更なる大玉が待っている可能性もなくはないが、ともかく本年は彼女の「映像の年」だった。
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まずは今年の、俳優・久保史緒里の「映像」をさらうことから始めよう。
ここでは省いたが、このほか6月に『マクドナルド』のCMにも出演しており、これもまた映像仕事のひとつである。
先に言うと、上に取り上げたものは現時点ではすべて「予定」、つまり情報公開のみがされており、実際に放送や上映されていないものが主である(『ネムルバカ』は上記の通りのほか、『未来の~』は7月3日、『誰よりも~』は8月5日解禁であった)。上ではうやむやに書いたが、おそらく現時点では「撮影」のみが2024年に行われたと考えられる。
彼女はあくまでも肩書きは「アイドル」。つい先日まで乃木坂46として夏のツアーを行っており、毎週のラジオ生放送、その他の活動にしてもグループの先頭に立つ一人として、ノンジャンルな活動の中で相当に忙しい日々を送っていることだろう。
そんな中で、10月から放送のドラマや、来年公開の映画(それも2本!)に出演すること=日々撮影に臨んでいることの過酷さたるや! ツアー期間やそのリハーサル期間に被っているであろうことも想像に難くない!
もちろん映像作品に出演することはよいことにほかならないが、スケジュール面やそれに紐付く体力面、「切り替え」「集中」にかかる精神力面など、想像するだにやはり過酷だ。
まずもって、その点について拍手喝采を贈りたい。なんなら五体投地を捧げたい。配信で視聴したが、『真夏の全国ツアー』締めくくりとなる神宮公演でも彼女は大変に活躍していた。さらに今年は、活動を長らく共にしてきた同期メンバーを見送る機会が多かったりもしたのだ。
言うて彼女は、(数だけならば)2023年のほうが多くの映像作品に出演していた。
映画『リバー、流れないでよ』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、連続ドラマW『落日』、そして大河ドラマ『どうする家康』。
しかしいずれも「主演」ではなかった。もちろん主役じゃないからといって、じゃあ楽チンっしょと言う気は毛頭ない。大河なんてとても"大きい"仕事である。でもでもしかし、2024年に情報公開された3作品はすべて「主演」、ないしメインキャストであるのだ。
それぞれの作品的な価値とか重要度とかに優劣はなくとも、本人の心情として、いざその立場においては「プレッシャー」「覚悟」は一味違うのではないか。
それが、かける3の分だけドシンとのしかかった2024年。そして実際の撮影に臨んだ(であろう)2024年。久保ちゃんにとっては、やはり「映像の年」なのではないかと思う。
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あえて「映像の」と表現して、何かとの区別をことさらに強調しているわけだが、アイドルとしてではなく俳優・久保史緒里のいちファンとして(※アイドルとしても大好き)、あえて言おう。
「舞台観たいな」と。
もう少し具体的に言ってみよう。
「映像作品にいっぱい出るのはもちろん嬉しいけど、もしかして今年は舞台出ないの!?」と。
率直なところ、やはりずっと「舞台に立つ久保史緒里」を楽しんできたし、たっぷり魅了されてきたし、次もまた期待してきた。
「映像の芝居」と「舞台の芝居」、さらには芝居に限らないアレやコレやの要素、そこにはハッキリとした違いがあると思う。自ら舞台に立つ体験してもいなければ、上段から批評できるほどの目も有してない立場なので、偉そうにも言えはしないが、感覚的にもやはり明確に別物である。
画面づくりのコントロール力、目の前で演じるか否かの臨場感、カット割の有無によるリズム構成、ハプニングを含めた現場のリアルタイム性、その他うんぬんかんぬん……。
「浴びるもの」としてのお芝居ないし物語の帯びる性質が、映像と舞台とじゃあまりにも違いすぎる。どちらもしっかり観ている人であれば、少なくとも感覚的に区別できないはずはないことだろう。
そして久保史緒里のいちファンとして、彼女はすごく「舞台の人」だと感じていた。
舞台上の久保ちゃん、あるいは久保ちゃんが出演する舞台作品を楽しんできた身で(あまりにも)あるために、「今年は舞台に出なさそう」ということにどうしてもソワソワしてしまうのだ。
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何ゆえ「舞台の人」だと感じていたかというと、その実力はさることながら、ずっと舞台に出ていたからだ。具体的に言えば、久保ちゃんは「デビュー以来、毎年舞台に出ていた」。
上の引用部は個人の出演だが、ここに載せているより以前の2017年には3期生全員による『3人のプリンシパル』や『見殺し姫』に出演している。
グループ加入したばかりの2016年、世界情勢的に機会の持ちようがなかった2020年は差し引くにしても、久保ちゃんは毎年常に舞台出演しており、何なら2018年の『ザンビ』からはずっと主演の立場が続いていたという、凄い采配である。2023年の『天號星』は主演でないにしても、物語のカギとなる重要人物だったしそもそも大型劇団の客演だしで、やはり凄い。
彼女は毎年舞台に出ていたし、いちファンたる自分も「舞台に出る彼女を毎年楽しんできた」。もはやそれが毎年のルーチンのようでさえあった。
久保ちゃんの生の芝居も歌もあまりにも素晴らしいのは説明するまでもない。とりわけミュージカル『美少女戦士セーラームーン』では、長い歴史をもつ作品であるために、厳しい眼も多かった中、主役として抜きん出て高い評価を獲得していた。つまりは元々のファンだけでない層からも、彼女のその能力は十二分に認められていたのだ。
そんな彼女が新たに舞台作品に出るかどうか。やはりそこは常に注目してしまっていた。
各種エンタメの情報解禁は、毎日の朝イチか12時か18時に行われることが多い。それを把握しているがため、その辺りの時間帯ではいつもSNSを注視してきた。
もちろん様々な作品や出演者について広くアンテナを張っていたものの、その中の大きな一つとして「乃木坂46・久保史緒里、舞台『●●』に出演決定」の文字を待ち望んでいたのも確かである。
2022年、2023年の出演作は9月上演であり、情報解禁は当年の6~7月頃に行われていた。このことから、ざっくり公演の2~3ヶ月前に告知があるとして、2024年内に何かあるとすれば9月はそのリミットといえる時期。
そんな中で行われたのが、映画『ネムルバカ』公開決定・久保史緒里出演の告知であった。
その報せを目にした時は、それはまあ、忙しい状態になった。
「ネムルバカ映画化マジかよ!! 嬉しすぎる……しかもベイビーわるきゅーれの監督じゃん!!! 絶対面白くなる!!!……え、W主演に久保ちゃん!?!? 最高すぎる!!!!!…………ということは、舞台は……なさそうってコト!?」
という、目まぐるしく精神の更新が行われたというのが正直なところであるのだ。
「久保ちゃんが映画に出ることが嬉しい」と、「久保ちゃんが舞台に出ないっぽくて残念」は両立する、いや、両立してしまう。決して、その2つが打ち消しあうというわけではない。喜びは本当に大きい。
それこそ昔から愛していた石黒作品の実写化であり、かつ近年の個人的な重要作品である映画『ベイビーわるきゅーれ』の監督作に、よもや久保ちゃんが出演するなんて、私信かと錯覚するくらいの座組だ。こう考えることは普段は少ないが、さすがに2025年までは死ねないと心から思った。
だが……!
この調子だと2024年、久保ちゃんの舞台出演は無いということか……!!!
そんな悔しさ(に似たうんぬんかんぬん)がどうしても立ち上ってしまうわけ……!
喜んでいる一方で悔しんでしまうのだ……!!!
そんな精神状態から出る言葉がこれであるのだ。
「2024年は久保史緒里の映像の年である」。
あくまで念押しするが、久保ちゃんが映像作品に出ることは本当に嬉しいし喜んでいるし、観たら心から楽しんでしまう。『ネムルバカ』はもちろん『誰よりもつよく抱きしめて』も『未来の私にブッかまされる!?』も絶対に観る。
でもだからと言って消えないのだ。うんぬんかんぬんな気持ちは。そーいう複雑な心境を、ともかく書き記してみようというのが今回の本旨であった。
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個人的に、これまでの人生経験において「こうなったら良いな」「こういう結果になるんだろうな」という希望や確信を持つたびに、ことごとく覆されてきた。
こちらが一度脳内で捉えた未来予測や願望は、おおむね迎えることがなかったのだ。
だからこそ、あえて今回のようにnoteを書いた。
改めて、強く零しておこう。
「あーあ、今年は久保ちゃんは舞台に出ないんだなー。毎年必ず観れるつもりでいたけど、今年は出ないってことなんだなー。確信した。」
これでOK!
今年も残り3ヶ月!
なんとかなれーッ!
以上。