高山一実は変な人なのか天才なのかわからない
(長いので目次まで飛ばしていいです)
かずみんは面白い。これはもう間違いないことだ。
そして変な人だ。これは、メンバーからも度々そう言われているので、事実として話を進めたい。
彼女は所謂「バラエティーメン」的な認識をされているとは思うが、並んでよく名が挙がる秋元・松村両氏と比べてみると、その立ち回りが割と違う。
彼女らは平場の潤滑剤役として的確なコメントを放ったり、逆に一連の流れをスパッとオトしたり、わかりやすくイジられたり。いずれも、技術を以てその役割を全うしている。
対して、かずみんの動きはそういった「ソツのない上手な立ち回り」には当たらないように思う。もちろん上手くないわけではないが、どちらかというと、予想外の事をしたり言ったりして笑いの爆発をかっさらっている。
『乃木坂ってどこ?』における、『乃木坂46運動オンチNO.1決定戦』での走高跳びの不可解な助走の仕方や、『夏を先取り! 乃木坂怪談』での「新車買うんです」という怖い話の常識から解き放たれたオチなどは、その最たるものだ。
(ちなみに彼女の行動はあくまで「予想外な事」であり、「失敗やスベり」ではないことがまたポイントである。本旨ではないが、重要なので触れた。)
それでいて、彼女は非常にまじめな”イイヤツ”であるため、「まっとうなコメント」を言うことも出来る。これはつまり、「自分が出演者として楽しんでいることがよく伝わる」コメントだったり、「相手(や取り上げられている事柄)をまっすぐ受け止めて、いいところをちゃんと理解して肯定する」コメントのことだ。
例えば『しくじり先生』に出演した時は、先生役の出演者が自らの失敗から学んだ人生の教訓を語るが、それを受けての感想から滲む”やさしさ”は実にかずみんらしいものである。
でも、やっぱり彼女は変な人だ。トータルの振る舞いはやっぱり変だ。19thヒット祈願の「わざとじゃないんでしょ!?」とかも、何故そこだけにこだわるんだ。
2019年の『乃木坂工事中』では、特にそれを感じる場面や発言が多かった。だから今回はそれを挙げていきたい。
挙げていきたいんだけれども、果たして彼女は本当に「変な人」なのだろうか、とも思う。
なぜなら、先述の「場面や発言」、それらが妙なほど的確なのだ。いずれも笑いを得るべくして得ている。その全てがねらい通りなのであれば、もう、上手どころではない。
というわけで、挙げた上でそれがいかに的確かを書いていきたい。その上で、彼女が変な人か天才かを考えたい。検証ではなく、あくまで考えるだけ。
長々書いたけど、ここまで前おきです。得意の1000文字超え前おきです。
(参考)
私、まあや、生ちゃん、日村さん
例えばこれ、2019年内最後の企画『乃木坂B級ニュース』での一場面。あくまで仲良しメンバーによるグループが残っているか聞いたつもりだった設楽さんに対し、ナチュラルに日村さんの名前も含めて挙げるかずみんに、不意を突かれて笑いが起きていた。
番組の企画でチューリップに加入した日村さんの存在を設楽さんは忘れていたところ、かずみんはちゃんとメンバーの一人だと認識していたと思うとグッときそうではあるが、ここが怪しい。
設楽さんに「チューリップは、」と問われた時、かずみんは「4人残ってます!」と返答しているが、これが純奈の「スイカメンバーの卒業が続いて気付けば自分1人に」という流れを汲んだ発言である以上、一見「”卒業していないメンバーが”まだ4人います」という意味に受け取ってしまう。故に不意を突かれたわけだ。日村さんの名前が、その前提に対しての裏切りとして機能している。
加えて、4人分の名前を羅列する際に「日村さん」を最後に置いている。これは古き良き4段オチであると同時に、日村さんの名前をオチとして用いることで、上記の裏切りとしての機能がより分かりやすく伝わる言い方にもなっている。
つまり、この発言はしっかりセオリーに則った構造の元で「面白い発言」として確立している。
これを、果たして「変な人」としての突飛な発言で言えるものだろうか。なんせ完成され尽くしている。きっちりと「笑いが取れる仕組み」を持った発言だ。
日村さんが所属しているとはいえ、グループを卒業したメンバーもいる以上そちらの話題に触れてもよさそうなのに、この運びにした辺りも「あえて」の匂いがする。
これが計算通りならば天才の所業である。
こんな風に、彼女の発言は単に面白いだけなようで実は複層的に意味を持ち、それに気づくと笑える、というものばかりだ。
さあ、ここから更に色々挙げて怪しんでいこう。
そうですそうです
こちらも同じ『乃木坂B級ニュース』より、飛鳥ちゃんが「自分の絵は周りに褒められる(なので下手扱いしないでほしい)」という旨の発言をした流れでの一言。
これは一見何気ない返事のようだが、前後の流れを踏まえると、実に”ワルい”発言であることがわかる。
上のように「自分の絵は周りに褒められる」と主張する飛鳥ちゃんに対し、設楽さんは「下手なんだよ」と頑と言いつける。
それへの反論として、飛鳥ちゃんは「メンバーも結構褒めてくれる」「似顔絵会とかすると」と並べて「高山とかも」と名前を出す(設楽さんは「甘やかすな」と挟む)。
そして、飛鳥ちゃんの発言を受けた設楽さんの「(似顔絵会って)味方しかいないやつだろ?」という質問に、かずみんが「そうですそうです」である。
流れでさらっと言ってしまったようにも見えるが、明確な意図をもって「味方しかいないやつ」を肯定しているとも取れる。そうであるなら、これは「味方しかいない」「甘やかしてる」を肯定してる言葉である。
つまり、設楽さんの言う「(下手だと認識しないと)どっかで恥かくって」の状況にしれっと追い込んでいる。分かった上で飛鳥ちゃんの絵を褒めているし、それを本人の前であっさり認めている。
カラッとした変な人の顔をして、実にしたたかに飛鳥ちゃんをイジっている。いやあ、大変”ワルい”。
彼女は、時たま的確に痛いところを突くイジりをしれっと行う。そのしれっと具合が、彼女の「変な人」な印象も相まって、実に上手い。次に挙げるのもそれに当たるものだ。
花奈だ!
これは『令和の運勢を占え! G-1グランプリ』でのゲスト、フォーチュン中田さんに関する発言である。
よっちゃん先生こと濱口善幸氏に指導を仰いだフォーチュンさん、日頃からフォーチュン中田はあくまで中田花奈とは別人であると主張していたが、指導の様子を写した写真ではうっかり素顔を丸出しにしてしまっていた。
それを指差し「花奈だ!」。
さも「あっ、知ってる人が写ってる!」くらいの無邪気さを演じつつ、フォーチュンさんが指摘してほしくないことを端的かつ的確に指摘している。
加えて、隣に座っていたまいやんの、一瞬後の「花奈だね!」と理解するスピード感を見るに、かずみんのその気付きがいかに早かったかがわかる。
フォーチュンさんの設定の詰めの甘さ、あまりにもさらっとした写真の出てき方も相まって、うっかりスルーしそうだった「中田花奈本人が写ってる」という事実をかずみんは見逃さなかった。
そうした”気付き”の的確さ、見逃さないというある種のめざとさは、どう考えても天然の「変な人」が持つスキルではない。近いものを挙げるならば、設楽さんが持っているそれだ。
そうしたスキル、技術の部分が垣間見える場面も多々ある。次はそれを見ていこう。
一二三がきちゃう
これまた『令和の運勢を占え! G-1グランプリ』での一場面。占い結果が芳しくなかった梅澤美波ちゃんの運気アップのため、得意の姓名判断を用意していた。
(そういえば、真夏さんの占い結果「金運注意」って後のクレカ不正利用で見事に的中してましたね)
これ、要はその前に出ていた「鈴木一二三」への天丼であるわけだが、その出し方が非常に秀逸なのだ。
『梅澤』の部分の運気が悪いから変えよう、と提案するも(実際、天格『梅澤』は凶、他はいずれも吉であった)、設楽さんに「梅、が浸透してきてますから(変えない方がいいのでは?)」と制止され、じゃあ下変えます?、と名前の候補を出そうとする。
まずこの流れがあの場で偶発的に起きたものであり、「梅澤一二三」を出す機会がないまま終わっていたことも有り得た。そうでありながら、きちんと名前の候補も用意していた辺りが実に周到である(自ら「名前の候補もあります」と言う可能性はあったが)。
そして、出そうとしながらも「上が悪いからな~」とこぼし、あくまで運気の上がる名前にしてあげたいだけ、というスタンスをフるのも忘れない。
そして「あと梅澤残しちゃうと」からの「一二三がきちゃう」でドン。
「梅澤一二三」を出すまでの流れとフリ、それが流れるように綺麗なので、「一二三」を出した瞬間のドンがより強くなる。
かつこのシーン、「一二三がきちゃう」の瞬間のめくりのタイミングも完璧。映像を確認できる人は是非もう一度観ていただきたい。
またこの回は、鈴木、秋元の段で既に姓名判断の出番があり、この時点でスケブの登場は三度目であった(更に言うなら、姓名判断ネタ自体がこれまでに何度も行われていた)。スケブの準備の都合、鈴木、秋元、梅澤の順で展開されることは彼女にはあらかじめ知らされていたのだろう。
ということは、三度目ともなると単に変な名前を出すだけではインパクトが弱い、物足りないという判断があったかもしれない。その上で「一二三」の天丼を用意していた可能性がある。
そうであるなら彼女は、行われるであろう全体の流れを読み、それぞれの”威力”を想定し、そしてその物足りない部分をクリアする策を準備していたことになる。それを見事実行し大ウケしていたことも含め、全部が自覚的なものなら、彼女はとんでもない手腕の持ち主である。
良いオバケです!
『乃木坂46 真夏の恐怖体験2019』でのサブトンロケで登場したお化けセンサーをスタジオで日村さんがいじった際の一言。色によってお化けの性質がわかるというシロモノだが、この時は青く光った。
これは単純に、日村さんをさらっとオバケ呼ばわりしていることが面白い、というのが一つ。HK3の一角でもある彼女は、当然のように日村イジリを行うのだ。
かつ、それを「良かったですね!」的な清々しい表情で言っている辺りが上手い。
「日村さんの周りに良いお化けがいる」という考え方はハナからせず、ダイレクトに日村イジリしているということもそれに拍車を掛けている。
かずみんは自身のその”イイヤツ”イメージを隠れ蓑として巧みに活用し、言い方や態度で薄めつつも結局は容赦ない一言、という一捻りある切れ味で毒舌(になるかならないかの絶妙な塩梅)を繰り出す。
ここまで挙げたいくつかもそうだし、前おきで軽く触れた「わざとじゃないんでしょ!?」だって「真夏はわざとやりかねない」という認識があるからこそ出てくる言葉だ。
そして、この「良いオバケです!」もそうだが、そうした日村イジリの場面も多く、次はそれを見てみよう。みんな大好きなアレである。
せーの、バカ!
もはや説明不要な気もするが聞いてほしい。『ファンが出題! 番組名場面クイズ大会』での「騙されている和田は日村を何と呼んだ?」というクイズへの回答である。
もちろんこの場面の破壊力は、ここまで出た他のメンバーからの残酷な回答の数々があってこそのものだ。
「ただいるだけ」だの、「他の人でもできる」だの、「いなくても成り立つ」だの、「太ってるだけ(※かずみんの回答)」だの、「立場弱そう」だの、「空気読めない時ある」だの、散々言ってからのこれだ。
もちろんみんな日村さんに対して悪意があるわけではなく(?)、いかんせん負けず嫌いが多いためにクイズにも前のめりで、ガンガンに当てにいってる故だ。「まあやが言った言葉」という題目を言い訳に、みんな遠慮がないだけだ。
注目は、かずみんが「バカ」というワードを出したタイミング。よく見ていくと、このストレートすぎるワードが一番効くタイミングに放たれている。
上の流れが続いてから、設楽さんから「(正解は)ちょっとボケてる○○」というヒントを与えられると、「ちょっとボケてるおじいちゃん」「ちょっとボケてるぽっちゃりデブ」という回答が出る。
そこに更に「2文字です」とヒントが重ねられたことで「ブタ」「クマ」という回答が並び、回答のワードがダイエットされてきたところを狙いすまして、「せーの、バカ!」。
つまり、当初はずっしりダメージを与える言い回しが続いていたところ、徐々にシンプルな悪口になり、さらに文字数が削られてきて、よりワードの威力が鋭くなってきたタイミングで、身も蓋もない「バカ!」を繰り出したのだ。
(また上記の通り、ちゃっかりかずみん自身が最初に直接的なワードを投入している)
加えて、「せーの」によって言い方に勢いを付け、かつ「回答者3人の総意である」というニュアンスを足して”ワルさ”を強調し(ついでに自分の責任を軽減してる)、「バカ!」の威力を増させている。
ここまで言おうものなら、日村さん渾身の「うるせえ!」も出てくるというもの。全ての流れが「せーの、バカ!」のためにあったかのように、鮮やかに繋がっている。
この鮮やかな展開は、それこそこの場面を視聴した人にとっては、そもそも説明不要だろう。
しかしこの展開を完成させるにあたり、誘導具合といい、タイミングの見極めといい、随所に彼女の手腕が光った。だから解説せずにいれなかった次第である。
そしてその手腕は、繰り出すワードにも現れる。最後にそれを見よう。
親戚の前で披露するんだもんね
これは2019年内の『乃木坂工事中』でも序盤の企画『4期生 売り込みショー!』にて、ゆんちゃんこと柴田柚菜ちゃんを紹介した際に出たコメント。
柚菜ちゃんが、胸の高さから足元のペットボトルに割り箸を落として入れる、という芸を披露し、残念ながら失敗×2した際のフォローとして言われたものだ。
これまた二重に楽しめる奥が深いコメントである。
4期生の『乃木坂工事中』初登場という後にも先にもない機会、ここでその4期生メンバーをいかにアピールするか、どんな子であるかをいかに視聴者に伝えるか、それによって今後の活動も左右される。と、意気込んでいてもおかしくない場だ。
そんな重要な場で披露したこの芸は「あくまで親戚の前で披露するためのものです」「この場はそのためのリハです」と言ってしまってるのがこのコメント。
「だから失敗を気にしなくていいよ!」というフォローのように言っているが、結果的に『乃木坂工事中』の場をいい感じに軽視している。
その”軽視”は、いつぞやのMステ想定の時に背筋を正したメンバー達に設楽さんが「乃木坂工事中ナメちゃってるじゃん」とツッコんでいたアレを思い起こさせる。
そのための踏み台的な言い草をさらっと行うところは、これまでにも見られた彼女の”ワルさ”のラインにあるものでもある。
しかしこのコメントの面白さは、そんな軽視がうっすら見えること以上に、単純に「表現が的確である」というところにある。
なにせ、そもそもペットボトルに割り箸を落とすという芸が、特技としてテレビで披露するにはなんともチープなものだ(芸そのものではなく「本番に強い」部分を見せるためのものではあるが)。
チープというか、その芸としてのレベル感に対し「親戚に見せる」という表現が絶妙にマッチしている。
その前後で披露された新体操は、アイドルとしても求められるスキルを見せるものとしても素晴らしいものだった。それこそ、テレビで披露するに値するものと言えるだろう。
そこからの落差も相まって、実に緩い芸である。
更に失敗した際の罰ゲームが、顔面クリームとか電気とかテレビらしいものならまだしも、先輩が嫌いな食べ物を食べる、しかも自ら箸で運んでムシャムシャ食べるというシステムが、またいい感じにお手製感のあるアットホームな罰である。
それらを含めた「親戚の前で披露する」という表現、さながら例えツッコミである。
その表現の絶妙にいいところを突いた的確さ、それは記憶に新しいM-1グランプリ2019で見られたミルクボーイの漫才にも通ずる。彼らの得た称号を鑑みれば、彼女の能力がいかに長けているかがわかると言うものだ。
まとめ
ついミルクボーイに繋げてしまったところで以上。『VTR QUEEN決定戦』での、ずん飯尾さんとのロケにも触れようかとも思ったけど、あれはここまで書いたのとはまた違ったクレイジーさによるものなので、今回は取りやめた。
逆に、あれのクレイジーさを見るに、ここまで書いたことを本当に計算ではなく自然にやっている可能性が捨て切れないのだ。それこそ、『運動オンチNO.1決定戦』で見せた妙な動きは「よーし面白い動きをして笑いを取ろう」と自覚的に出来るような動きではない。
彼女は、『朝まで乃木坂人狼』『駆け引き女王バトル』で見せた読みやブラフの上手さからしても天才の面を現わしているが、その一方で別の場面ではド変人であるさまを見せつけてくるのだ。
故にわからない。高山一実は変な人なのか天才なのか、結局わからない。