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『さゆりんご募集中』/乃木坂46の歌詞について考える
みなさんご存じ、さゆりんご軍団。さゆりんごこと松村沙友理を軍団長に、2期生の伊藤かりん、寺田蘭世、佐々木琴子によって結成、最近はかりんの卒業に伴って中田花奈が研究生からラスボスに昇格。そしてかりんが卒業しているにも関わらず、ありがたいことに結局5人でのワンマンライブ開催を目指して「#さゆりんご計画中」と称した活動にいそしんでいらっしゃいます。
そんなさゆりんご軍団は公式には2曲、彼女らのオリジナルソングがありまして(音源化していないもの、既存曲の替え歌を含めるとその数は膨大)。
その楽曲のうち一つ、乃木坂46 4thアルバム『今が思い出になるまで』収録の『さゆりんご募集中』がすごく好きなんです。近年のアニソン的な凝ったアレンジやらコード進行やらでとことん作りこまれた、非常に”っぽい曲”としてとてもグッとくる作品で、それだけでいくらでも語れるくらいです。「『白米様』のOP曲感と『さゆりんご募集中』のED曲感」みたいな感じで。
しかし今回曲の部分に関しては置いておき。それ以上に、純粋に歌詞が良いなと最近思うわけです。それはもう、歌詞を見ながら聴いてたら涙が出てくるほどに。一見シンプルな歌詞なんですが、向き合ってみると非常に刺さる。
そんな『さゆりんご募集中』の歌詞、紐解いてみるとそこには松村軍団長がアイドルとして、また「さゆりんご軍団」という集団において目指しているもの……のようなものが見えてくる気がする。そんな話を今回はしたい。
みんな一緒に歌いましょう
この楽曲のテーマは、端的に言えば「みんな集まれ、楽しくやろう」である。全くひねることもせず、極限までそぎ落とした形で「このキャラクター達が揃っていれば楽しいよ」といったような、まさに夕方アニメのテーマソング感ある歌詞になっている………一見。
まずは1サビを見てみよう。
Wanted! さゆりんご募集中
しあわせになりたきゃここにおいでよ
さゆりんご 集まって
明るけりゃ誰でも良いんだ
みんな(みんな)一緒に歌いましょう
そして踊りましょう
ハイ
「みんな集まれ、楽しくやろう」という表現がいかに的確かわかるのではないかと思う。〈ここにおいでよ〉〈誰でもいいんだ〉〈一緒に歌いましょう〉、実に緩くてシンプルな言葉が並んでいる。乃木坂楽曲にはそう見られない「さゆりんご」という固有名詞を入れ込むパターンも、往年のアニソンを思わせる。個人的には『おジャ魔女カーニバル』『ケロッ!とマーチ』『Cagayake!GIRLS』辺りがパッと思い浮かんだが、ともかく、”それっぽさ”が非常に強い。
またその手前、Bメロを見ても、深い意味や場面転換があるでもなく、サビに向けてどんどん脱力していく様を描いている。
さあ切り替えて頭の中を空っぽに
力を抜いて行こうぜ
では、この楽曲はただ単に”それっぽさ”だけを纏った楽曲なのだろうか?
「さゆりんご」という固有名詞を使いたいだけのシンプルな楽曲なのだろうか?
いや、違う。この曲こそ「さゆりんご軍団のなんたるか」が詰まった、非常に意味のある楽曲だ。そこには松村軍団長のアイドルとしての姿勢のようなものすら垣間見える。真の意味での「彼女たちのテーマソング」と言える、大切な楽曲なのだ。
その答えを探る重要なヒントは、Aメロの歌詞から見い出せる。
大人になればいろいろあるけど
大人になればいろいろあるけど
嫌なこと忘れてしまおう
生きてくことに気を遣っていたら
ストレスが溜まってしまうよ
こちらは1番のAメロ。合わせて2Aメロも並べてみよう。
恋も仕事も人間関係
何もかもが上手くいくわけない
この一連だ。ここに『さゆりんご募集中』という楽曲のキモが詰まっている。その”キモ”とはどういうことか? それは「みんな集まれ、楽しくやろう」の「みんな」が一体誰のことを指しているか、ということだ。
以下、この両Aメロで現れたキーワードを拾ってみよう。
大人
嫌なこと
生きてく
気を遣って
ストレス
恋
仕事
人間関係
実にウッとなる語群だ。現代社会を生きる人々を蝕む「嫌なこと」が揃っている。目を向け続けなくてはいけないことくらいわかっているけど、それでもどうしても、目を背けたくなってしまう。
しかし、この曲はそんな人々に、さゆりんご軍団は『さゆりんご募集中』を通して〈みんな一緒に歌いましょう/そして踊りましょう〉と歌っているのだ。上記のようなことで頭を悩ませている疲れた人達に〈さあ切り替えて〉〈力を抜いて〉と声を掛けてくれているのだ。
つまり、この曲はただ単に「楽しくやろう」と言っている頭空っぽな曲ではない。追い詰められがちな社会人達を丸ごと救おうという、愛に満ちた楽曲だ。
その愛は2番のBメロに、より切実に現れている。辛いことを一瞬だけでも忘れさせよう、としてくれていることが汲み取れる。
もう適当に難しいこと抜きにして
バカなふりしていこうぜ
「バカになれ」ではなく、〈バカなふりして〉。本当は色々考えなくちゃいけないことがあるのはわかってるけど、今だけはバカなふりして、と声を掛けてくれている。
大サビでは、その救済をハッキリと言葉にしている。
みんな(みんな)一緒に歌いましょう
辛い事なんか全部全部忘れて
辛いことは、この歌を歌っている間だけは忘れて、という救済。身をゆだねることへの赦し。
だからこそ、一見「さゆりんご軍団の新団員を探してます」と読み取れる歌詞やタイトルなようで、その間口は際限なく広く開けてくれている。
さゆりんご募集中
しあわせになりたきゃここにおいでよ
さゆりんご 集まって
明るけりゃ誰でも良いんだ
さゆりんご 好きならば
条件は何もないんだ
合格(合格)一緒に盛り上がろう
二つ返事で〈合格〉と、〈条件は何もない〉と言ってくれている。〈明るけりゃ誰でも良いんだ〉というフレーズだって、「暗い奴はダメだ」ということではなく〈バカなふりしていこうぜ〉と同じ意味の言葉。
このような、誰でも受け入れてくれる懐の深さをもさゆりんご軍団は持ち合わせている。
いや、「受け入れる」という懐の深さ、なんて表現では足りないかもしれない。これは「全部抱きしめる」という愛の深さだ。それがこの楽曲には現れている。
今すぐ始める働き方改革
思えば、上記のような「疲れた人々」を救おうというさゆりんご軍団の姿勢は他でも見られていた。この曲の作成に当たって康が作った一過性のテーマではないのだ。
それは、同じくさゆりんご軍団の楽曲にある。
音源化されていない楽曲『働き方改革』。ライブの開演前映像や特典DVDでのみ披露された、幻のオリジナルソングである。順序的には、こちらの方が『さゆりんご募集中』よりも先に作られた、『白米様』に続く”2曲目”と言える。
タイトルからも既に意味を読み取れるが、歌詞をさっそく見ていこう。
(※以下に載せる歌詞は『しかちゃんの動画』に含まれていたリハーサル動画から聞き取ったものなので、細部が不正確な場合があります)
がんばれ 負けるな
たまにはサボるが勝ちでいいんじゃない?
がんばれ 負けるな
仕事するだけがすべてじゃない
干物みたいになる前に
今すぐ始める働き方改革
これはサビの歌詞。『さゆりんご募集中』以上に、直接的なメッセージとなっていることがわかるかと思う。
Aメロからサビまでの歌詞も、朝起きてバタバタとしている様、憂鬱な気持ちで家を出ようとする様、満員電車に揺られる様、ひとり外でランチを食べる様など、より具体的に”社会人”な描写が続いている。
朝のニュース気持ち憂鬱
赤のラッキーカラーで心の強化
ひとりぼっちのランチも
公園の緑を見て癒される
今日は何時に終わるかな
(週5の9時-17時どこいった)
定時に帰れず、有給も取れず、帰宅は終電、明日も朝からまた会社、という憂鬱な日々を過ごす人に贈る〈がんばれ 負けるな〉という言葉。
もう、あまりにも真っ直ぐ過ぎて、あまりにも刺さる。これを書いているちょうど今も涙が出ているくらいに刺さる。そんなに追い詰められてはいないつもりだったのに、それでも刺さる。
応援されることが、励まされることが、こんなに嬉しいんだと改めて思うほどにストレートなメッセージだ。
でも同時に〈サボるが勝ちでいいんじゃない?〉という、逃げる事への赦しの言葉もかける。その事がまた、たまらなく嬉しい。
特に、この曲の作詞をしたのは康ではなく松村軍団長である。
つまり、このメッセージは明確に松村軍団長が胸に抱くメッセージだ。彼女が、曲を通して、アイドル活動を通して届けたい言葉がこれなのだ。そして彼女が言葉を届けようと目を向けている相手が、上に書いたような人たちであるのだ。
指摘したい点が、『働き方改革』の方が『さゆりんご募集中』よりも先に作られた楽曲であるということだ。つまり『さゆりんご募集中』の歌詞にあるメッセージも彼女自身が書いた『働き方改革』を基に取り込まれたものと考えられる。
歌で人の気持ちを明るく
そんな言葉を楽曲の歌詞に採用する(させる)軍団長、いかにこういった人たちに目が向いているかがわかる。加えて、直接言葉で発信するのではなく、楽曲を通して、という手段を用いている辺りに”アイドルとして”こういったことをしなければ、という意識を持っているようにも思える。
「さゆりんご軍団」という私達の楽しい活動を見て、楽しい楽曲を聴いて、少しでも辛いことを忘れさせることが出来れば、という想いがあるように思えてくるのだ。
そんな「アイドルとしての意識」で思い出されるのが、元Berryz工房・ももちこと嗣永桃子の言葉。彼女がデビュー当時、ある雑誌でのインタビューで答えた言葉だ。
歌で人の気持ちを明るくできるようになりたい。
きっと人生にくじけてる人が、いっぱいいると思うから。
ネットなどで度々話題になっているので、知っている方もいることだろう。実に素敵な考え方であり、アイドルとしての姿勢としてこれほどのものはないと思う。
もちろん、多かれ少なかれアイドルの方々は共通して持っているだろうが、『働き方改革』『さゆりんご募集中』の歌詞から、松村軍団長は明確にこの考え方を抱いているように思えてならない。
そしてそれをこんなにもストレートに伝えてくれている。「それが私のすべきことだから」という想いを持って。そんな風に感じてならないのだ。それを踏まえると、なおさらこの2曲を聴くと涙が止まらないのだ。「気づいてくれている人がいる。」そう実感してたまらない。
アイドル・松村沙友理、そして彼女を慕うメンバーが集まった「さゆりんご軍団」、そんな彼女達の姿勢が現れた楽曲が『さゆりんご募集中』であるのだ。
#さゆりんご計画中
そういえば、いつだったか、軍団の活動を通しての目標に「世界平和」を掲げていたような気がする(うろ覚え)。
単なるその場のボケなようで、いやいや、彼女達の歌を聴くと、本当に実現してしまいそうな気がしない?
そんな世界平和を実現すべく、まず目指すはワンマンライブだ!
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