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STEAM教育と将来の仕事について【前編】開発者対談レポートvol.4

2021年10月29日に開催された、しくみデザインのオンラインセミナー「未来の可能性を拡げるSTEAM教育―「できた!」原体験は創造の原動力―」。

今回は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、toio」の開発者、田中章愛(たなか・あきちか)さんをお迎えして、「できた!」という成功体験の重要性と、STEAM教育と将来の仕事について、お話を伺いました。

聞き手は、創造的プログラミングアプリスプリンギン」の開発者である株式会社しくみデザイン代表の中村俊介



vol.4の今回は、STEAM教育と将来の仕事についてお送りします。


動画本編はこちらをご覧ください。


STEAM教育と将来の仕事について

人を驚かせたいー色々な手段を組み合わせ、俯瞰して、目的のために一番良い方法を見つけ出す

中村:STEAM教育ってどう思いますか?

田中:全体を俯瞰して、もしくはそれを自然に身に付けた上で、いろんなことをやっていこうということだと思っています。

そういう意味では、新しい言葉がついていますが、もともと「ものづくり」のように、自然と日本でもいろいろ人が大事だと言ってきたものに、こういう名前がついたのかなと思っています。

僕も、中村さんほどでは全くないですが、メディアアートも大好きで、学生時代にメディアアーティストの友達と一緒に作品を作りました。

自分はプログラミングとかものづくりをして、アーティストの友達のアイデアを実現するサポートをしていた。その中で感じたのは、たくさんの作れるボキャブラリーというか、つくれる手段を見つけて、こんなのつくりたいんだっていう、すごい突飛なアイデアでも何とか実現してみようと。それで人を驚かそうという気持ち。

そういう気持ちになることによって、単純にエンジニアリングだけをやっていても足りないし、科学だけやっていても分からないし、人を驚かそうとか楽しませようとか、アートの要素を学んだり、知ったり、触れたりとか。その中で、人を驚かせたいし、こういう体験を作りたいんだけど、手段がないから、そのためにはテクノロジーが必要だったり。

そういう人の気持ち、どういうような驚き、体験、便利、嬉しいという気持ちにするか、そういうところを理解した上で、いろんな手段を組み合わせたり、全体を俯瞰して、一番いい方法を考えるには、このSTEAMの要素全部が必要だと。

結局何をするのか。手段はこのSTEAMという言葉の中に全部入っているとは思うけど、目的として何をするのかは、結局人のためとか、自分のためとか、いろんな手段を見つけた上で、何のためにこれをやってるんだろうって、問い続けることが大事なのかなとは思います。今、僕自身も、自分自身に問いながらやっている。

僕は、実は会社に入って長い間、プログラムよりはメカ設計をやっていて、それでtoioも作りました。プログラミングだけでなく、ハードウェアがないとソフトウェアは動かないし、ハードウェア、メカ、電気とかの持っている力を全部引き出すには良いプログラムを書ける必要があるし、ハードウェアが全然たいしたことなかったら、プログラムをいくら書いても全然だめだし。デザインが人のためになってないと使いにくいし…

最後は、やっぱり作りたいのはこういう体験だよというのを見つけて、そこに自分の持てるスキル、技術を入れ込む。その体験を通して、こういう要素は全部大事だなと思います。

中村:「将来の仕事」というテーマですが、今の子供たちに対してSTEAMをちゃんと学ぶことが将来の仕事につながります、みたいな感じはしますか?

田中:そうですね、自分たちが小さかった頃に、今の仕事があったかというとそんなことない気もしていて。

その上で、今のうちに色んな方向の体験とかを、全体的に俯瞰していって、それぞれの要素のつながりを知っていくことがすごく大事で。その分柔軟性が持てるというか、やりたいことが見つかったときに自分の使えるスキルがたくさん増えていると、役に立つと思います。

中村:そうですよね。STEAMだけやれってことじゃないですもんね。先ほど田中さんが言われたみたいに、結局昔から、ものづくりにしろ何にしろ、大事だっていうふうに言われていたことを、改めて大事って言っておきましょうねと。

田中さんは、今のお仕事に就こうって思ったタイミングはいつぐらいだったんですか?

田中:そうですね。小学生の頃、将来の夢は「発明家」とか書いて。エジソンみたいになりたいって言ったりもしました。

やっぱり自分の作ったもので人に驚いてもらいたいし、喜んでもらいたいという気持ちはずっとあったので。小学校の頃からおぼろげにはそういう気持ちがあったと思います。

今の会社に入って、研究所に入り、ソニー・インタラクティブエンタテインメントで働いて、ゲームを作ってる皆さんと一緒にこのロボットを作りました。そういったきっかけは出会いですね。

大学生のとき、ロボコンに出たときに会った人が、人型ロボコンで何かものすごいロボットを作って、優勝したりするような方だったんですが、終わった後にご飯食べに行こうよと誘われて、実はソニーの社員だったっていう。それで、一緒に仕事しようよと言ってくれたとか。

あとは大学の先輩で、デザインとモノづくりの融合したプロジェクトみたいな、メディアアートとか、デザインの展示会に出している先輩もいて。同じくソニーの社員の方だった。普段はオーディオをやっていた方なんですけど。

実際に自分が出会った人のイメージが、自分のやりたいこととすごく一致していた。

何かチャレンジしようとか、ちょっと一歩踏み出そうとすると、そういう先輩になるようなロールモデルというか、中村さんも当然そのロールモデルの一人ですけど、そういう人に出会えると、より具体的な仕事のイメージができてくるので、何か作ってアウトプットして、見せて、そこに近い人に出会うというサイクルが、すごく大事なんだなと思いました。

中村:ソニーに入りたいっていうよりは、いろいろやってたら、たまたま会った人がソニーの人で、面白そうみたいな流れで入った感じですね。

大学生の時とか、高専とかの時って、どこの会社に行って、何の仕事をしたらどういうことができるかとかまったく想像つかないですもんね。就職先を決めましょうって言われたら、ホント困るなっていう気はあります。

僕はそういうルートから、最初からバリバリ外れちゃったんで、ちゃんとした就職活動したことないんです。やっぱり難しいなって思うんですよね。

ここの会社に行きたいとか、こういうふうなことがしたいっていうのを、今あるやつから選んで、今ここでこれがしたいと決めてしまうと、将来の仕事というテーマに繋がりますけど、なくなっちゃうかもしれないですもんね、その仕事。

仕事で選んじゃった会社はもちろん、会社で選んだりとかしてしまうと。ソニーがなくなることはないかもしれないですけど、自分がやりたかったソニーの仕事がなくなる可能性はあるかもしれない。そう考えると、将来何になりたいのっていうのを、職業の細かいこととか、会社名とか、何か仕事の種類とかで考えさせちゃうとダメだなって思っていて。

じゃあどうしたらいいのというと、こういうことが好きだからそういうのを続けたい。例えば田中さんのお話だと、何か作って、人を驚かせたりするのが好きっていうところがあるので、「そういうものを実現するためにはどんな仕事があるのかな」っていう、そういう逆算のし方で仕事が決まってきているんだと思うんです。

「この会社のこの仕事をしたい」っていうふうになっちゃうと、外れたときの落胆もきっとあるだろうし、そもそも自分がやりたかったことなんだっけっていうところが、だんだんわかんなくなっていってしまう可能性もある。

田中さんのお話を伺っていて、小さい頃から、物を作って人を驚かせるのが好きだったというのが、ずっと今も続いてる

小学校、中学校、高校ぐらいのときに、将来について考える時がどうしてもあるじゃないですか。そういう時に、ひとつのロールモデル的に、田中さんというtoioを作った人って、今でも面白いものを作って人を驚かせたいんですよねって言ってる。ずっと言っているけど、それがちゃんとお仕事にもなってるし、それによって世の中にもっと熱狂してくれるような人を生み出してるよと、言えることがすごい大事だなと思いました。

先日のセミナーで、中島さち子さんが言われていたのが、「STEAM教育って探求すること」なんだよね、みたいなことで。

それで、なるほどなと思ったのが、サイエンスが大事、テクノロジーが大事とかそういうことではなくて、そういういろんな、Curiosity、好奇心とかそういうのを見つける対象としてこういうものがありますと。

SとTとEとAとMがあって、そういうのをいろいろ楽しんでいくうちに、もっと深く知りたくなる場、それがSTEAMという塊なんだよと、なるほどって腑に落ちたところもあって。

だから僕自身は、STEAMっていうものを意識して何かをしてたわけではないですが、結果的に全部組み合わせないと自分が欲しいなって思ったものを作れないというのが、ぐるっと回って気づいたところなんですよね。

だからさっきの田中さんのお話も一緒で、デザインやる人がいて、テクノロジーできる人がいて、これとこれを組み合わせたらこんな面白いことができると。

でも、先に勉強しなさい、「理科大事」「算数大事」ってなっちゃうと、将来役に立つかもと言われてやるのは、やっぱり、楽しさとしてはどうかなと思ってしまう。

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好きなことを続けた先が今の仕事に繋がっている、そして、そのためには言葉として意識していなくてもSTEAMの要素が重要だったようですね。

次回は弊社代表の中村の経験や自身が考える「仕事」についてお話していきます。

次回の更新もお楽しみに!