見出し画像

No.2 特発性過眠症患者は健常者よりも夜型となる傾向がある

今回の論文はこちら:

要点は、記事のタイトル通り、「特発性過眠症患者では、健常者よりも夜型となる傾向がある」ということです。

はじめに

特発性過眠症を持つ人では、中核症状である日中の眠気以外にも、実にしばしば「朝に起きにくい」と訴える人がいます。なお、同様に日中に強い眠気がでる病気ナルコレプシーの場合には、通常は朝に起きにくくて困るという症状は出ません。

この特発性過眠症における朝の起きづらさ、睡眠障害国際分類第3版では「睡眠酩酊」として記載されているものではありますが、その一因として「夜型傾向も併発しているので朝に弱い」からと考えると、納得の行く部分が出てきます。最近では睡眠・覚醒相後退障害と特発性過眠症の人で同じ薬を朝の起きづらさの治療に用いることもあります。

特発性過眠症の人には夜型傾向が出やすい、この興味深い考え方がされている根拠としてこの論文を含む研究があるわけで、今回読んでみることにしました。

論文の紹介

さて、論文に話を戻すと、対象者は、日中の強い眠気を調べるためにフランスの病院を受診して睡眠検査を受け、特発性過眠症と診断を受けた75名の患者さん(平均年齢34歳)です。比較のために、30名の健常者も研究に参加しました。

彼らは一夜目は23時から6時半まで寝て、翌日に反復睡眠潜時検査(MSLT)を受け、二日目の夕方からは最長20時間寝る機会を与えられました。
 朝型か夜型かの評価には、Horne-Ostbergによる朝型夜型質問紙を用いました
そして、特発性過眠症の患者さんのグループでは、朝型夜型質問紙の点数が平均で47.8点と、健常群の平均点55.2点よりも有意に低かったという結果でした。ちなみにこのテスト、42点から58点まではクロノタイプとして「中間型」という判定になるので、特発性過眠症がある人が明らかに夜型を呈しているとはこの結果からは言えません。

なお、特発性過眠症の中でも睡眠時間が長時間となる人とそうでもない人と分かれるのですが、この研究では、長時間睡眠となる特発性過眠症の人では朝型夜型質問紙の点数が44.0点、長時間睡眠のない特発性過眠症の人では52.7点という結果でした。長時間睡眠を要する特発性過眠症の人の方が、より夜型になる傾向があるわけですね。

感想

このテーマで検索した時に「多くの引用がある論文」として引っ掛かってきたので最初に読んだのですが、2009年に書かれたこの分野ではおそらく先駆的な論文であるためか、物足りなさは否めませんでした。特発性過眠症の人をたくさん集めて、長時間睡眠をとるタイプとそうでないタイプを比較している部分は今回のテーマを抜きにしても面白かったのですが、クロノタイプを評価するために朝型夜型質問紙だけでは惜しい感じがあります。
同じようなテーマの別の論文も探してみたいと思いました。

参考文献

  1.  Vernet C, Arnulf I. Idiopathic Hypersomnia with and without Long Sleep Time: A Controlled Series of 75 Patients. Sleep. 2009 Jun;32(6):753–9.

いいなと思ったら応援しよう!