No.11 睡眠時無呼吸症候群は認知機能を低下させる
睡眠時無呼吸症候群があるとさまざまな他の病気につながりやすいわけですが、認知症のリスクにも関連すると言われています。
この問題に関するシステマティックレビューとメタ解析を行っている論文を今日は見てみることにします。
"Association of Sleep-Disordered Breathing With Cognitive Function and Risk of Cognitive Impairment"
https://dx.doi.org/10.1001/jamaneurol.2017.2180
方法
このシステマティックレビューに含めた論文の基準としては、最低200人以上の参加者がおり、参加者の平均年齢が40歳以上の研究ということです。
睡眠時無呼吸の有無については、無呼吸低呼吸指数のデータを扱っている、もしくは臨床的に睡眠時無呼吸と診断されている研究を入れています。つまり、終夜睡眠ポリグラフィによって評価されていることが前提ですね。
認知機能低下の有無については、妥当性が確認されている(つまりは信頼できる)テストによって確認された研究を含めています。
14の論文がこの基準にあてはまり、そのうち6つが前向き研究でした。そのうち11がアメリカ発で、他はフランス、台湾、ドイツ、ノルウェイから出ています。
結果
6つの前向き研究の結果を合わせて解析したところ、睡眠時無呼吸のある人はない人と比べて26%、認知機能の低下を発症するリスクが高いという結果でした。
また、7つの横断研究の結果をあわせて解析すると、睡眠時無呼吸のある人は、ない人と比べて、認知機能の中でも実行機能が低下しているという結果でした。
感想
夜寝ている間にたびたび呼吸が止まって睡眠が妨害され、同時にたびたび酸欠状態になる…これを毎晩繰り返すことが脳の働きに良くない影響を及ぼすというのは直観的に納得できることであり、睡眠時無呼吸があると数年後の認知症リスクが増えるという研究報告自体に物凄い意外性はないわけですが、証拠としてのデータがそろっていないとどんなにもっともらしい話でも確かとは言えないわけで、このような論文の存在意義は大きいです。
睡眠時無呼吸のある人に対してCPAP治療を行うことで認知症の進行を遅らせられるかもしれないという報告もあるようですし、認知症リスクのある人に睡眠時無呼吸を見つけたら早めに治療を行うのがおすすめということになるかと思います。
参考文献
1.Leng Y, McEvoy CT, Allen IE, Yaffe K. Association of Sleep-Disordered Breathing With Cognitive Function and Risk of Cognitive Impairment: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Neurol. 2017 Oct 1;74(10):1237.