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No.14 甲状腺機能異常は不眠症や睡眠時無呼吸、RLSと関連している

眠気や不眠といった問題で受診した患者さんにおいて測定することの多い甲状腺ホルモン。実際たまに異常のある人を発見するし、稀には甲状腺の治療だけで睡眠関連の症状が良くなったなんて人もいるわけですが…甲状腺機能と睡眠の関連についてあまり系統だって調べたことはないなとふと気が付きました。

そういうわけで、今日はこの総説を読んでみます。

"Thyroid Dysfunction and Sleep Disorders"
https://doi.org/10.3389/fendo.2021.725829

以下、読みながらまとめた箇条書きです。

不眠症と甲状腺機能

  • 甲状腺機能亢進症は不眠の原因としてよく知られている。

  • バセドウ病患者の66.4%が入眠困難を訴えたとする報告がある。

  • 甲状腺ホルモンレベルの上昇は、入眠潜時の延長睡眠維持の困難日中の過剰な眠気と関連していることが示唆される。

  • 甲状腺機能亢進症は不安や抑うつをも増悪させる場合があるので、そこから不眠が増悪するおそれもある。

  • 甲状腺機能低下症と不眠の関連は、亢進症の場合ほどはっきりはしないものの、甲状腺機能低下と睡眠の質が低いことが関連しているとする報告もある

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と甲状腺機能

  • 甲状腺機能低下症とOSAが関連していることが疫学研究によって示されている。

  • 睡眠呼吸障害疑いの患者の方がそうでないグループより甲状腺機能低下症の有病率が高い

  • 従来、甲状腺機能低下がOSA発症に寄与しているだろうと言われてきたが、その機序はいまだはっきりとしていない

  • OSAに甲状腺ホルモンの補充を行った場合にOSAが改善するという研究もあれば、そうでないとする研究もなる。

  • 125人のOSA患者と60人の対照群を比較した研究で、OSA患者の10%にはnonthyroidal illness syndrome (TSH正常でT3が低い)が見られ、さらに8%には潜在性甲状腺機能低下症が見られた。これらの異常の多くはCPAP治療開始後に改善した。一方で、対照群には上記の甲状腺異常は全く認められなかった

Restless Legs 症候群(むずむず脚症候群、RLS)と甲状腺機能

  • 甲状腺機能異常はRLSと関連していることがよく知られている。

  • 甲状腺機能亢進がRLSと似た症状を起こしているのではないかという説もある。

  • 甲状腺機能異常とRLSの両方を併せ持つ12人のうち4人が、甲状腺の治療のみでRLS症状が完全に寛解した

  • 甲状腺機能低下症においてもRLSの有病率が上がるという報告もある。

感想

ものすごく意外な情報はなかったので、これまでの自分の知識でそう間違ってなかったのだろうということは確認できました。
強いて言えば、甲状腺機能低下症が閉塞性睡眠時無呼吸を引き起こす…というメカニズムが思っていたほどは確立されていなかったんだなあというあたりが興味深かったです。

もともと論文検索を始めた時点での疑問が、「甲状腺機能異常のある人の何パーセントに日中の眠気が出るの?」だったのですが、その答えにたどりつく前にこの論文を読み始めてしまったので、いずれまたそのテーマで答えを探してみようと思います。

参考文献

  1. Green ME, Bernet V, Cheung J. Thyroid Dysfunction and Sleep Disorders. Front Endocrinol. 2021 Aug 24;12:725829.

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