No.1 睡眠時無呼吸症候群患者の4割は肥満ではない
てなわけで、先の記事でも宣言したように資料を読んでのアウトプットを始めますよ。
記念すべき第1回は、こちらの文献。
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学」(文献1)
どんな研究か
この文献のいいところ、それは、
「日本の閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の4割は肥満ではない」
というデータを示しているところです。
アメリカやヨーロッパと比べると日本における睡眠時無呼吸患者の肥満度は軽めの傾向があるというのはもはや常識と言っていいかと思うのてすが、上記のような表現でパキっと言い切れるデータを出している研究が意外と少ないのです。
さて、ここで紹介される研究で示されているのは、1999年から2009年にかけ
て新潟県内の病院で終夜睡眠ポリグラフィを受けた患者約1万人のデータです。無呼吸低呼吸が1時間あたり5回以上と睡眠時無呼吸症候群が認められた患者のうち、BMIが25未満と肥満ではない人が全体の43%とを占めていたというデータでした。
なお、私の手元にある「月刊糖尿病」の2012年10月号では、佐藤先生による同じデータのさらに詳しい解析が載っています。それによると、無呼吸低呼吸指数が30回/時以上の重症睡眠時無呼吸でも27%の患者さんは肥満ではなかったということです(文献2)。
感想
今回紹介した研究データは、病院を受診して検査を受けた患者さんのみを対象としているので、解析されたデータに偏りがあり一般人口にはそのまま当てはめられない点には注意が必要です。とは言え、病院に行って睡眠やいびきの相談をしようと思い立った人に関しては、その人がたとえ肥満でなくても睡眠時無呼吸の可能性は決して否定できるものではない…とは言えることでしょう。
疫学研究でも同じようなデータが得られたらさらに面白いのにと個人的には思いますが、終夜睡眠ポリグラフィを実施するには相当な手間暇がかかるすめ、日本の大規模疫学研究では実施できているところはなかったはずです。代替として簡易モニターやパルスオキシメーター、フローセンサーを使った疫学研究は多数ありますが、これらは、脳波を計らない分、睡眠時無呼吸検査のゴールドスタンダードと言われる終夜睡眠ポリグラフィとは見ているものが少し違うことが弱点です。
今回、似たような内容のもっと新しいデータとか、はたまた英語の論文とかないかなと思って調べてみたのですが、残念ながら出会えませんでした。もし「こういうのがあるよ」とご存じの方がいたら教えていただけると有難いです。
それではまた。
参考文献
佐藤 誠, II.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学, 日本内科学会雑誌, 2020, 109 巻, 6 号, p. 1059-1065
佐藤 誠, 日本人の肥満と睡眠時無呼吸, 月刊糖尿病, 2012, 4 巻, 11 号, p. 86-92