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No.17 CPAPの残存AHIは、信頼できなくもないが正確ではない

Talking Sleep というPodcast番組を知っていますか? アメリカ睡眠医学会 (American Academy of Sleep Medicine)による公式チャンネルです。
下のリンク先は公式サイトですが、Apple やSpotify, Youtubeなどからも視聴できます。

月に2本ほどのペースで配信されているこのポッドキャストが、睡眠医学の生涯学習として結構おすすめ! 
その時々のテーマについて最先端の先生をゲストに招き、司会の Seema Khosla先生が我々リスナーの代弁者として疑問をぶつけたり話をまとめたりしていくスタイルです。
このKhosla先生が社交的で親切なお姉様(まあ、私の方が年上かもしれませんがそこは置いといて)という雰囲気である上に聴き取りやすい英語を話す方なのが、大変良いです。

ゲストの先生方の話については、私の英語力が足りなかったり、テーマへの興味がもともと薄かったりしたために「よくわからなかった…(しょんぼり)」となる場合も多々あるのですが、一方で「ほほー!」と感銘を受けるような新しい知見を得られることも少なくありません。

ポッドキャストなので、論文を読むよりも動画を見るよりも気軽に学べるところも利点です。洗濯をしながら、化粧をしながら、運転をしながら、聴いています。
 なお、「聴き取りはちょっと」という方には、文字起こしもありますよ(今回の記事も、細かい部分は文字起こしから確認しています)。

1月10日の配信から、CPAPの残存AHIの解釈について学ぶ

というわけで今回は、1月10日配信された”Understanding Residual AHI: What Sleep Doctors Need to Know”から学んだことについて書いておきます。

タイトルにも出ているように、この回のテーマは"residual AHI" (ここでは残存AHIと訳します)です。CPAPを使った際のレポートに表示される、CPAP使用中のAHIのことです。
この残存AHIについて、「ある程度の信用はおけるけれど、タイトレーションPSGの結果から乖離していることもしばしばだったりするので信じ切ることもできない」という感覚を常々持っていたので、これは興味深いテーマだと感じました。

この回のゲスト

この回のゲストは、Dr. Robert Thomas と Dr. Tavi Ioachimescu, Dr. Imran Iftikharです。Thomas先生は、CPAPダウンロードデータから得られる情報や機種ごとの違いについて論文を書いているそうです(どの論文かな?と探したのですが、色々書いてらっしゃるようで絞り切れませんでした)。

Ioachimescu先生と Iftikhar先生は残存AHIについてメタ解析の論文を出したとのことです。多分この論文のことですね↓ 

私の環境だと論文のファイルが入手できなかったので読めてはいませんが…。

番組の内容

さて,先生方が述べていた内容で「へええ」とか「やっぱりねー」と思ったことをメモしておきます。
なお、その分野の研究をしているエキスパートの先生方の意見ではありますが、裏付けとなるデータが少なくともこの ポッドキャスト内では提示されていないことにはご留意ください。

  • 残存AHIは多くの場合、実際のイベントを過小評価している。ただし、どの程度の過小評価なのか、あるいは案外正確なのかについては実際の呼吸波形を見ないとわからない。

  • 例外として残存AHIが過大評価となる場合もある。オピオイド使用中(呼吸がゆっくりとなるのでイベントがあると機械が勘違いする)と著明な覚醒が睡眠に入り混じっている場合(睡眠と覚醒を行き来することによって変動する呼吸がイベントとカウントされやすい)。ただしそれ以外はだいたい過小評価になっている。

  • Q: 残存AHIは信頼できるのか?→ A: 信頼できるのかはわからないが、正確ではないのは確かだ。(ただし)残存AHIが高すぎるなら、実際のAHIも高すぎるだろうとは言える。

  • 睡眠中の呼吸イベントの判定についてAASMのスコアリングルールは変遷してきたが、各大手CPAPメーカーによるアルゴリズムはそうではない。

このあたり、「ああやっぱりね」が大変多くありました。経験上なんとなく感じていたことが、実際に生データを見て確認きた方々による裏付けがあると、心強くなりますね。
まったく信頼していないわけでもないけど正確だという期待はしていない、まさにその通り…。

他にループゲインとか呼吸の不安定性とか アセタゾラミドとかの話もけっこうされていたのですが、私の興味と英語力の限界で、その辺のことは頭に入ってきていません。そのあたりは修行が必要です。

というわけで、このTalking Sleepは、興味のあるところだけつまみ食いするという使い方でも得るもののある、手軽に聴きやすい番組です。
今後も共有したい話を見つけたら、記事にしますね。

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