No.19 ナルコレプシーのある学生・生徒・児童に対する学校での配慮案リスト
ここでの記事のネタにするために調べものをしていたら別の話が面白くみえてきてひとまずテーマを変更する、というのが割とあるあるなのですが本日もそのパターンです。
この分厚いナルコレプシー専門書に書いてあった気のすることを確認するためにパラパラと読んでいたら、「本来探していたものとは違うけど、これはこれでシェアしておきたいな」と思う部分が見つかったので、紹介していく次第です。
記事のタイトル通り、ナルコレプシーのある学生さんが学校生活を送る時に、このような配慮をすれば役に立つかもしれないという例示です。
今回取り扱うのは、この本の第29章 です。
"Succeeding in School and in the Workplace with Narcolepsy",というタイトルで、つまり、ナルコレプシーを抱えている人が学業や仕事をこなしていくために支援者側からできることが書かれています。
アメリカの制度をもとにしている法的部分はほとんど参考になりませんが、病気に対する周囲の理解度に関した問題については共通する部分がありそうてす。
前提として、以下のことをこの章の著者は書いています。
ナルコレプシーという病気の認知度が7割程度と低く、ナルコレプシーの症状が健康全般に深刻な悪影響を及ぼすということを知らない人が半数ほどいうデータがある。
ナルコレプシーと診断された人でも、ひとりひとり症状は違う。適切な診断と治療によって著しく改善する人もいれば、症状や副作用のコントロールが困難な人もいる。昼寝で楽になる人もいればそうでない人もいる。一部の患者においては、認知機能や記憶の問題、ブレインフォグが問題となる。なので、ひとりひとりの状況に合った配慮を行うことか重要である。
ここからが本題です。
ナルコレプシーがある生徒に対する教育現場(小学校から大学院まで)での配慮をどのようにおこなうかについて、具体的なアイデアがこの本の1ページを使ってずらっと並んでいます。
さすがに全部ご紹介すると長過ぎる気がするので、一部を抜粋してご紹介します。
私としては別に「こうしろ」と言うつもりはありません。著者自身も言っているように、あくまで一つのアイデア集です。
ナルコレプシーのある生徒さんはこういう配慮が嬉しい場合もあるのだと考えるきっかけとしていただければと思います。
学校生活における配慮の例
眠気のマネジメント
あらかじめ決めた仮眠時間のために場所を学校が提供する
仮眠が必要な時に保健室に行けるようにする
必要な時にいつでも、新鮮な空気を吸うために教室の外へ出られるようにする
ノートをとる
クラスメートがとったノートを見せてもらうことを許可する
本人もノートをとりつつ、教師が自身のノートのコピーを提供する
書きながら録音できるペンを使う
教室での過ごし方
薬の副作用で気持ちが悪い時に間食をとることを許可する
眠気やそのことによる遅刻に対して理解のあるチューターを配置する
欠席
疲れすぎて教室にたどりつけない時の欠席を一定日数まで許容する
睡眠の問題が原因である場合は遅刻を許容する
宿題
特に年少の子の場合、一日を切り抜けるだけで精一杯の場合があるので宿題については柔軟に対応する
宿題のために余分な時間を与える
クラスのスケジュール(注:大学生など自分で授業を組める人向けと思われます)
薬がよく効いている時間につまらない授業が来るようにする
朝起きることが難しい人は1限目に自習時間が、仮眠が必要な人は3限目に自習時間が来るように組む
通常の授業を代替する
オンラインでの教育プログラム
オンラインのクラスで卒業単位をとる
夏期講習や夏のオンラインクラス
試験
長めの試験時間、試験ごとの休憩、マークシート記入でなく問題文へのマークで良いとする、必要なら別室受験
空調
朝一番のテスト
座席を自然光の差し込む窓際に配置する
テストを立って受ける
一日の試験時間を最大で3時間とする
感想
まとめていて伝わってきたのが、ナルコレプシーの人は疲れやすく、予定外に眠りに落ちてしまうことも多いことから、テストや課題をやり遂げるために時間がかかるのだろうということでした。
今後、学校や試験場での配慮について意見をもとめられた時、何を書くかについて参考になりました。
なお、同じ章の後半に、ナルコレプシーがある労働者に対する配慮のアイデアもリストになっていたので、そちらの方も次の記事にしようと思います。
参考文献
Flygare J. Succeeding in School and in the Workplace with Narcolepsy. In: Goswami M, Thorpy MJ, Pandi-Perumal SR, editors. Narcolepsy: A Clinical Guide [Internet]. Cham: Springer International Publishing; 2016. p. 395–405. Available from: https://doi.org/10.1007/978-3-319-23739-8_29