メタ認知能力が低い新規事業担当者はキケン
社内で新規事業を立ち上げる場合、過去にその企業で新規事業に立ち上げに成功した人をリーダーとしてチームを組むことが手っ取り早いです。
なぜなら、新規事業を立ち上げる際の、その企業特有の軋轢を理解している可能性が高いですし、文章には落としづらい成功しそうな嗅覚というものをつかんでいるからです。
しかし、実際のところ「新規事業の立ち上げに成功した」という人の中の成功の定義がかなり怪しいという点には注意したいところです。
私の経験上ですが、「新規事業の立ち上げに成功した。」という人は少なからず存在するのですが、よくよく話を聞いてみると新規事業ではなく、既存事業の成功(=通常業務の成功)であったり、成功の条件が甘すぎたりする、または勘違いであることがほとんどです。
特にメタ認知能力(自分自身を客観的に評価する力)が低めの方は、かなり自分自身を過大評価する傾向にあります。そして他者からのフィードバックにかなりバイアスがかかっているのです。
例えば、新しく開発した商品をお客さん候補に見せ、フィードバックを得たいとします。その時の会話が以下の通りだったとします。
新規事業担当者「この商品、世界初の完全消臭スプレーなんです!開発にはかなり苦戦しましたが、特許も申請中です!(以下、とうとうと話し続ける)。1本1,000円で販売しています。」
お客さん候補(A社)「そうですか、それはすごいですね!すごい商品です!」
新規事業担当者「買っていただけますか?」
お客さん候補(A社)「そうですね、検討したいと思います。(これだけ熱心に話しているから、気分を害さないようにしておいたほうがよいね、、、)」
新規事業担当者「どれぐらい買ってもらえそうですか?」
お客さん候補(A社)「(あまり少ないと気分を害しそうだし、、)そうですね、これぐらいのレベルでしたら200本くらいは買えたら買いたいですね。」
新規事業担当者「承知しました。また、ご連絡いたします!」
このような状況で新規事業担当者は
「A社さんが200本買ってくれると言っています!このプロジェクトは成功です!早速、製造しましょう!」
などと社内に報告するのです。まさか?とは思われるかもしれませんが、メタ認知能力が不十分である場合、これぐらいに間違った解釈をしてしまいます。特に、人の話を聞かなかったり、こちらからどれだけ説明しても意図が伝わりにくい人はかなり要注意です。
ほかにも、
Xさん「今回のビジネスアイデアAはかなり有望だと思います。他社さんの反応も良いです。ぜひともやるべきです。」
という話が出たため、
私「他社とはどこの会社ですか?」
と聞いたところ、
Xさん「自動車メーカーです!」
私「自動車メーカーとは具体的にどこですか?」
Xさん「具体的にというか、部品メーカーB社さんです!」
私「どっちなんですか?そもそも部品メーカーB社さんは、我々の商品を買ってくれる側ではなく、我々が製品を作るために部品を供給してくれる会社ですよね?」
Xさん「そうですね。先日、B社さんに「私たちは、自動車メーカーに対して、こんな商品を作りたいと考えている」と話したら、B社さんがものすごく食いついてきたんです!」
私「それは「我々がB社さんの部品を買いそうだ。」と思ったから、ものすごく食いついたわけであって「我々の商品が自動車メーカーに売れる。」という話とは全く関係無いですよね?」
Xさん「そこまでは確認はできてないですけど、有望だと感じています!」
このケースは、
①部品メーカーB社が食いついている
②自動車メーカーも食いついている
という2つの話を混同しています。そもそも①の状況から必然的に②が成立することはあり得ないのですが、悪気なく誤解しているケースがあります。
このケースも、まさか?と思われるかもしれませんが実際に起こりうるケースですので注意が必要です。担当者の結論を鵜呑みにせず、必ずその結論を支える事実を確認することは必須です。
ただ、メタ認知能力がかなり高い人でも、多少なりともバイアスは必ずかかりますのでかなり気を付けなくてはなりません。気を付けるには、本当にお客さんはそう思っているのか?演技ではないのか?もし嘘だったらどう対策するか?など、できるかぎり客観的になれるような自己否定質問をするのがよいでしょう。
自分自身の反省も含め、かなり気を付けたい点ですね。