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【感想】「モアナと伝説の海」と「起業家のメタファー」
何のけなしにみた映画だったのですが、物語の骨子に様々な肉付けをすることで多様なテーマの物語が作れてしまいそうな王道の脚本でした。
例えばということで、今回は起業家の物語として、あらすじを書いてみたいと思います(以下はネタバレになります)。
代々受け継がれてきた事業を営む家系に生まれたモアナは、幼少期から次期経営者としての教育を受けていた。しかし、長く続く家訓は伝統を重んじた既存ビジネスの継続を絶対とし、新規事業は固く禁じられており、モアナはその制約に強い不満を抱いていた。彼女は、現在の市場環境での安定に甘んじることなく、新たな価値を創出し、新規市場を開拓することを理想としていた。
モアナの父親はこの考えに反対したが、その背後には、若き日に家訓を破り親友と新規事業に挑戦した末に失敗し、そのときの過労で親友まで失ったという苦い過去があった。モアナは父の苦悩を理解し、一度は家業を継承する道を選ぶが、市場は縮小し、外部環境の悪化から家業は徐々に衰退しつつあった。
そのような状況下で、モアナは生成AIを活用した新たな技術と自身のスキルを組み合わせたビジネスアイデアが、市場を革新する鍵になると考え始める。祖母が秘密裏に貯蓄していた資産による出資と後押しを受け、モアナは家訓を破り、スタートアップの起業を決意する。モアナは、ミスばかりであるが憎めない気心の知れた仲間「ヘイヘイ」と実務能力に優れた「波」とともに事業を立ち上げるが、早い段階で資金確保や顧客開拓など多くの課題に直面する。
そんな中、かつてこの分野の研究者で起業家としても名声を博したマウイが出所したとの報せが入る。マウイは過去に革新的サービスを相次ぎ生み出し大きな成功を収めたが、上場段階で会計不正を指摘され、事業を失い実刑判決を受けた人物であった。モアナはマウイをプロジェクトに加わってもらえるよう説得するが、当初マウイは拒絶的な態度を示す。しかし、その後悪徳ベンチャーキャピタル・カカモラ社への闘いを経て、モアナは自らの志と能力、そして熱意を伝え、最終的にマウイの協力を得ることに成功する。
スタートアップが目指すサービスの中核には、かつてマウイが発明した特許技術が必要だった。しかし、その特許は弱者をカモにしたビジネスを営む成金タマトアが買収し所持していた。モアナは持ち前のメンタルと巧みな交渉技術を駆使した奪還作戦の末に特許を取り戻し、プロダクトを完成させる。
サービスを開始し、市場から一定の評価を得たことで、上場が射程に入るほど事業は拡大していったが、一部機能に問題があり、外部から批判を受けることになる。この事態を契機に、マウイは過去の失敗を思い出し、事業運営方針をめぐる対立からモアナのもとを去ってしまう。
事業の継続に迷いを抱くモアナであったが、プロダクトには新たな破壊的イノベーションとして市場を変革する可能性が残されているとの確信を捨てきることができず、事業継続を決断する。資金不足や想定外の困難が再びモアナを追い詰める中、マウイが再び事業に戻り、これまで培った知見と関係性を駆使して支援に奔走する。こうしてモアナたちのスタートアップは最終的に上場を達成し、革新的製品は市場で高く評価される。
最後にモアナは、成長を果たした企業をもって家業との統合を図る。伝統と新興企業文化が結合した新たな事業体制の下、モアナは次世代の成長基盤を築き上げる。一方、マウイは新たなベンチャーキャピタルを設立し、モアナのもとを去っていくところで、物語は幕を閉じる。
こんな映画があっても面白そうじゃないですか?
例えば、この骨子に「音楽」というテーマで肉付けを着せして部分的に恋愛要素を振りかければ、おおよそ「はじまりのうた」のような映画になるでしょう。
要所要所の描写でメタファーを考察ことができ、大人も楽しめる面白い映画でした。機会があれば続編もみたいところです。