bedgravity
2023年6月21日。SNS上にひとつのポストが投稿された。
このアーティスト写真、そしてメンバーを見ただけで、私は胸の高鳴りを抑えきれなかった。
写真の向かって一番右がボーカルのSakuraさん。
SakuraさんはSSW(シンガーソングライター)として16歳の頃から活動をしており、同年にはROADSIDE RECORDSから音源もリリースしている。
SakuraさんのバイオグラフィーはROADSIDE BRECORDS内に詳しいものが掲載されている。
そしてROADSIDE RECORDSを運営し、STUPID PLOTSのボーカルでもあり、Sakuraさんの父親でもある山口さんがSakuraさんの2019年のアメリカツアーに際して書いたコラムは、涙なしでは読むことが出来ない。
そして写真の写真の向かって一番左がベースの長沢さん。
言わずもがな、FOUR TOMORROWのベースである。
私は以前より、長沢さんを天才だと勝手に思っている。
他のメンバーは存じ上げなかったが、
Sakuraさんがバンドを始める
長沢さんがメンバーにいる
これだけで、その楽曲を聴く前から、冒頭のように私は胸の高まりを抑えきれなかったのだ。
そして2023年9月9日、bedgravityは仙台の雑フェスでライブを行った。
私は目と耳を疑った。
「長沢さんが一切しゃべっていない」
長沢さんといえば、ライブでのMCが、お家芸と呼ばれるほどにめちゃくちゃおもしろい人である。
FOUR TOMORROWが2011年まで企画していた「大合奏会」が、2012年にBREAK A SCHOOLのヒロ君による「MATSURI」にバトンが渡された。
その2012年のMATSURIのトップバッターを務めたのがFOUR TOMORROWだった。その時のMCは、私の中でベストオブパンクロックMCとして君臨している。
こんなMCをやってのける百戦錬磨の長沢さんが、ライブ中に一切しゃべらない。これは例えるなら、大谷翔平選手をサッカーのゴールキーパーに抜擢するようなものだ。
自分で書いておいてなんだが、全くしっくりこない例えである。タイムマシーンが目の前にあれば、この例えを書こうとする前まで戻りたい。
とにかく、そんな長沢さんのbedgravityでのバランス感覚を目の当たりにし、私は長沢さんをさらに天才だと思うようになった。
長沢さんをはじめ、年長組のメンバーが、自らの役割に徹し、その落ち着いた安定感で、そっとSakuraさんを支えている。そして何よりSakuraさんがとても楽しそう。なんという素晴らしいライブ映像なのだろうか。
2023年11月15日、そんなbedgravityのデビュー作となる音源が配信されることとなった。
その数日前からSNSではカウントダウンが行われ、私はひそかに楽しみにしていた。
そしてリリースされた3曲入りシングル「Long Fuse」を、配信開始日から3日連続で公開されたLyrics Videoと共にレビューしていく。
1. Don'T Call My Name
一番初めに聴いた時。包み隠さず記すと、私はイントロを聴いて「あー、そういう感じかー」と一瞬落胆した。私が勝手に上げまくったbedgravityハードルは、天よりも高くそびえたっていた。
しかし、イントロがどんどん進行するにつれ、グングンとそのハードルの頂点に向かい、Sakluraさんのボーカルが始まった瞬間には、私は鳥肌が立つのを感じ、天を仰ぎ、ため息をついた。私の中のハードルを軽々と越えていったのだ。イントロのたった1分ほどの間に落胆と高揚を繰り返す私。もはやメンヘラである。
素晴らしいメロディーとSakuraさんの透明感のあるボーカル、発音の良い英語。ひとつひとつの言葉に魂が宿しているような丁寧な歌声は、耳を通して体の中にスッと入って来る。音楽界の経口補水液OS-1である。いや、経耳補水液というべきであろうか。そんなことに悩んでいる場合ではない。なぜなら、既にこの記事はなかなかのボリュームになっているからだ。
「べビィ♪」の部分は、2023年でいうとWhat Goes Upのイングリッドさんの「レディ♪」を思い出させてくれて、私的胸キュンポイントの一つである。
私は何度も聴くうちに、はじめは落胆したとか言っていたイントロを、badgravityを聴いていない時でも口ずさむようになっていた。人間とは時に単純な生き物である。
2. moon
今回の3曲の中で、最もしっとりとしているこの曲。
私はbadgravityを数か月はずっと聴き続け、数年後に久々に聴いた時にはこの2023年の冬を思い出すことになると思っている。
しんしんと降り積もる雪の音。
雪の夜の不思議な明るさ。
キンと寒い夜に見上げる星空。
澄んだ空気でいつもより星がたくさん見える冬の夜空。
私はこの曲を聴くとそんな冬の情景が思い浮かぶので、おそらく数年後に思い出す時は、この曲で今の気持ちを再度噛み締めていることだろう。「あの頃は良かったな」ではなく「あの頃"も"良かったな(今現在も良い)」と数年後に感じるように日々を生きるのである。
3. White Breath
私がbedgravityを聴いた時、「あのバンド、このバンド」と形容する他のバンドを考えようとしたが、やめた。なぜなら、bedgravityはbedgravityだから。私なりの敬意を込めて。
しかし、この曲においては他のバンドの名前を出さないわけにはいかない。
それは「RVIVR」である。
RVIVR(リバイバー、綴りは「いつも愛(i)は真ん中に」と覚えるのが良い)には個人的な思い入れがあるのはもちろん、Sakuraさんと初めて会った2019年の「PUNK合宿GIG Vol.5」では、たしかSakuraさんはRVIVRのTシャツ着ていたし、長沢さんにおいては2014年のRVIVRの来日ツアーの長野公演でRVIVRのMVの振り付けを完コピ→ダイブという歴史に残る偉業を成し遂げているのだ。
そんなRVIVRにまつわる(?)2人が在籍するバンドが、RVIVRインフルエンスを感じざるを得ないサウンドを奏でているというのは、本当にグッとくるものがある。サウンドがRVIVRという感じというよりは、随所にRVIVRへの愛を感じるポイントがある、という方がいいかもしれない。
久々に、
「早くもっと聴きたい、早くアルバムを聴きたい」
と心から思えたバンド、bedgravity。
これからも陰ながらめちゃくちゃ楽しみにしています。
badgravity Twitter