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『ゼビウス』は私にとって「ゲーム」を超えた存在だった
1983年に発売開始されたアーケードゲーム『ゼビウス』は、80年代のナムコ(現在はバンダイナムコ)を代表する、というより、80年代のアーケードゲームを代表するタイトルだ。
これについて今更説明する必要はないほど、あらゆる場所で語り尽くされているが、私にとって少し思うことがある。
本作について、ネットなどの記事では必ず「縦スクロールシューティングゲーム」と紹介される。それは何の間違いもないが、私はいつも、この表現に対して違和感を覚える。
80年代前半くらいはまだ「シューティングゲーム」という呼び方や明確なジャンル分けをされていなかったので、そういう認識をしていなかったこともある。
それだけでなく、私にとって『ゼビウス』は、「ゲーム」という枠を超えた存在だと思っているから。
突然の発表に喜ぶ
Nintendo Direct 2021.9.24
先日行われた、Nintendo Switchの新作を発表するオンライン配信イベント「ニンテンドーダイレクト」内で、アーケードゲームの復刻プロジェクト「アーケードアーカイブス」にナムコのタイトルが追加されると発表があった。
しかもその中から『パックマン』『ゼビウス』は発表直後から配信開始という、サプライズともいえるニュースだった。
アーケードアーカイブス『ゼビウス』
再現を超えた移植。今こそ味わえる感動
『ゼビウス』が初めてアーケードゲーム以外の形で移植されたのは、1984年発売のパソコン版。同年にはファミコン版も発売され、その後数多くのパソコンやゲーム機に移植されている。私も幾度と購入してこのゲームに触れているので、Switchで発売されること自体は驚くものでもなかった。
でも、アーケードアーカイブスというプロジェクトは「アーケードゲームを当時のまま再現する」というコンセプトに基づいて制作されている。アーケードゲームを限りなく再現したものに、今改めて触れることができる。それに対する喜びが大きかった。
更に、今回のアーケードアーカイブス版は、細かな設定があることも魅力の一つ。
設定項目にある「こだわり設定」には、ゲーム基板の起動画面を表示、2Pではソルを破壊する位置がずれるなど再現の途上。ゲームだけでなく、ブラウン管モニターの「焼き付け」を仮想的に表示。追加要素として、エリア数や敵の攻撃ランク、更にはソルやスペシャルフラッグの位置など、見えなかったものを可視化する。更には、プログラム上のミスで出現しなかったソルを出すという、夢の実現までできる。
その設定を全てONにしてプレイすると、破壊すると敵の攻撃ランクを抑えられる地上物「ゾルバク」で、実際にどれくらい変わるのかが分かる。ソルの位置が全て見える。スペシャルフラッグは毎回探すように撃ちこんでいたが、実際はこのような形で存在していたのだと再認識する。
当時からそのシステムや隠しキャラの位置などはほとんど把握していたが、見えることは新たな「驚き」でもあった。
これをプレイする環境として、私の自室では、縦に回転できるアーム取付の液晶モニターとアーケードスティック、真横に大きなスピーカーなど、それなりにこだわったものを揃えている。
自分にとって最高の環境で、当時を限りなく再現したゲームに触れて、少し感動を覚えた。
こうやって、40年近く経っても感動できる、そんなことも嬉しく思った。
数多く味わった、新しい体験
私にとって、いつまでも名作であり続けるが、最初に書いた通り「『ゼビウス』はゲームという枠を超えた存在」だった。
その理由は、私が本作で受けた、あらゆる「新しい体験」があったから。
80年代前半はまだコンピューターの性能上、映像の表現が限られていた時代に、多彩な色を使った映像で描かれる、全編を通して統一化された世界、ゲームの背景となるストーリーをプレイするだけで感じ取ることができた。その中に登場する巨大戦艦「アンドアジェネシス」や、隠れキャラ「ソル」など、それまでのゲームでは味わえないものが数多くあった。
更に、新しい体験はゲームの中にとどまらなかった。
ゲームの中で「空飛ぶ板『バキュラ』はザッパーを256発撃ち込むと破壊できる」などゲームに存在しないはずのものが、ネットが普及していなかった時代に噂として知れ渡ったこと。本作の攻略を掲載した攻略本や、この時期に創刊したゲーム情報誌、ゲームを音楽として収録したサウンドラック発売など、あらゆるものが登場したこと。
これら全てが歴史上初めてではないが、広めたり定着するきっかけとなったのは本作だった。
それら様々な新しいものや動向をリアルタイムに味わった私にとって、本作はゲームというカテゴリを遙かに超えた、ゲームの歴史そのもの。一言で言うなら「革命」という認識を持っている。
私にとって『ゼビウス』は、それだけ大きな存在だったということ。そんな存在に、今改めて触れることができるのも嬉しく思う。
追記
この記事は、2013年に書いたブログから一部抜粋しています。
30年目のゼビウス: Blog - 19XX
この時期はゼビウスの発売30周年で、記念アルバムや3D映像のゲームが発売されるなど、改めてゼビウスに触れて感動する機会となりましたが、その8年後となる今回も感動できました。
そして、2年後の2023年は発売40周年。この時期にはまた何か発売されるかもしれませんが、それを触れて、また感動できるかもしれません。
一生感動を続けられる作品に出会えたことは、幸せかも知れません。
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