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『雷電』には「時代を戻す」パワーを感じる
過去のアーケードゲームを復刻するプロジェクト『アーケードアーカイブス』。
このラインナップとして7/1に、STGの名作と言われる『雷電』が発売された。発売機種はSP4とNintendo Switchで、私が購入したのはSwitch版。
『雷電』とは、1990年にセイブ開発から発売された、縦スクロールシューティングゲーム(以下STG)。プレイヤーは超高空戦闘爆撃機「雷電」を操作して敵に挑む。
本作は、発売当初からSTGファンの間で人気を博し、後に『雷電II』『雷電DX』などシリーズ化されている。
また、当時のゲーム機やパソコンなど数多くに移植されているが、中でも1994年12月に発売された初代『プレイステーション』で、初代とIIをカップリングした『雷電プロジェクト』が発売されている。その発売は1995年1月、プレイステーションにとってローンチタイトルの一つであり、それだけ重要な位置づけだったことがうかがえる。
そんな「大御所」とも言える存在のゲームだけに、今回の発売を喜ぶファンも多かった。
「基本」の追求
私も当時はゲームセンターで遊んで移植版も何作かプレイしている、思い出の一つだが、この機会に早速購入して久し振りにプレイした。そこで改めて感じたのは、このゲームは本当に徹底して「基本」を追求したものだっということ。
プレイヤーが使用するのは2種類のショット、ミサイルなど2種類のサブウエポンとボムのみ。ザコもボスも、敵の攻撃は全て「弾」、自機に向かって飛ぶものや扇状に巻かれるものなどで構成され、レーザーや爆裂弾など変化に富んだ攻撃はない。何が何でもまっすぐ飛ぶ弾だけで攻撃してくる。
それだけでは単純に思えるが、敵はショット1発で破壊できるザコから耐久力のあるものや巨大な機体。砲台や戦車、戦艦といった地上物など、様々なものが画面上方から休む間もなく出現し、更に敵によって弾の撃ち方は異なる。
それに対してプレイヤーは、常に機体を左右に動かして、敵の攻撃方法とタイミング、弾の弾道を先読みして確実に破壊しないと、あっという間に弾に囲まれてしまう。
本作の特徴は、敵配置と弾の攻撃方法という「基本」を徹底的に追及して、それだけで楽しませることだ。
基本を「作った」?
そんな『雷電』が見せる「基本」について、むしろ本作が基本を作ったという見方もできるが、当時のアーケードゲームの流れを見たら少し異なる。
本作がゲームセンターに登場したのは1990年。それまでのSTGは、東亜プランが『究極タイガー』『TATSUJIN』などを発売して「東亜STG」と呼ばれるほど確固たる地位を確立し、カプコンは『エグゼドエグゼス』『ガンスモーク』など、ボタンを「連射」して撃ち勝つスタイルを数多く発売するなど、各メーカーの特色があった。
でも1990年、東亜プランはアクション要素を含んだ『アウトゾーン』、カプコンは『1941 - Counter Attack -』を発売したが、それ以前の1988年はロータリースイッチを採用した『ロストワールド』など、それまでのスタイルから別の方向性に進みつつある時期だった。
その中で『雷電』という、あまりにも基本に忠実なものが突然登場して、基本の面白さを改めて見せつけられたと記憶している。
言わば本作は、基本を作ったというより「基本に戻したゲーム」と言える。
新しいスタイルを作る作品にはパワーとエネルギーを感じるが、本作の「過ぎつつあるスタイルを戻す」ことにも、大きなパワーとエネルギーを感じる、それが本作の魅力だ。
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