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『デス・ストランディング』で思う、「運ぶ」ゲームの歴史と「主目的と二次目的」の関係
先日購入してから、やり込んでいるゲームが『デス・ストランディング』。
舞台となるのは「デス・ストランディング」という巨大な爆発によって分断された北アメリカ。そこには、人間を闇の世界に取り込んでしまう「BT」という存在、時を早めて物質を急激に劣化させる「時雨」などの脅威もあり、人間が自由に移動することすら困難になっていた。
その世界の中で、主人公「サム」は、荷物の「配達」を請け負い遂行することで、世界を繋げていくという物語。
で、本作は発売当初から「おつかいゲーム」と呼ばれるほど、延々と仕事を受けて配達を繰り返す、配達するだけのゲーム。
…いや、配達するだけじゃない。
草原や道・川など様々な地形からルートを考えて、険しい山で転ばないように足場を見ながら進んで、荷物100kg強を担いだ時はバランスを取って、途中で落とし物があるから拾ったら荷物増えて持ち方考えて、敵が出てきたら逃げて追いつかれたらぶん殴る。
そんなイベントが常にあるから、休む暇がない。
…いや、休む暇は随所にある。
山の頂上から見える目的地を眺めながら、辺り一面が草原になった場所を延々走り続けて、そこでいい感じにBGMが流れるなど、「休む間」も随所に設けている。
そんな、いい感じに緊張感とリラックスがバランス良く設けられていることが、延々と続けられることに繋がっていると思う。
そんな「おつかいゲーム」に対して「退屈」などの批判的意見がある反面、「新しい試みのゲーム」という声も多く、高い評価を受けている。
…が、私はここで思った。
「ものを搬送する」ゲームって、本当に新しいのか?
そこで私なりに、ゲームの「搬送」について、少し考えてみた。
搬送するゲームとは?
TVゲームの中で運ぶ要素があり、かつ「搬送が主目的」のゲームはどんなものがあったのか?を考えると、実はかなり多い。
例えば、1980年に発売されたアーケードゲーム『ブラックビートルズ』
これは、画面の中に多数の敵・ブラックビートルズ(つまりゴキブリ)がいる中、プレイヤーは殺虫剤で敵を攻撃できるが、主目的は荷物を倉庫に運ぶゲーム。
また、アーケードゲームでは他に『トランキライザーガン』
という、ジャングルに潜んだ動物を麻酔銃で眠らせてトラックに運び込むゲームなど。
このように「攻撃はできるが主目的は搬送」であれば、80年代のPCゲームでも『チョップリフター』『ザクサス』などがある。また『倉庫番』『FANFUN』にいたっては、ゲーム全編にわたってほぼ「運ぶのみ」だ。
考えてみれば、ゲームの要素として、アクションやSTGでは「攻撃」、迷路などのステージで敵からの「逃走・脱出」、スポーツをモチーフにしたものでは「競う」、ドライブゲームは「移動」、そして「搬送」、当時から多かった主な要素として、私が思い付くのはこの辺。
言わば、運ぶゲームは古典とも言える要素の一つで、『デス・ストランディング』は新しいというより、その古典を徹底して突き詰めた、ここまで追求したものが初めてということだろうか。
それと共に、本作でもう一つ感じたことがある。それは、ゲームにおける「主目的と二次目的」の関係について。
ゲームにおける、主目的と二次目的
都市・地域・国など巨大な規模のマップの中を自由に移動し、目的を果たしていくゲームは俗に「オープンワールド」と呼ばれ、本作はその要素を引き継いでいる。
そのジャンルに限らず、FPSやRPGなどのゲームで「移動」とは、あくまで二次目的。例えば「敵を倒すために目的地に向かう」など、敵を倒すといった主目的を果たすための手段に過ぎない。
でも、本作は移動が主目的で、その途中にある様々なイベントや要素が二次目的と、完全に逆だ。
そんな、要素をひっくり返してしまったところが面白いと思う。
ただ、本作のディレクターである小島秀夫氏の作品と言えば、『メタルギア・ソリッド』『スナッチャー』『ポリスノーツ』なども含め、ゲームだけでなく「ドラマやストーリー上の世界を見せる」要素も強く、ゲームもドラマもお互い主張している。
言わば「ドラマが主でゲームが二次」でもあり「ゲームが主でドラマが二次」でもある。
そんな、ひっくり返された主と二次、両立する主と二次という関係が、このゲームに存在する、それが面白いと思った次第。
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