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Doona タイムレスな音とリアルタイムな言葉でグルーヴする5人組バンド:sprayer interview

ブラックミュージックをルーツに持つ2002年生まれの5人で構成されるバンド・Doona(ドゥーナ)。彼らはその優れたスキルを礎として、80年代のファンク・R&Bから00年代以降のネオソウルなフィールまでをも飲み込み、独自のミクスチャー感覚でタイムレスなサウンドを創り上げている。一方、GENKI(Vo)の言葉は現代の若者ならではの葛藤をリアルタイムに映しており、だからこそDoonaの音楽が未来に残っていくことに意味を見出さずにはいられないのだ。やんちゃで賑やかな彼らとの会話から、そのルーツやビジョンを探った。

五者五様のルーツと影響

[L→R] RINTA(Key)| RYO(Ba)| GENKI(Vo)| SOTA(Gt)| ZACKY(Dr)

ーまずは結成の経緯について聞かせてください。元々GENKIさんはソロで活動していたんですよね?

GENKI(Vo):そうですね。同じ専門学校に通ってよくスタジオで遊んでたりしてたSOTAとRYOちゃんはその時からサポートに入ってもらってて。それから正式にバンドとしてやっていこうということなり、徐々にメンバーが増えていった形です。

SOTA(Gt):最初は3人だったんですけど、知り合いづてにRINTAが加わって、さらにRINTAの紹介でZACKYが入って。去年の9月にいまの5人が固まりました。

ー結成前にスタジオで合わせていた頃から、今のDoonaに近い音楽性を志向していたんですか?

GENKI:まあ本当に遊んでいただけなんですけど、マイケル・ジャクソンのカバーとかをやってましたね。

RYO(Ba):SOTAがリフを作るのが得意なので、「良いのができたから合わせようぜ!」っていうのに付き合わされたり。

SOTA:嫌だったの!? ごめんね(笑)

ーDoonaというバンド名にはどんな由来があるのでしょう?

SOTA:どっち話す? カッコいい方か、本当の方か。

GENKI:ディスコ歌手のドナ・サマーから取りました。っていうのがカッコいい方で(笑)、本当は専門学校の同級生だった友達の飼い猫から。そいつもソロで音楽活動をやってたので、お互いのアーティスト名を付けることになったんですよ。で、その猫がマドンナをもじった「ドナ」って名前で。僕は丸がいっぱい付いてる名前が好きなので、Doonaにしました。

ー5人は共通してブラックミュージックにルーツがあるとのことですが、それぞれ詳しく影響を受けた音楽について教えてください。

GENKI(Vo)

GENKI:人生で一番最初に見たライブ映像がマイケル・ジャクソンのTHIS IS ITだったんですよ。親が流してるDVDを、訳もわからず見てて。そこで触れたボーカリストとしてのパフォーマンスやグルーヴ感は、今にも影響してるのかなって思います。最近はSex PistolsとかPublic Image Ltd.とかにハマってて。ライブでの立ち振る舞いは、パンクから得たものが多いと思います。

ーSOTAさんはどうですか?

SOTA(Gt)

SOTA:僕は最初メタルを聴いてました。日本だとSiMやcoldrain、Crossfaith、海外だとSlayerとかSlipknotとか。それから、SNAIL RAMPやSHANKなんかのメロコアを好きになって。で、高校生の時はベースをやりたかったんですけど、部活で怪我しちゃって、指弾きができないから諦めたんですよ。そこでRed Hot Chili Peppersに出会って、ジョン・フルシアンテ(Gt)のリフめっちゃカッコいいじゃん!ってなって。それからギターを始めて、洋楽も聴くようになりました。ジミ・ヘンドリクスを経由して、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、エリック・クラプトン、B.B.キングといったブルースのギタリストの影響が今は一番強いかなと思います。

ーなるほど。メタルにルーツがあると聞くと、リフメイクへのこだわりも納得です。

SOTA:確かに、リフものの音楽ばかり聴いてましたからね。

ーRYOさんはいかがでしょう?

RYO(Ba)

RYO:僕はGENKIと近くて、やっぱり親が家や車の中で流していたマイケル・ジャクソンに影響を受けてます。THIS IS ITも映画館で観ましたし。高校生でベースを始めたんですけど、それからはロックよりもファンクやR&Bの方が弾いてて楽しいなってことに気が付いて。マイケルのアルバムでも、ファンク色の強い『Off The Wall』が一番好きですね。

ーベーシストとして、特に影響を受けたプレイヤーはいますか?

RYO:割と最近になって見つけたんですけど、シャレー・リードっていうゴスペルベーシストがいて。彼に出会ってからゴスペルばっかり聴いてます。あとはマーカス・ミラーもよく聴きますね。

ーRINTAさんは、どのようなルーツをお持ちですか?

RINTA(Key)

RINTA(Key):僕は元々クラシック出身で、ポップスには全然馴染みがなかったんですよ。ヤマハ音楽教室に通ってたので、その教材ばかり聴いてて。ただ、親の車で流れてた奥田民生やユニコーン、QUEEN、BON JOVIとかを聴いて、ロックって面白いな、とは感じてました。で、専門学校に入ってから友達きっかけでジャズやファンクといったブラックミュージックを聴くようになったんです。その時に薦められたディアンジェロ、ダニー・ハサウェイとの出会いは大きかったですね。

ーZACKYさんはどうですか?

ZACKY(Dr)

ZACKY(Dr):ドラムを始めたのが中学2年生ぐらいなんですけど、そのきっかけはYouTubeで見た、文化祭でドラムソロを披露してる動画で。その時、正直めっちゃいじめられてたんですよ。だから、何かで人前に出て輝きたいと思って。それからドラムのレッスンを受け始めました。そこでONE OK ROCKやLinkin Park、あとはそれこそSlipknotとかOceans Ate Alaskaみたいなメタルを聴いてましたね。


衝動と愛着が生むDoonaオリジナルのサウンド

ーみなさん、多種多様なルーツをお持ちなんですね。日本のシーンでもブラックミュージック色の濃いバンドは少なくないですが、その辺りからの影響は?

GENKI:かなりありますね。みんなSuchmos好きなんで。あのバンドはお手本だから。

SOTA:彼らもロックやファンクをごちゃ混ぜにしたミクスチャーな感じがあるじゃないですか。結局、ファンク一辺倒でやってもジェームス・ブラウンには勝てないし、ブルースをやってもB.B.キングには勝てない。パイオニアには追いつけないんですよ。でも、SuchmosやKroiは、色々な要素を取り入れてるから新しさで勝負できる。僕たちもその姿にインスパイアされてます。

SOTA(Gt)

ーいまライブハウスで共演している同世代では、シンパシーを感じたり、刺激を受けたりするバンドはいますか?

SOTA:大阪のluvですね。彼らが初めて東京でライブした時に対バンして。後日聞いたんですけど、僕らのライブに食らってluvの奴らはバッド入ったらしいんですよ。でも、この間はluvのライブを見た僕がバッド入って(笑)。俺らこのままじゃダメだぞと。お互いそうやって高め合いつつ、でも仲は良い。大阪に行ったら彼らとどんちゃん騒ぎで、プライベートでも一緒に古着屋行ったりとか。すごく良い関係性を作れてますね。

ー2組から、新たなシーンが生まれる気配も感じます。

GENKI:「西のluv、東のDoona」みたいな!

SOTA:いい具合にやってることも違うし、お互い刺激を受けやすい立ち位置にいると思います。

ーDoonaのサウンドは、80年代前後のエッセンスを感じさせつつ、00年代以降のネオソウル的なムードも自然に取り入れているのが印象的です。異なる時代やジャンルを組み合わせることは意識していますか?

GENKI:僕たちは、「Doonaらしいよね」っていうサウンドを確立することを目標にしてて。ファンクやR&Bをルーツにしてる人ってめちゃくちゃいるし、それをそのままやっても面白くねえだろうと。だから、バラバラな僕らのルーツをひとつにまとめて新しいものを生もうとしてます。レッチリ仕込みのギターリフに、ゴスペル譲りのベース、ファンキーなドラム。それぞれが組み合わさって、Doonaだけの音が出るんじゃないかって。同じ曲の中でも、出だしはファンクだけど最後はロックだよね、みたいに展開が変わることもあります。

GENKI(Vo)

SOTA:ジャンルは縛ってないですね。その時に聴いてる音楽にも影響されますし。たとえば、2ndシングルの「J-NET JACK」(2023年12月リリース)はジャネット・ジャクソンの楽曲「Rhythm Nation」を聴いた時の「やべえ! かっけえ!」っていう気持ちが出発点になってます。そこで、80年代のニュージャックスウィングにロックやポップスの要素を織り交ぜて。曲名も、ジャネット・ジャクソンの名前をもじりつつ、「日本のネット社会を乗っ取る」っていう意味も込めたダブルミーニングです。

ーメンバーの嗜好やその時の衝動を混ぜ合わせた結果、自然にミクスチャーされるんですね。3人時代のアー写は古着屋で撮影されてましたけど、あのロケーションもバンドの性格と合っているような気がします。ヴィンテージなアイテムを選ぶのと、古い音楽をディグるのは同じ感覚じゃないかなって。

SOTA:みんな、古着とか洋服も好きですしね。好みはみんなバラバラですけど。

ー確かに、ルックにもそれぞれ個性が表れてますね。ちなみに音楽はサブスクで探すことが多いんですか?

GENKI:サブスクとレコードで半々ですね。僕、いまレコ屋でバイトしてて。一日一枚、良いレコードをディグることをルールにしてます。


リアルタイムな感情を閉じ込める作詞

ー楽曲制作についてもう少し詳しく伺わせてください。作曲はどのような流れで進むことが多いですか?

GENKI:SOTAが考えたリフから始まることが多いですね。「こういうの思いついたんだけどどう?」っていうアイデアが送られてきて、僕と2人でデモを簡単に作って。それを残りの3人に投げて各々フレージングしてもらって、一曲完成です。

ーサウンドの心地良さと同じくらいDoonaを特徴付けているのが、GENKIさんによる歌詞の奥深さだと思っています。これまでリリースされた2曲はどちらも現代ならではのテーマを持った楽曲ですが、どこから着想を得ていますか?

GENKI:日々の中で不満や葛藤を抱くことってありますけど、それを全部会話の中で人に伝えることって難しいじゃないですか。そりゃ気も遣うし。だから、自分の思いを100%込めることができるのは歌詞しかないと思ってるんです。だから、その時思っていることをそのままテーマにして。わかりやすい歌詞を書くのは苦手で、「どういう意味?」って聞かれることも多いんですけど、あえて直さないんです。パッと出た言葉こそ自分の言葉だし。

ーたとえば1stシングル「Hot Dog」には「ハッシュタグ」っていうワードが出てきたりしますけれど、あえて現代的な言葉にこだわろうという思いは?

GENKI:確かに、そこは今っぽさを意識して書きました……確か(笑)

SOTA:覚えてないんかい。

GENKI:マジで衝動的に書くからね。半日とかで出来上がります。本当に、その時その時に言いたいことを言うしかないと思うんですよ。

ー「J-NET JACK」では初のミュージックビデオも制作されました。楽曲のメッセージをさらに鮮やかに伝える仕上がりだなと感じますが、ディレクターとはどのようなコミュニケーションを取っていたのでしょうか?

GENKI:ディレクターには、曲で伝えたいことをお話しして、映像で汲み取ってもらいました。僕がカメラを向けられるシーンとか、AIの顔写真が次々に貼られていくシーンとか、細かい表現は向こうからアイデアを出してもらって。これからも、目で見て楽しいMVにはこだわっていきたいですね。

SOTA:スマホカメラで撮影したような低予算だけど発想力のあるものか、しっかりとお金をかけて作ったハイクオリティのものか、どちらかに振り切ったものを作り続けたいですね。中途半端なものは出したくないです。


先駆者でなければレジェンドにはなれない

ー2024年は2年目に突入するDoonaですが、今年はどのような動きを計画していますか?

GENKI:そうですね……売れます(笑)。去年はバンドを構築していく一年だったので、とにかく界隈に食い付いていくっていうのが目標だった。今年はもっと露出して、外にもっと発信していきたいです。フェスやサーキットにも出て、新しい人に知ってもらう一年にしたいですね。

ーそれこそSuchmosやKroiが、ブラックミュージック影響下のバンドをメインストリームでヒットさせる土壌を整えたと思います。最後の質問ですが、彼らに続いて広い舞台で活躍するビジョンは見えていますか?

SOTA:まずは自分たちのサウンドを自分たちで楽しむことが第一ですね。たとえば東京ドームに立ちたい!とか、そういうことはあんまり考えてない。Doonaのサウンドを確立して、何かのパイオニアになることが最終目標です。

RINTA:始めた当初は大きなステージに立ちたいと思ってたんですけど、音楽ってそれだけじゃないなって、このバンドを通して思うようになって。Doonaをやるからには、それよりも自分らしさを大切にしたいですね。規模を広げていくのはあくまで通過点で。Doonaのキーボーディストとして、先駆者でありたいです。

ー誰かの後に続くよりも、やっぱり先頭に立っていたいと。

GENKI:じゃないとレジェンドにはなれないですからね。やるならとことんやらないと、と思ってます。

Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:Doona

2002年生まれ、ブラックミュージックをルーツに持つ5人組で結成されたロックバンド。 東京を拠点に活動している。 ギターロック、FUNKが主なサウンドだが、R&B、JAZZなどを織り交ぜ各メンバーの個性があり、ジャンルにとらわれないサウンド感を持つ。

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