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「歌は自分らしくあるためのスイッチ」 中低音猫耳VTuber・猫乃まんま:sprayer Interview

VTuber・猫乃まんまが1月18日に初のシングル「Mirroring Stage」を配信リリースした。「おうたが大好き中低音猫耳Vtuber」として、2023年12月に活動を開始。作曲家・旗下かけるによる同人音楽サークル・嘘と虚無の木漏れ日のボーカリストとしても活躍している彼女は、確かな芯を持つ歌声と、繊細な表現力が魅力だ。今回のインタビューでは、歌うこととリスナーの存在に救われてきた彼女の軌跡を赤裸々に語ってくれた。


広い海に出れば絶対どこかに居場所がある

-まずはじめに、現在の活動内容について教えてください。

主に雑談やゲームの配信、あとはボイスドラマみたいな動画を出したりしてます。歌に関しては、私の声がデカいので賃貸ではなかなかできなくて(笑)。時々スタジオに入って歌枠をやったりもしてるんですが。

-VTuberとしての活動を始めたきっかけは?

作曲家の旗下かけるさんのサークル(嘘と虚無の木漏れ日)で歌わせていただくことになったんですけれど、それまで歌の経歴がまったくなかったんです。活動歴がないってことは、私が宣伝しても全然意味がないじゃないですか。せっかく好きな作曲家さんのもとで歌わせてもらえることになったんだから、活動に貢献したいなと思って。VTuberとして発信すれば、私の力で一枚でもCDを誰かに届けることができるんじゃないかと。私自身が広告塔になれればいいなという思いで始めました。

-活動歴がない中で旗下さんの楽曲を歌うことになったのはどういう経緯だったんですか?

もともと自分の声にすごくコンプレックスがありまして。言うなれば女性らしさとは離れた声をしているので、それが原因で嫌な思いをすることが多かったんです。でも、お友達になった旗下さんが、声が良いって褒めてくれたんですよね。それまでは、アニメ声を作って上ずったような話し方をしたりもしていたんですけど、地声がすごく良いと。それから、どうやったら力みを取った話し方や歌い方をできるかというトレーニングをしてもらって、その流れでボーカルをやってみたいと伝えてみたんです。

-ステージに立つ人や他のVTuberさんに憧れて始めた活動ではないんですね。

そうですね。今でこそ、リスナーさんが声や歌を好きって言ってくれるんですけど、最初はこんなに見てもらえるとは思ってなかったので。もっとゆるい感覚で始めたんですよ。でも、こんなに自分のことを見てくれる人がいるんだなって感じるようになってからは、ちゃんとリスナーさんに元気を届けたいなとか、私と出会えて良かったと思ってもらえるように考えて活動するようにはなりましたね。

-現在は、自分の声に対する思いは変わりましたか?

もう、全然違いますね。最初は配信のアーカイブを見返すの嫌だったし、スタジオで歌った音源を聴き返すのも苦痛で、頭抱えながら「あああ~!」ってなったり(笑)。でも最近は普通に聴けるようになりましたし。好きかどうかってきかれたら何とも言えないですけれど、前ほど嫌いじゃないというか。

よく話してるんですけれど、広い海に出れば絶対どこかに居場所があるなって思うんです。私はリアルな人間関係の中ではなかなか居場所を見つけられなかったんですけど、バーチャルに出てからは、声が好きって言ってくれる人や、曲を毎日聴いてるって言ってくれる人に出会ったり。M3でもリスナーさんがCDを絨毯買いしてくれて、「自分の力でCDを売る」って目標も達成できたんですよ。自分の声や歌に価値を付けてくれて、居場所を作ってくれたみんなのためにも頑張りたいなと思ってます。

-猫乃さん自身は、リスナーとしてどんな音楽を聴いてきましたか?

幼少期とかはMr.Childrenとかが好きでしたね。いまはback numberが大好きです。3年前くらいにハマって、ライブにも行くようになりました。音源ではすごく綺麗で、切なげに歌うんですけれど、ライブではすごいがなるし、パワフルなんですよね。歌って、こんなに思いっきり歌っていいんだなって。私は元々、カラオケでも激しい曲を歌えなくてバラードばかり選ぶタイプだったんですけれど、back numberを好きになってからは、自分もこうやって歌いたい、こうやってドキドキさせたいって思うようになりました。

Adoさんも好きなんですけれど、「女性でこういう歌い方をしてもいいんだ」って背中を押して貰えた気がしました。「うっせぇわ」の「はぁ?」の歌い方を調べて、がなりを身につけました。

-back numberやAdoさんから、殻を破る勇気をもらったと。

そうですね。荒々しい歌い方が、色んなジャンルで、男女も関係なく許されてるんだなって気付きました。back numberのライブは、本当に音源と全然違うんですよ! あんまり語ると早口になっちゃうのでほどほどにしておきますけれど(笑)、涙が出てくるぐらいカッコいいし。音源だけしか知らない人はぜひライブ映像を見てほしいです。

清水さんは細かいニュアンスをつけて歌うので、私もそれを意識して練習したりしました。「神は細部に宿る」ってこういうことなのかなって思いながら。「Mirroring Stage」もできるだけ歌いっぱなしにならないように気を付けました。フレーズの中でブレスアウトを入れたり、エッジを入れたり、ハッとしてもらえるポイントを作ることを考えましたね。

-ワンフレーズごとにこだわりを詰め込んだんですね。

はい。やっぱり上手い歌って、AメロやBメロが上手いと思うんです。サビは声を張るから自然と迫力が出るんだけど、それ以外って目立たないけどすごく大事な部分だと思うので、そこをちゃんと詰めることで上手く聴こえるかなって。

-「おうたが大好き!中低音〈ド〉健全ネコ耳Vtuber」というキャッチコピーを掲げてらっしゃいますが、歌を歌うことは昔からお好きだったんですか?

話していてわかると思うんですけれど、私、ちょっと吃音があって。吃音持ちって、歌ではどもらないんですよね。だから歌が好きな方って多いらしいんですけど、私もその1人で。上手く話せないけれど、歌はスラスラと歌えるっていう。言葉で何かを表現することにコンプレックスがある中で、最低限人並みにできることが歌だけだったから、そういう意味では確かに好きでした。

でも、こうして活動を始めるまでは、超恥ずかしがり屋だったんです。でも今は、人前で歌うことも全然できるようになりましたし。私のVTuberとしての活動を知っている方からは、性格が明るくなったって言ってもらえるんですよね。今は第二の人生みたいな感じがするって。嫌いだった声を好きって言ってもらえたり、上手くできなかったことができるようになったり、好きな人の曲を歌えたり……歌が自分の可能性を大きく広げてくれたと思ってます。

-なるほど。

ボイトレの先生や友達には、歌う前と後のテンションの差が激しいってよく言われるんですけどね(笑)。歌枠でも、歌った後に「急に素に戻るな!」って言われたり。……本当の自分がどこにあるかはわからないですけれど、歌は自分が自分らしくあるためのスイッチでもあって。

-歌というものが、自分を解き放ってくれた。

お腹からワーッと声を出すと、嫌なこととかが全部飛んでいく感じがしますね。やっぱり、疲れてる時ほど歌いたくなるし。昔の自分だったら思いもしなかったけれど、大きいところでライブをやってみたいなとかも思ったりするんですよ。どこに行っても上がり症だった私が、今は人前でもちゃんと声が出せますし。それもやっぱり旗下さんが私の声を褒めてくれて、歌を教えてくれたからだと思うので、これからも旗下さんといっぱい曲を作りたいです。


激しさの中に繊細なニュアンスを込めた「Mirroring Stage」

-sprayerから配信されているシングル「Mirroring Stage」についてお伺いさせてください。どのような流れで制作された楽曲なのでしょうか。

実は、私への当て書きじゃなかったんですよね。ギターを弾いた圧力さんと旗下さんが勢いで制作し始めて完成したような曲だそうで。ただ、元々は人が歌うことを想定してなかったから、結構キーも高いんですけど。そのデモを聴いて、「めっちゃカッコいいから歌いたい!」って言ったら、「歌ってもらえるなら嬉しい!」みたいな感じで。

-先ほども細かいニュアンスに触れていましたが、レコーディングにはどのような意識で臨みましたか?

とにかく曲がカッコいいから、私もそれに負けないように、歌で殴るぞっていう気持ちで。ただ、私が歌うことで生まれる「夜っぽさ」は崩さないようにしたいと思ってました。いるじゃないですか、歌うと朝っぽくなる人とか、夏っぽくなる人とか。私は夜っぽくなるのが特徴みたいなので、カッコよさの中にも切なさを出したくて。

-強さの奥に隠れた弱さを表現するような?

そうですね。広いステージの上で、遠くにいる誰かを探してるようなイメージで歌いました。後半に進むにつれて別のニュアンスを添えたりして、じっくり聴いたら変化を感じてもらえるように。

-リリース後、リスナーからの反応はいかがでしたか?

めちゃめちゃ良いですね。今回は気に入るまで作りこめて、やり切れた感覚があった分、すごく自信があったし、絶対カッコよくできたと思ってはいたんですけれど。私が歌わなくてもカッコいい曲なんだけど、せっかく曲をいただいたからには、私に歌ってもらって良かったと思ってほしかったので。

-そうしたら、その熱意がちゃんとリスナーにも届いたと。

はい。感動したって言ってくださった方もいましたし、配信まで来て「すごい良かったです」ってコメントをしてくれた初見さんもいて。感触はとても良かったです。


誰かに夢を見せられる存在に

-今後はどのような活動を予定していますか?

旗下さんと話してて、「Mirroring Stage」のようなカッコいい方向の曲はこれからもやっていこう、バラードを歌うにしても強さのある曲にしようということにはなっています。強がってる感じ、素直になれない感じとかを表現できれば。旗下さんは超激務なので、年に1、2曲出せたらいいなっていうレベルにはなっちゃうんですけれど。一旦、ストックの持ち曲があるので、そのMVを作りながら新作も進めていこうと思ってます。

-楽しみです。音楽活動を続けていく上で、目標や夢はありますか?

目標としてはやっぱり、せっかく音楽をやってるからにはアルバムを作りたいです。旗下さん以外とは正直活動するつもりなかったんですけれど、これからは他の方とも輪を広げて曲を増やしていこうかなと。

夢は……正直、もう既に幸せの夢の中にいるような感覚なんですよね。現実的に頑張ろうっていうよりは、自分にとって夢のようなことが起き続けていて。今回こうしてインタビューに声をかけていただいたのもそうですし、色んな人に聴いてもらえるとも思ってなかったので。だから、今の幸せを維持しつつ、リスナーさんを少しづつ増やしていければと思ってます。あとはやっぱり防音室が欲しいです(笑)。

-もうある種の夢は叶っているから、このまま続けていきたいと。

そうですね。現在進行形で、自分がこうしたいと思う前に予想を超えたことが起きてくれるっていう感じなので。自分の好きな作曲家さんに曲を書いてもらえるとも、VTuberの活動を1年以上続けられるとも思ってなかったし。自分で追いかけるよりも先に、みんながたくさんのものをくれるので、精一杯恩返ししたいっていう気持ちがあります。まずは見える先のゴールを決めて、ちょっとずつちょっとずつ前に進んで、何年も活動を続けていきたい。ささやかなんですけれどね。「ドームに行きたい!」とかじゃなくて、「生き残りたい!」っていう感じ。コツコツ続けていけば、目に留めてもらえることもありますから。それこそ失礼な話なんですけれど、sprayerのようなディストリビューターさんって、正直曲は機械判定がメインで直接確認していないと思ってたんですね(笑)。だから、こんな素敵な機会を与えてもらえて本当に嬉しかったです。

-そうして活動を続けていきたいと語ってくれることが、リスナーさんにとっても一番嬉しいことだと思いますよ。

本当に楽しく活動させていただいてますから。私がみんなに夢を見せてもらっている分、私も誰かに夢を見せられる存在でありたいと思います。私がその場に居なくても一緒に寄り添えるのが音楽や配信だと思うので、そうやってみんなにどんどん届けていけたらいいなと思ってます。

-では最後に、リスナーへのメッセージをお願いします。

私が私でいられるのはみんなのおかげなので、これからも一緒にいてほしいです!

Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:猫乃まんま

2023年デビューの個人VTuberとして活動中!
作曲家の旗下かけると共にアニソン風の曲を制作。
芯が強く、熱のある歌唱スタイルを得意としています。
▼X
https://x.com/NekonoManm8
▼YouTube
https://www.youtube.com/@Nekono_manma

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