バク 金沢発スーパーエンタメロックバンド「誰も嫌な思いをしない空間を作りたい」:sprayer Interview
8月17日、ロックバンド・バクがEP『レベッカ』をリリースした。2022年に結成された彼らは、地元金沢を拠点とし、ユーモアたっぷりの楽曲とライブパフォーマンスを武器に活動中。一時はメンバーが一真(Vo,Gt)のみとなるものの、今月から新メンバーに愛子(Ba)を迎え、新たなスタートを切っている。
そんなバクの特徴は、何よりも楽しさを最優先した「スーパーエンタメロックバンド」であること。ヴィジュアル系シーンに憧れバンド結成を決意したという一真は、どのように現在のスタイルに至ったのだろうか。初のツアー&ワンマンライブも控える彼に話を聞いた。
ヴィジュアル系シーンからの影響
-バンド結成の経緯を教えてください。
元々ガレージロックのバンドを組んでリードギターを弾いてたんですけど、そのバンドが解散しちゃったので、次は自分がフロントのバンドを組みたいと思って、2022年の5月ごろに結成しました。はじめはカッコいい路線のバンドをやろうとしたんですけど、ちょっとどっかで歯車が狂っちゃって……。今のコミック寄りな方向性になりましたね。
-歯車が狂った(笑)。それはなぜ?
当初はスーツを着てライブをやってたんですけど、ちょっと怖いかなと思って、親しみを込めるためにMCを少しコミカルにしようって話をしたんです。狂い始めたのは、馬のお面を被ってライブ出た時からですね。それから感覚がおかしくなって、どんどん変になって。
-バクというバンド名にはどのような由来が?
バクって、中国の神話に出てくる神獣で、人間の悪夢を食べてくれる存在なんです。なので僕らもそうありたい……っていうのは後付けで。本当は地元・金沢にvanvanV4っていうライブハウスがあって、その響きが良いよねって話だったんですけど、さすがに「バンバン」をそのまま使うのは良くないなと思って「バ」だけを取り、長い道のりをかけて「バク」に到達したんです。
-一真さん個人の音楽遍歴についても聞かせてください。最初にハマった音楽は?
小学生のころから、ゴールデンボンバー「女々しくて」を好き好んで聴いてました。でも、その時はまだそれがバンドだっていう認識はなくて。バンドに興味を持ち始めたのは、中2の時に狩野英孝がHydeの物真似をしてL'Arc-en-Ciel「flower」を歌ってる動画を見たから。面白さどうこうより曲が凄すぎて、何だこれと思って。その後、2012年の国立競技場での本家のライブ動画を観て、こんな音楽があるんだ!ってすごく感動したんです。それまで、音楽ってドラマや映画やアニメの副産物だと思ってたけど、全然違うんだって。
それから90年代の音楽をバーっと調べて、出会ったのがhide。「ピンクスパイダー」のサビを聴いた瞬間に電撃が走って、俺はバンドをしなくちゃいけない!と思いました。
-ヴィジュアル系バンドからの影響は大きいと思いますが、自分がプレイヤーとしてそのシーンに加わっていこうとは思わなかった?
純粋に無理っすね。ヴィジュアル系のやってることって、邦楽の中で極まったものの塊だと思うんです。ヴィジュアル系の中にも色んなジャンルがあるんですけど、総じて言えるのは、演奏力と歌唱力がズバ抜けてる。ちゃんとした世界観を持って、そこに完璧な技術と安定感があった上で成り立つジャンルなので。僕がやるものではなく、あくまで憧れですね。
-なるほど。それでもそのスタンスや楽曲のメロディなど、要所で影響は受けつつ。
そうですね。ライブでもメイクとかはしてます。
-同郷・金沢のアンジーモーテルや、神戸出身のセックスマシーン!!といったバンドにも影響を受けているそうですね。
アンジーモーテルに関しては好きすぎて……二組とも、尊敬する先輩です。
楽しさ最優先のスーパーエンタメロックバンド
-バクは「スーパーエンタメロックバンド」というキャッチコピーを掲げて、お客さんを楽しませることを最優先に活動しているそうですが、このポリシーにはどのように辿り着いたのでしょうか?
憂鬱なことや悩んでることがある時……たとえば失恋しちゃったとか、そういうときに失恋ソングを聴いて落ち着くっていう人もいると思うんですけど、僕としてはわざわざ辛いことを思い出す必要はないんじゃないかなと思ってて。むしろ、それを全部忘れさせるぐらい、僕らがおかしいことをやって、笑わせてあげるのも一つの音楽の在り方なんじゃないかと。
バンドって、お客さんたちがステージに対してイメージするものと、バンド側が出したい世界観が合わさることで成り立ってるエンターテインメントだと思う。コールアンドレスポンスとか手拍子もあるけど、楽しみ方は人それぞれなので、正解は作らず、それぞれの範囲でやってもらって。そういうライブを作りたいので、「スーパーエンタメロックバンド」を名乗ってます。
-お客さんを楽しませようという思いは、ライブを重ねることで大きくなっていった?
そうですね。正直な話、あんなうるさくて暗くて怖いところで、つまらない音楽やられても苦痛じゃないですか。「わざわざ金払って来てるのになんでこんなの見ないといけないんだ」とか思わせたらダメなんで。音楽的に共感できなくても、せめて笑わすぐらいのことはしたい。
-では、実際にお客さんを楽しませるために大切にしてること、心がけていることはありますか?
言葉遣いですかね。前まではステージ上で過激なことを言えばカッコいいと思ってたんです、おそらく黒夢の影響なんでしょうけど。でも、お客さんは僕がどういう人生を歩んできて、誰にムカついてるのかなんて知るわけないですから。それを楽しめっていうのはただの傲慢であって、エンタメではない。もちろんそういう姿勢がカッコいいバンドもいるんですけど……。
なので、僕らはあまり過激な言葉を使わず、誰かを傷付けるような笑いはしない。ゴールデンタイムのバラエティの言葉を使うようにしています。めちゃイケが好きだったんで。
-その日初めて見た人でも楽しめるようなライブをすると。その姿勢はやはりゴールデンボンバーからの影響が大きいんでしょうか。
デカいっす。あんなに化粧してホストみたいな髪して、でもやってることはポップで、めっちゃ親近感あるし、ギャップ萌えじゃないですか。人間らしい方々なんで。めちゃめちゃ影響受けてますね。
-これからバクの楽曲を知るリスナーに向けて、とりあえずこれを聴いてほしいという楽曲はありますか?
それはもう「ニャンニャンニャン」ですね。本当に歌詞が馬鹿で、意味が何もないので。それを、思考停止で頑張りたいっていう時とかに聴いてほしいですね。
-インパクト抜群でユーモラスな楽曲のアイデアはどのように思いつくのでしょうか?
人との会話ですかね。ちょっと恥ずいんですけど……「セッキョウ」は、僕が片思いしてた先輩がブラック企業で働いてて、夢に出てくるくらい怖かったって話を聞いて生まれました。僕は「大丈夫ですか?」「辛かったですね」くらいのことしか言えないんだけど、どうやって先輩を思う気持ちを伝えよう?と思った時に、俺はバンドマンなんだから曲に起こそうと思って。そんな風に友達や先輩との会話から曲が生まれることが多いです。
あとは単なる思い付きですね。「ニャンニャンニャン」「ワンワンワン」とかは、何も考えずに生まれたやつです。
新EP『レベッカ』リリース、そして初ワンマンへ
-8月4日には愛子さんが新たなベーシストとして加入しました。
愛子ちゃんの別のバンドでのライブを観たことがあったんですけど、MCで「最近彼氏と別れちゃったんですけど、その元カレがいま最前にいて、めちゃくちゃ気まずいです」って話してるのを聞いて、この子を絶対バクに入れないとダメだなと感じたんです。こんなに肝の据わってる子はいないし、ベースも磨けば光ると思って。
-メンバーが増えたことで、バンドが変化していく予感はありますか?
めちゃめちゃあるっすね。愛子ちゃんは高校生でやっぱり若いので、感性が僕とはちょっと違う。それもすごく刺激になるし、意見もハッキリ言ってくれるんで、めちゃめちゃ良い感じですね。
-8月17日にリリースされたEP『レベッカ』はどのような作品になっていますか?
グチャグチャな作品ですね。歌モノだったり、パンク調の曲だったり、ポップな曲だったり……作ってる最中、僕が不安定でブレブレだったのもあるんですけど、良く言うと聴いてて飽きない内容になってます。
-レコーディングのために、人生で初めて借金をしたんだとか。
どう計算してもちょっと資金が足りないっていう。バイト先のオーナーに貸してくれませんかって言って。僕はオーナーに返す意志を見せてるんですけど、「その話はまた今度で」ってずっとはぐらかされてます。
-hide with Spread Beaver『子 ギャル』をイメージしたジャケットをはじめ、ギターフレーズや歌詞にも様々なオマージュが含まれているそうですね。
バンドの仲間から、他の人に影響されやすいってことを常々お叱りいただくので、だったらいっそ思い切って作品に取り入れようということで、そういった内容になっています。もう開き直りですよね。色んな影響を受けまくって、でもバクだなってわかるような音楽をやりたいです。自分の中に持ってるものも育てつつ。
-9月からは『Moonlight Rebecca ひとりぼっち』ツアーを敢行し、10月26日のファイナルは『無謀と覚悟と幸運と呪われしレベッカ』と題して初のワンマンライブを開催します。このタイミングでワンマン開催を決意したきっかけは?
石川で、特に僕と同じ世代で、ワンマンをやれるバンドってあんまりいないので、それだけでもちょっとした功績として名を残せるんじゃないかと思って。それに、ワンマンをやると決めることで、バンドに対する姿勢も覚悟も全然変わるから。そこに向かう過程も含めて、成長に繋がるかなと。ある種の意地かもしれないけど。
-大きな目標を立てることで、自分に火を点けたかった?
そうですね、はい。
-改めて、ワンマンへの意気込みを教えてください。
1時間半も時間をいただくので、絶対飽きさせないようにしたい。視覚的にも面白いステージにしたい。花道も作る予定なので……楽しせたいですね。
-それでは最後に、バクというバンドの目標を教えてください。
将来的には、なかなかライブに来られないお客さんのためにも、ラジオとかバラエティとかに出て、離れているファンも触れられるような存在になりたい。ライブでは全員に目を配って、誰一人として「嫌だな」って感じさせないような空間にしたい。みんなを楽しませて、聴くと安心できるような音楽をやっていきたいです。
-ちなみに、sprayerのプロフィールには「ゴールデンボンバーさんと対バン」「2030年に武道館ワンマン」という目標が掲げられていますが。
ゴールデンボンバーさんとの対バンは絶対ですね。武道館も多分やると思います!
Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to)
Edit:sprayer note編集部
Profile:バク
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