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juJoe「勝ったりしたいし負けたりしたい」開き直ったロックバンドの素直さと手強さ:sprayer interview

2018年4月に解散したQOOLANDの平井拓郎(Vo/Gt)、菅ひであき(Ba)らによって結成されたロックバンド・juJoe。長らくスリーピースバンドとして活動を続けてきた彼らだったが、昨年12月に佐藤ユウスケ(Dr)が脱退。その直後に花澤彰則(Gt)、米谷優馬(Dr)を正式メンバーに迎えた4人体制への移行を発表し、新たなスタートを切った

その布陣で初めて放たれたシングル「玉砕 / 待っていた」には、ツインギターを存分に活かしたアンサンブルが痛快な2曲をパッケージ。サウンドのみならず、振り返れば滑稽にも思える過去・具体性を欠きながらも眩く光る未来を同一線上に配置し、その間に凛と立つ歌詞にも奥行きがあり意味深だ。

juJoeが佇む現在地からは、果たしてどのような景色が見えているのか? 現体制初のワンマンライブを目前に控えたフロントマン・平井に話を訊いた。


新体制は「音楽を伝えるよりバンドを伝えたい」

ー昨年12月、オリジナルメンバーでありバンド結成を持ちかけた張本人でもある佐藤ユウスケ(Dr)さんが脱退されました。当時の率直な心境はいかがでしたか?

寂しかったですけど、ポジティブな感情が半分以上を占めてましたね。理由もRhythmic Toy Worldへの正式加入というハッキリしたものだったので。来季からメジャーに挑戦する山本由伸投手の背中を押すオリックスの同僚のような気持ちです。

ー翌年1月には、それまでサポートで参加されていた花澤彰則(Gt)さん、米谷優馬(Dr)さんが正式加入し、4人体制となりました。

2人は、QOOLANDで活動していた時からの古い友人……その中でも音楽を続けている数少ない友人で。一緒に飲んだりしているうちにさらに仲良くなっていって、自然と「一緒にやればいいんじゃないか?」という流れになりました。友情に音楽が付随してきた形です。音楽性や機能的な面よりも、花澤と米谷が輪にいると楽しいよね、みたいな。

ー以前のインタビューでは、スリーピース体制で活動する理由について「制限のある音楽をやりたい」と語ってらっしゃいましたが、4人体制に移行するにあたって心境の変化はあったのでしょうか?

単純に、今までやっていたシンプルなロックをそのまま継承すると「佐藤ユウスケ擁するjuJoe」VS「米谷優馬擁するjuJoe」の勝負に負けてしまうと思ったんですよね。ドラマーが変わるってやっぱりめちゃくちゃ大きいことで、色々な差が出たりする。自分自身で「前の方が良かったな」って思ってしまいそうだったので、新しい道を探る方がポジティブだなと判断しました。昔は「自分のやりたい音楽はこれです!」って感じでやってたんですけど、今は一緒にいる人間を使ってどんな美味しいものを作れるかという発想が中心になってきてます。バンド名は同じだけど、違うバンドになったと言っていいですからね。

ーjuJoeはうつ病を抱えた平井さんのセラピー的な目的から始まったバンドでしたが、今はバンドのために平井さんが音楽を書いてるという。

そうですね。バンドに対する捉え方もだいぶ変わったと思います。

ー楽曲制作のプロセスにも変化がありましたか?

一番大きく変わったのは、家で音楽を作らなくなったことですね。バンドでリハーサルスタジオに入って、その3時間だけで曲を作るんですよ。ほとんどジャムで生まれたものだけを使って。

ー平井さんが書いた曲を持っていくわけではなく?

はい。カセットのMTRでデモを作ってた中学生の時よりもアナログな方法です。今は「音楽を伝えること」よりも「バンドを伝えること」の方がプライオリティが高いんで、「あのメロディーとこのメロディー、どっちが良いだろう?」みたいなことが些細になってきて。ベースとギターが全然違うコードを弾いてたことにレコーディングで初めて気付いたりすることもあるんで、そこは変えるんですけど(笑)

ーとなると、世に出ていない曲も多いのでしょうか?

相当ダサいものは世に出ていないです。バンドを15年ぐらいやってますけど、こんなに仲良くできてることって初めてなんですよ。普段から遊びに行くわけじゃないですけど、大人としてお互いが仲良くいるための行動をなるべく増やせてる。で、スタジオで出来た曲を否定するのもストレスがかかるから、基本肯定で進んでいく。その中で否定されるものは相当ダサいってことなので。


4人体制を押し出したシングル「玉砕 / 待っていた」

ーツインギターの4人体制であるということがサウンドやアレンジで押し出されているのが、9月にリリースされた最新シングル「玉砕 / 待っていた」だと思います。

リスナーに向けてというよりも、自分たちに向けて「僕が今やってるのはこういう音楽なんだぞ」って印象付けるイメージで作っていきましたね。その中で一つ生まれた特徴が、サビはみんなで歌うっていう。

ー「全曲似てても構わない」と話していたころから、さらに一歩進んだような印象もありますね。

全部似ててもいいとは思っているんですけど。4人になったことで幅広い選択肢があるのにそれをやらないのは、バンドがつまらなくなる可能性もあるので。つまらないのは良くないな、という。

ーELLEGARDEN、NUMBER GIRL、the band apartの影響を受けて制作されたということをハッキリと明言されています。

隠すとまずいかなと(笑)。楽曲的にはELLEGARDEN「Missing」、NUMBER GIRL「OMOIDE IN MY HEAD」、バンアパだと2ndアルバム『quake and brook』あたりに近いかな。しかも実は、「待っていた」のAメロはPUFFYの「愛のしるし」なんですよね。「勝てもしないけど負けもしない」と「やわなハートがしびれる」がほぼ一緒。途中で気付いたけど、引き返すことをやめました。

ー以前には「来世」でGreen Day「Wake Me Up When September Ends」をそのまま引用していましたよね。国内のギターロックバンドで、ここまで明け透けに参照元を示すバンドは珍しい気がします。

確かに、隠す人の方が多いと思います。ジャルジャルがそういうコントやってましたね、『ウルフルズに影響されている奴』(笑)。QOOLAND時代からMetallicaのリフを弾いたりしてたので、僕は抵抗がない方かもしれないです。事実だから隠す必要もないかなって。メンバーにも、「悲しい感じで」「もっとエモく」とかより、「エルレっぽく」って言った方がニュアンスを伝えやすいですし。


勝てそうな状態を保つこと≒勝ち

ーそれぞれの楽曲についてもお伺いさせてください。「玉砕」は、過去を振り返りながらもそれを受け入れて前に進んでいく意志が感じられる、痛快なキラーチューンに仕上がっています。

「昔ダメだった時期があったからこそ今がある」ということは4人とも思っていることなので、それをみんなで声を合わせて歌いたい、というアウトプットを目指しました。

ー過去の出来事や感情も、楽曲にすることで初めて昇華できたりしますしね。

そうですね。楽曲にしてみないとわからないし、それを人前で演奏してみないとわからなかったりする。ただ考えているのと、書いて世の中に出すのにはかなり差があると思います。実際、この曲を良いって言ってくれる声が今まで見たこともないような場所から上がってきていて、現在の4人の状況が肯定的に捉えられてるってことを実感してます。

ー「待っていた」は「玉砕」と打って変わってミドルなナンバーになっています。

スタジオで曲を作るときには速さやリズム、ビート感から決めるので、自然にバランスが整ったってことだと思います。

ーXで平井さんが言及している通り、QOOLAND「勝つまでは戦争」と対比されている部分もあって。

「勝つまでが戦争」を作ったころって、ライブを年間120本ぐらいやりながら常に新曲も出し続けるっていう、文字通りの戦争状態だったんですよね。でも、売れればこの大変な時期が終わると聞いていたんで、もうちょっと楽な状況に持っていきたいという気持ちで書いた曲で。

ー「勝つ」=商業的な成功、という意味でもあったんですね。

ですね。それから10年経って、今は年間120本やるのは難しい状態ですけど。それでも足並みを揃えて、バンドを売り出していくために一生懸命やりましょうねと言える4人が集まったと思います。

ー2曲を通してみても、「勝ち負け」「勝負」っていう言葉がキーになっていますよね。平井さんにとって、バンド活動をしていく中での「勝ち負け」に対する考え方に変化があったのでしょうか?

20代の時は「音楽だけで飯が食いたい」「事務所から毎月15万貰いたい」と思ってました。けど、いざそうなって生活レベルを上げたら月15万じゃ苦しくなって、売れたはずなのに売れてない状態に戻っちゃう、みたいなのが意味わかんないなとも思って。それよりも今は、「これを続けてたらなんか売れそう」の方が重要かなと。成功期待感のある状態、勝てそうな状態を保てているのが勝ちなのかなと思ってますね。

ー「勝つかもしれないし、負けるかもしれない」が、ずっと続いていくみたいな。

そうすればずっと、一定の勝算が何となく感じられるから。

ーいま現在は、「商業的に成功する=勝ち」とは考えていないのでしょうか?

難しいところですね。ワンマンやって一晩で50万稼いだらその夜は「勝ったな」と感じるでしょうけど、商業的に成功するってきっとそういうことではないので。リリースのスケジュールがちゃんとあって、関わってるすべての人にお金が回っていきながら内部留保できる……っていう状況がどうやったら作れるのか、昔よりもわかりづらい時代になっていると思います。

ー少し話が脱線しますが、ロックバンドに憧れて音楽を始めたミュージシャンって、「商業的に成功してる」ことよりも、「『商業的に成功してる』と多くの人に認められる」ことに重きを置いているケースが多いような気がします。たとえば、借りてきたビートとマイク一本で物凄い金額を稼ぐインディペンデントなラッパーもいるけど、バンドマンはそれと目指してるものが違う。

わかります。僕もどちらかと言えばガワを重視してる方ですね。ビジネスというより美意識でやってる。それに、バンドはメディアとしての影響力がデカいと思います。ロックバンドというだけで、本格的という皮を被れるじゃないですか。ワンマンで100人しか集められないバンドマンでも、親戚やいとこに「俺バンドやってるんだ」って言ったら、「なんか凄いぞ!」と思われる。juJoeとしても、影響力を大きくしていきたいというのが一つの目標になっていますね。


「人に喜んでもらえることが昔よりもすごく嬉しい」

ー4人体制となった今年1月からは、新宿SAMURAIでの12か月連続自主企画『とにかくモテたい。女じゃなく人間に』を開催してきました。その感触はいかがですか?

改めて、集客って死ぬほど難しい行為なんだなっていうのを実感しました。それと、バンドが育っていくことの面白さも感じましたね。いまさら爆裂に演奏力が上がるということはないんですけど、ただ音楽をやるだけではなくフロアを楽しませる姿勢が最近は見えてきたかなと。

ーそして、12月6日の『とにかくモテたい。女じゃなく人間に vol.12-Final-』は、4人体制初のワンマンライブとなります。「勝つまでが戦争」をはじめ、QOOLANDの楽曲も演奏するそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

映画『さよなら、バンドアパート』(平井が原作小説を執筆)でQOOLANDの楽曲がいくつか使われたことで、喜んでくれる人がいるっていうのは感じてたんです。ただ、やっぱり4人いないと演奏できない音楽ではあったので。この体制になって12か月経って、ようやく余裕が出来てきたという。

ー解散後にQOOLANDを知った人や、当時はライブに行けなかった人にパフォーマンスを届けたいという思いも?

ありますね。なんていうか、人に喜んでもらえることが昔よりもすごく嬉しく感じるんですよ。大人になって魚の美味さがわかってきたみたいな(笑)。やっぱり人間って、人との繋がりの中で幸せを感じるものだと思うんで。自己満足じゃいられなくなったと思うと、逆にビジネスライクになったのかもしれませんけど、今は自分たちにある需要を手繰っていきたいと思ってます。

ーQOOLANDを超えていきたい、という思いは変わっていませんか?

どうなったら超えたことになるのかは難しいところですけど、超えていかないといけないという意識は今もかなり強いです。QOOLANDの曲をやる上でも、この4人での演奏はメンバー全員で歌うんで歌唱だけで言えば超えてるかと思います。QOOLANDの曲って本来4人で歌うべき音楽だったんじゃないかって感じてます(笑)。これからもメンバー全員で歌った方が良い曲なんじゃないかと思える曲をセレクトして演奏していきたいです。

ーQOOLANDの楽曲を演奏することで、むしろjuJoeがそれより上に立っていることを示せると。

かもしれないですね。

ーここまでのお話や楽曲を聞いていて、juJoeや平井さんの「らしさ」って「開き直り」なんじゃないかなと思います。影響元を隠さなかったり、需要があるならQOOLANDの曲を演奏しようと決断できたり。

かなり当たっていると思います。アウトプットの質を吟味しすぎて量が腐ることの方を恐れているからかもしれないですね。とにかくやってみて、その中で刺さりが良いなってものをほじくる。

ーとなると、開き直りの姿勢が結果マーケティング的にも正しい方法になっていたり。

確かにA/Bテスト的な意味ではそうですね。ウケたから同じネタをもう一回やるみたいな感じですけど。開き直るのは大事だと思ってます。


エネルギーを宿した音楽に結果はついてくる

ー4人体制が板に付いてきた今、バンドとしての具体的な目標やビジョンについてはどうお考えですか?

ちょうど10年前、「勝つまでが戦争」で『RO69 JAPAN 2013』に優勝して『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』に出演することができたので、それに負けないくらいパワーのある曲を4人で作れたらなと。「勝つまでが戦争」はどこを切り取られても大丈夫なように作られてるドーピングしまくりの危険な匂いがする曲なんで(笑)、その飢餓感は今の4人と芸風が合いませんけど。違う形でエネルギーを宿した音楽を作れたら、それにふさわしいステージに辿り着くんじゃないかなと思ってますね。

ー健康的にバンドを続けていくことも意識しつつ。

もちろん、ベースにはその考えがあります。でも、やっぱり成功期待感がなくなったらただ遊んでる方が楽しいから辞めちゃうと思う。十数年やってて、さすがに今「スタジオって楽しいな!」とか新鮮に感じることはないけど(笑)、人生をかけてやってきた音楽が、外側の人に影響を与えたりするのは楽しいなって思える。健康的に続けるためにも、ある程度膨らみ続けないといけないですね。

ーでは最後に、リスナーに一言メッセージをお願いします。

12月6日のワンマンに来てくれることを、ひたすら切に願います。あと、いっぱい書いてるから僕のnoteを読んでください。

Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:juJoe

2018年結成。四人組ロックバンド。 結成直後に無料CDをタワーレコード渋谷店中心に配布。 一万枚以上を配布。 現在、新宿SAMURAIを中心に活動。 NUMBER GIRLとthe band apartに似ている。 ELLEGARDENみたいな曲もたまにやる。

Official site:https://jujoe.jp/
X(Twitter):https://twitter.com/juJoe_
Instagram:https://www.instagram.com/jujoe.info/
YouTube:https://www.youtube.com/@jujoe101

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