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SWAM Strings v3 のこと
SWAM弦v3、とうとうリリースされましたね!
アナウンスから大分待ちました。本当に長かった…。
さて、どこが変わったのか。
「公式デモを見ればわかる」ところは省き、ユーザ目線で書いていきます。
音色について
おそらく多くの方が気になっていて、購入の判断材料にしようとしているであろう音色。
結論から述べると、v2までにSWAMを触ってみて好きになれなかった方には「まだ」おすすめできかねます。
素の音色も確かに改善されています。中音域の響きの鈍さが軽減されただけでなく新たにEQやERも搭載され、空間に馴染ませやすくなりました。
しかし、革命的な進歩を期待していた方は肩透かしを食うかもしれません。
v3は、これまで以上に演奏用途のユーザへ向けたアップグレードだと感じています。
是非読んでいただきたい公式の投稿
https://vi-control.net/community/threads/audio-modeling-swam-solo-strings-v-3-0-available-from-march-2021.104549/page-14#post-4795709
即戦力の音源でないのはv2から変わらず、それでいてv2とは全く異なる楽器として考えた方が良いです。
音色以外でv2に物足りなさを感じている方にはアップグレードをおすすめします。動作も多少軽くなっています。ただし、「新製品」としてリリースされたばかりということもあり、いくつか不具合が認められますから、少し待っても良いかもしれません。
一部で、静かな盛り上がりを見せているカスタムIR。
楽器のモデル、すなわち鳴り方を変更し、オリジナルの楽器に仕立てることができます。私も最近それに凝っていて、Electric弦のための外部IRをいろいろ試しているところです。
誤解していただきたくないのですが、断じてオリジナルのIRが劣っている訳ではありません。それぞれに利点があります。
オリジナルのIRは、干渉をおこしにくいよう緻密に調整されています。
SWAMをどうやって演奏するか…選択肢はたくさんありますが、どの方法・どの音域でも安定したパフォーマンスを発揮できるようになっています。
調整不十分な外部IRを使用した場合、特定の音程で耳障りになる場合があります。
新しいピチカート
特にコントラバスの音色がかなり良くなりました。
モデルがまるごと新しくなったので、v2とは全く響き方が異なります。
でも、音色より大切なのが挙動の改善!
v3になってやっとPoly Pizzicatoが実装され、ピチカートで重音を鳴らせるようになりました…。
v2までは、一音目にSustain(CC64)をかけて延ばしつつ二音目を鳴らす…といった面倒な小技でしか鳴らせませんでした。
待望の倍音補正機能
ついに!実装されました!
Pianoteqのように、特定の倍音を強調したり抑えたりできるようになりました。
企画段階では、3つの倍音までの指定が可能だったはずですが…2つまでになっていますね。あまり多くを一度に弄りすぎると元の音色が破綻するので、敢えて数を抑えたのかもしれません。
これまでは、Nectar3 Plusを使用したりEQのイベントを組むなど、外からの処理が必要でした。
一瞬だけ擦弦音を際立たせたり、鼻にかかったような面白みのない音に艶を与えるのに役立ちます。
どこでもフラジオレット
Harmonics 4 Controlの実装により、フラジオレット奏法の自由度が増えました。何等分(1.00~5.00)するか設定でき、第五倍音まで出せるようです。
v2とは異なり、微妙な上擦りを表現できるのはもちろんですが…第一倍音(!)、すなわち基音を選択できるのがポイントです。
アクセントとして、一瞬だけ基音のフラジオレット奏法(?)を取り入れることで…???
一本の仮想弦
通常の4弦Real(Alternate Fingering)に加え、特殊な1弦Virtual Adaptive Bowing Resizing(MONO)モードを選択可能です。
「最低音から最高音までのポルタメントを一本の弦で行えます。」…とのことですが、実はReal(Alternate Fingering)でも、似たような同一弦でのポルタメント自体は可能です。
Virtual Adaptive Bowing Resizing(MONO)では、ピッチベンドのみで通常弦よりも高い音へ到達できます。
v2でも、ノートで段階的に細かくポルタメントを組み、ピッチベンドを駆使すれば可能です。
SWAMは弦のチューニングや指位置によって挙動が変わります。このモードも例にもれず独特の挙動をしますが、高音域になればなるほど掠れる性質は同じです。
ただし、同一弦で出せる最高音はVirtual Adaptive Bowing Resizing(MONO)の方が高いため、極端な高音域では仮想弦の方がよく響きます。
レガートの選択
今バージョンからAdvanced Legatoが実装されました。
特に相性の良い奏法はトレモロ(和音・バッテリー)。跳躍が大きいレガートの終点間際に、わずかなもたつきを与えられます。
OFFにすると機敏なレガートになります。
その場合、ピッチベンドと併用するとより効果的です。
ようこそSustain
これまでCC64(デフォルト)でしか制御できなかったSustainが、v3でとうとうプラグイン固有パラメータの仲間入りをしました。(そしてPortament Controlも)
鳴りっぱなしになってしまう挙動も、少しだけ改善されました。(0の値をすぐ認識するようになったようです)
そしてSWAM弦に必須の運弓指定!
Manual Bowing: Sustain+Noteとして、v2までのBow Change(運弓方向)に加え、Tremoloを選択可能になりました。
キースイッチにもBow Change/Tremoloのいずれかを割り当てられるので、好みに合わせて使い分けると良いかなと。
自由度の高いマッピング
主にウィンドシンセサイザやブレスコントローラを使用している方に向けた機能です。(私はDAWやモーションコントローラでマッピングするので使わないのですが…)
MIDI 2.0に向け、着実に準備が整っているようです。
値だけでなく感度グラフをプリセットとして保存できるため、楽器の持ち替えをスムーズに行えるようになりました。
CamelotやDivisimateなど、ライブ用のソフトウェアとの親和性も高いです。
豊富なプリセット
特筆すべきはμチューニングのプリセットです。
実用性はあまりありませんが、中東系の音律が多く収録されていて楽しい。手軽に異国の風を感じさせてくれます。
SWAMのパラメータは常に変化させてこそ!ですから、音色やコントローラ向けのプリセットはあくまで参考程度にしかなりませんが、スターターキットとして考えるには良さそうです。
パラメータの拡張
Bow Positionで選べる幅がちょっとだけ広くなりました。
v2: 0.05~0.15
v3: 0.040~0.160
特性を変え、圧力やノイズによる効果を更に強められます。
Bow PressureではFlautando, Scratchの詳細がGUIに表示されるようになり、極端な値を扱う際に便利になりました。
Vibrato Depthは数値の表記が変更されましたが、v2と比較してみて最大振幅に変化があるわけではなさそうです。
なくなったパラメータ
v2でよく使っていたパラメータのなかには廃止されたものがあります。
Sustain Ramp
Brightness
Expression Curve
Sustain Ramp…マイナーな機能ですが、v2ではSustainで延ばした音のリリースをどうするか選択できていました。
リリースにアクセントをつけるか、スッと消え入るフェードアウトにするか…どちらかというと管タイプのコントローラ向けにある機能でした。
細かい調整ができる訳ではありませんでしたが、不便に感じるユーザもいるかもしれません。
BrightnessについてはTimbral CorrectionやEQといった上位互換が搭載されたので問題ありませんが、Expression Curveがなくなったのは地味に痛い…。
Expression Curveは第二のExpressionとして、既につけた表現はそのままに、より表情豊かにするのに役立っていました。
Gesture Mode: Bowingのみ、新機能のBowing Sensitivityで同じように補正できますが、Gesture Mode: Expression, Bipolarではこれまで以上に丁寧にグラフを描く必要がありそうです。
それから…機能そのものがなくなったわけではないのですが、金管同様、メインGUiからVibrato Rateの表示がなくなりました。
Expressivityタブに変更すればいいだけなので、特段に不自由はしませんが、できれば残してもらえたら嬉しかったかな…と。
まとめ
〇 奏者向けの正統派アップグレード
〇 痒くない所にも手が届くようになった
〇 ポテンシャルに満ちている
〇 動作が軽くなった
△ 音色の改善
△ 新しいデザイン
△ 不具合の有無
× 革命的な物理モデリング音源かどうか
× 既存ユーザが買ってすぐ使いこなせるかどうか
おしまい。
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