
ハナニアラシノタトヘモアルゾ




不思議とストロボに縁がある人
春は門出の季節です。
井伏鱒二による、唐代の詩人于武陵(うぶりょう)の詩『勧酒』の和訳で「サヨナラダケガ人生ダ」と詠んでおりますが、そこでは「ハナニアラシノタトヘモアルゾ」と、門出のあとの厳しさが織り込まれています。
何度か撮って、顔を覚えてもらって、気心知れて、サアこれから良い画が撮れるかなと思っていた卯月れなさんが、撮影会から卒業するとのことで、最後に撮らせていただきました。
不思議とストロボとの縁が深い人でした。
最初は江ノ島での夕景、疑似夜景というストロボ技で夕焼け空の色を濃くした撮影からストロボとの御縁が始まりました。
おつぎはスタジオで、バシッと強めにストロボを当てて撮った顔アップをモノクロの表紙画に採用したのがコチラです。
正月の和装での撮影は日昼の自然光で撮って、ストロボの出番はなかったけれど、今回の撮影では真っ昼間の屋外でストロボを使って撮りました。
土手の寒桜は一輪も咲いておらず、川原の菜の花も蕾のままで、なんとか背景になりそうなのは青空と、武蔵小杉のビル群くらいでした。河川敷から武蔵小杉の方向は逆光になります。そこで、人物にストロボを強く当てて、背景の白飛びを防ぎ、空を青くしたのでした。
不思議とストロボに縁が深い被写体さんでしたねぇ。また、何かで御縁があるかもしれませんが、これにてラストの撮影でした。
花發多風雨
于武陵は『勧酒』で「花ひらいて風雨多し」と表現しておりますが、春に花が咲き始める時季は、強風が吹き荒れたり、雨が降ったり、とかく天候が不安定になりがちです。この春から新しい道へ進んでいく人たちにとって、良い旅立ちが出来ますよう、陰ながらお祈り申し上げます。