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古色を出すための研究 その1
遠い過去の場面を演出したい
現在、制作中のフォトストーリー仮題『スクエア』で、1972年と設定した場面があります。それは非常に重要なシーンなので、中判フイルムカメラで撮影しました。
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実際には2022年5月撮影ですが、設定上は1972年7月頃に撮影されたものと位置づけております。ストーリーに重大な影響を与える場面なので、贅沢にハッセルブラッド500C/Mにポジフイルムを詰めて撮影しております。
ピースなんて1972年にあったのか?
あったのです。井上順さん出演のカメラのテレビCMで「ピース」と言いながら指を二本立てて、それが起源だったと記憶しています。カメラを向けられた誰もがピースをするようになるのは、もうチョットあとのことですがテレビっ子たちは1972年頃、もうピースしてました。
いや、肝心なのは「古色」です。
この写真は、半世紀を経たのちに発見される設定なのですが、アルバムに挟んである古いプリントは、ずいぶんと良い状態で残ります。我が家にあるアルバムでも、50年以上前の写真が良い状態を保っています。なので、褪色させるような余計な加工はしないで、レンズのボケ味などから滲み出ている古色を活かそうと思っています。
デジタルで中判フイルムの味わいを出したい
ストーリーのうえで1972年の場面は、ひとつきりです。現代に伝えられた中判カメラのハッセルブラッド500C/Mを用いて、昭和の名残を撮り歩いて行こうという話の流れになるのですが、その全場面をハッセルで撮ることは予算的に無理ですし、また、フイルムの入手も容易ではありません。いまや中判用フイルムの欠品入荷待ちは日常茶飯事なのです。それゆえデジタルで中判の味わいを出そうと、さまざまに工夫しているところです。
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たとえば、こんな感じにです。旧東独製の古いレンズをPENTAX K-1に装着して撮りました。ちゃんと昔風のボケ方をしていますが、現代の撮影という設定なので色味は鮮やかにします。
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オールドレンズは逆光に弱いという「お約束」があるので、少しフレアを起こさせます。
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味付けが足りないかと思って、もう少しフレアを入れました。
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中判の被写界深度は、たぶんコレくらいです。
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中判の標準レンズだと、そんなに寄れません。せいぜいコレくらいだろうと思われます。
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ただ、イメージとしては、コレくらいピントが薄いのがわかる写真を一枚入れておきたいと思います。やはりボケ方が現代のレンズとは違いますし、そこに古色が滲み出るかなぁ、とボンヤリ思っています。
ヒロイン役、たかはしまいさんは、もうあと二回ほどの撮影で素材が揃う手筈です。昨春から、およそ一年がかりで、春夏秋冬の季節感を盛り込んだフォトストーリーになります。完結を御期待ください。