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こんなに外れてるのは、阿南だけ

 那賀町や美波町の救急車は、長生町を走っているのを知っていますか?

 阿南市沿岸部(富岡、見能林など)には、阿南バイパス(阿南道路)があります。
 阿南沿岸部の人は、県南部や阿南内陸部の人が、徳島市などの県北部に行くとき、阿南バイパスをつかって、自分たち沿岸部を通過しているはずだ、と思っている人が少なくないと思います。

 そのため、阿南市や県南部で、商業施設や行政を集約する中心都市をつくるなら、阿南市沿岸部の富岡が妥当だと思い込んでいる人は多いでしょう。

 ですが、本当にそうでしょうか?

出典:国土交通省 四国地方整備局 徳島河川国道事務所ホームページ(https://www.skr.mlit.go.jp/tokushima/road/e/awa/pop5/pop05.html
出典:『阿波の交通 上』


 阿南以外の徳島の市町村は、現代でも、ほぼこのままの形の道路が主要交通ルートとして通用しています。

 徳島自動車道は吉野川北岸の旧街道に沿って走っています。JR徳島線や国道192号線は、吉野川南岸の旧街道に沿って形成されています。
 高松自動車道やJR高徳線も旧街道に沿って作られています。

 また阿南以外の、旧街道が通っている市町村では、いまでもほぼ全部が、やはり旧街道沿いに、市町村役場や中心市街地が所在しています。

 時代は移り変わりましたが、旧街道は大きい意味があるのです。

出典:国土交通省 四国地方整備局 徳島河川国道事務所ホームページ(https://www.skr.mlit.go.jp/tokushima/road/e/awa/pop5/kaido05.html

 阿南では旧街道の土佐街道が通っていますが、それは次のルートです。

 小松島→羽ノ浦→南島→長生→桑野→新野→福井→日和佐

 これは、ほぼ現在の県道24号・羽ノ浦福井線となっています。この旧街道は、富岡を通っていません。阿南市だけ、ほかの市町村と比べて、かなり外れている土地に中心地があるのが現実です。阿南市は、定石からは外れた土地を開発してきたのは明白です。

 阿南市って、徳島県の交通的には、かなり異質な状態にあるのです。

江戸時代の街道コース

 海部郡や那賀郡などの県南部は、阿南市を通過するときは、いまでもこの土佐街道ルートを通るのが普通です。

 県外や県北部などの、阿南市や県南部に無知だったり、阿南市や県南部に縁の薄い人は、漠然としたイメージで、一見して主要そうであり、大きい道路だからと、阿南バイパスを走るのが妥当だろう、と考えてしまう人もいるでしょう。

 ですが、肝心の県南部の人たちは、阿南バイパスは使わないのが現実なのです。阿南バイパスは、阿南市沿岸部のための性格の強い道路なのです。
 阿南バイパスは、県南部の全般的には、何の役にも立っていません。これが現実です。

 鉄道の地位低下、そしてこれから長生町に高速道路ができると、県南部にとって阿南バイパスや阿南市沿岸地区は、県内移動においては、なおさら不要な存在になります。

 かりに阿南バイパスも長生町に通していれば、時短効果はさらに大きくできたはずであり、県南部は、今の形よりも歓迎していたことは間違いありません。

 ですから、富岡を中心と位置づけて、交通拠点や商業施設や行政機関を集約するさまざまな動きは、県南部や阿南内陸部にとっては、迷惑なのです。

江戸時代の休憩拠点「駅路寺」があった場所
江戸時代の交通標識「一里松」があった場所
江戸時代の交通拠点「駅路寺」の紹介。
県南の土佐街道では桑野町「梅谷寺」のほかは、打越寺(美波町)、円頓寺(宍喰)の3カ所だ。
出典:国土交通省 四国地方整備局 徳島河川国道事務所ホームページ(https://www.skr.mlit.go.jp/tokushima/jimusyo/jigyou/douro/douro-b07.html

 富岡を中心とみなすことは、阿南市全体や県南部の幸せにつながりません。富岡に交通拠点、阿南市全体や県南部全体のターミナル機能、ハブ機能を維持する必要って、本当にあるでしょうか?

 富岡を中心とみなすことを取りやめ、定石通りに旧街道沿いの町々を開発するように頭を転換しないと、阿南市の全体の地区や県南部の健やかでまともな成長は、ありえないと筆者は考えます。

 この市の規定方針の、富岡重視や沿岸部重視の動機は、富岡勢の自己中心的な願望が先行しており、県南部全域のための人流を最優先に考えた上の判断では無いからです。

 富岡に中心都市があることを、当たり前のことだと思ってはいけません。


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