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【川崎フロンターレ】個人プレビュー / 全選手 徹底解剖❷【MF&FW編】


はじめに

 はじめまして!「Spot@Jサポ」と申します。

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『川崎フロンターレ どこよりも詳しいシーズンプレビュー』に続き、各選手のごとの「起用ポジションマップ」「論評」を全選手分まとめた『個人プレビュー・全選手徹底解剖』を書いていきます。

 前編・後編の2部構成、今回はMF&FWを特集する後編となります。

 前編となるDF&GK編はこちらからどうぞ↓


 参照となるプロフィールについても簡単に記載し、本編に移りたいと思います。

筆者の略歴

●選手歴
 -15年、引退済

●指導歴
 -かじった程度ですが数年間
 -有難いことに、S級所有でJ監督経験のある「ゾーンディフェンス」への理解の深い某指導者のアシスタントを経験しました

●川崎フロンターレに関して
 -昨シーズンの全試合をウォッチ
 -今季は沖縄キャンプにてTMを2試合観戦



それでは以下、本編です!


【ボランチ・トップ下】

MF 6 山本 悠樹

 昨冬にガンバ大阪から加入後、ACLでいきなり出場機会を得るなど、他クラブからの加入組がなかなかポジションを得られなかった川崎の中盤において1年目から存在感発揮した。パスセンスの高さ、セットプレーの質などに注目が集まりがちだが、特筆したいのはゲームメイクにおける「戦術的貢献」の部分だ。相手の守備のシステム、ボールへの人の出方を伺いながら、自身のポジションを変え、相手を引きつけるためにゆったりとボールを運んだと思えば、別のシーンではダイレクトで展開も行う。川崎の中盤で、「最も守りづらい選手」の1人だろう。中盤でタクトを振るい、ゲーム全体をコントロールし、味方が活躍するための貯金を作れる選手だ。
 守備においては、昨季は強みと弱みの両面が見て取れた。強みとしては、構えて守る時のポジション取りの巧みさ。弱みとしては、フィルター役としては手足のリーチがないこと、潰し役としてはフィジカル的に劣勢で入れ替わられるシーンが多いこと。課題の部分は、長谷部監督下で組織的なゾーンディフェンスが機能していけば隠れていくはずで、むしろ強みが生きるタイプの賢さを持った選手だろう。相方として組む選手には、守備範囲が広くボールハンターにもなれる橘田や河原をチョイスする必要が出てくる。5バックに可変する3バックを敷いてくるチームが多い今シーズン、彼のゲームメイクが鍵になってくるだろう。


MF 10 大島 僚太

 一見すると華奢でハンサムな好青年だが、一度ピッチに立つと「キング」という異名に違和感を感じさせないオーラを放つ。ターンに時間とスペースを要さないという理解不能なほどのボールスキルを持ち、長短のパスでゲームメイクとチャンスメイクを両立できる。守備においては山本への評価と近いものがあり、「巧さ」はあるが「逞しさ」に欠けるため、他の選手のカバーを要する側面が強い。特に、負傷のリスクを抱えてか、鬼木前監督時には攻撃の組み立て役としての起用しつつ、守備では無理をさせない方針が見えたために、システム全体としては歪みが生まれる試合も少なくない。その意味で、昨年の大島は硬直したチームの攻撃構築を変えるための「劇薬」的な存在だったと言って良いだろう。
 長谷部監督のゾーンディフェンスにおいて、個人にかかる守備負担はマシになり、より組織的な働きでゴールを守ることになるため、大島にとっては好材料か。いずれにせよ、「魔法」とも言えるゲーム&チャンスメイクと、システム全体に与える影響との差し引き次第、収支計算次第の起用ということになりそうだ。対戦相手やコンディションにもよるだろう。今年はシーズンを通して活躍する大島を、1ファンとして見たいと願う。


MF 8 橘田 健人

 昨季はSBでのプレー機会もあり、様々な役割の中で大きな怪我なくチームの柱として稼働した。川崎水準の止める・蹴るの技術をベースに、誰よりも「動ける」という強みを攻守に活かすプレースタイルだ。視野を上げながらボールを運べる、ビルドアップにおいてもCBからボールを引き取ってワンタッチでのプレス回避やターンしての展開もできるなど、攻撃のスタートの局面においても卒なくプレーできる。しかし何より持ち味と言えるのは、守備における能力の高さ。インターセプトの数やルーズなボールを潰しに行く鋭さのある守備には目を見張るものがある。
 一方で、一昨年のシーズンあたりから、強みが明確になった故の空回りにも悩まされた感覚がある。鋭くボールや相手を捕まえに行ける反面、目測を見誤り入れ替わられるシーンが少しずつ目立っていた。昨季途中からは改善傾向で本来の持ち味が戻ってきた。別の課題としては被カウンター時の対応の拙さが挙げられる。出ていく守備は得意だが、受ける形での守備には改善の余地がある。この辺りは、長谷部監督がうまくアプローチをして、組織と個人の両面で判断基準を整理してほしい。高いポテンシャルをさらに洗練させ、夏のE-1選手権で、日本代表に選ばれてほしい選手の1人だ。


MF 19 河原 創

 潰し役にも、展開役にもなれる万能型のMFだ。キック精度が高く、鋭いボールで展開やクロスを上げられる選手であり、ピッチを広く捉えて、相手の配置を見ながらボールを大きく、あるいは素早く展開できる。川崎の選手は、風間体制の影響からか近い距離感でのパス交換でリズムを作る傾向にありがちだが、河原は良い意味で独特で、味方だけでなくスペースや相手をきちんと見て、時には大きくボールを動かせる。
 守備においては、J1屈指の走力と球際のぶつかり合いを厭わない献身性で、中盤の守備強度を高めてくれる存在。長谷部監督の下ではその特徴がより活きてくるかもしれない。課題としては周辺の選手との連携面。パス回しの中に卒なく入っていくことはできるが、周りの選手とタイミングが合わない場面も少なくない昨シーズンだった。シーズン途中からの加入ゆえの問題だとは思うため、加入2年目かつシーズン頭から戦う今年は、河原の本来の凄みをより感じられれば嬉しい。


MF 14 脇坂 泰斗


 ボールコントロールと身のこなし、長短のキックの正確さ・鋭さが強み。ファンからもちろんのこと、特に同業者からの支持が厚く、敵味方ともにプレーした選手はその技術に舌を巻く、「川崎で最も巧い選手」と言えるだろう。
 しかしながら昨季は脇坂の持っているものを考えると、期待通りのパフォーマンスを見せられなかったシーズンに。キックの調子が安定せず、トップ下のポジションでは決定的な仕事をコンスタントにすることはできなかった。守備において精彩を欠く場面も多くはないが見られた。アシストやゴールをきちんと記録している選手ではあるが、彼の実力と背負っている背番号を考慮すると、より一層の活躍と存在感を期待したい。
 一方で、今期求められるのは攻守における繋ぎ役、旗振り役としての役割だろう。守備では4-4-2における「2」に入って前線からの守備を担う形がメインに想定されつつ、ボランチの位置での起用時はひとつ低いラインでの守備となる。いずれにせよゾーンディフェンスの中核となるポジションとなるので、長谷部スタイルを深く理解し浸透を進める働きを期待したい。また、ゾーンディフェンスにおいては『シーズンプレビュー』でも書いた通り、「奪った直後のスモールスペースの攻略」が肝となる。脇坂のスキル、ポジションを考慮すると、攻守の繋ぎ役として唯一無二の存在となる未来も想像できる。長谷部フロンターレ躍進の鍵であり、このクラブの「看板」である選手。夏のE-1選手権での代表選出を当然のものとするような、高いパフォーマンスを開幕から期待したい。


FW 24 宮城 天

 三笘薫と入れ替わるような形でフィーチャーされた生え抜きアタッカーにとって、今季は勝負の一年。中央へポジションを移してのキャンプインとなり、新たな可能性を見せている。
 怪我からのスタートとなった昨年は、怪我を経てなのか推進力に陰りが見られ、単純に出遅れたことも重なり出場機会を得られず。左WGとして勝負できていた数年前に比べ、縦への勝負を仕掛けるだけの自信なのか、コンディションなのかを失っているようだった。しかし技術の高さ、パワフルなシュート、意外性のあるフィニッシュは健在。元々、彼の強みは「全ての能力が高い」ことだ。ドリブルに限らず、ワンタッチ・ツータッチのプレーが正確で、柔らかいファーストタッチやダイレクトでミートするキックにも特徴がある。狭いスペースで受けて反転することも得意なので中央での適性はあるし、ユース時代はセンターポジションを軸とするアタッカーとして活躍している。何よりシュートの機会も増えるだろう。
 コンディションを維持し、出場機会を得られればコンスタントにゴールやアシストの結果が期待できる。課題となるのは守備面での貢献。脱力感を保ちながらプレーできるのが宮城の良さだが、規律正しくポジションを取り、タイトにボールへプレッシャーをかけることが求められる今季、守備でも高い貢献ができればプレータイムは自ずと高まるだろう。


MF 16 大関 友翔

 昨季J3ベストイレブンに輝いた才能溢れる期待のMF。トラップ、ターン、ドリブル、パス、シュートといった、ボールを扱ってのプレーはどこを切り取っても巧い。軽やかなステップ、身のこなしも特徴で、狭いスペースで相手に囲まれていも高い技術で難なく前に進める選手。
 その中でも個人的に注目しているのは、空間を使った多彩なパスの巧みさだ。エリアの外で相手を動かすパス回しをしていると思えば、意表を突くタイミングで浮き玉のパスや回転をかけたパスで決定機を生み出せる。「大島や中村憲剛から小林悠に送られる浮き玉のラストパス」をイメージしてもらうと適切で、彼らのようなパスを操れる才能の持ち主だ。世代別代表で10番を背負うに相応しいポテンシャルを感じさせる。プレー時間を得て、J1の強度になれることができればブレイクは遠くない。それだけに、守備面で長谷部監督の信頼を得られるかどうかと、攻撃面でのパフォーマンスの安定が鍵を握る。川崎のニュースター候補だ。


【サイドハーフ】

FW 17 伊藤 達哉

 小柄ながら、高いドリブル技術とトップスピードの速さを武器としてドイツで活躍してきたサイドアタッカー。「とにかく仕掛ける」印象を持たれがちだが、スピードを落としてプレーすることも可能で、攻撃の局面においてはスピードを使い分けられる印象がある。そのため、ドリブルでの仕掛け、クロスだけでなく、崩しの一歩手前の局面でのパスワークにも難なく入っていける選手と言える。スペースへのランニングからチャンスを作ることもできるため、長谷部監督が重宝することが予想される。評価次第では、左WGがベストポジションというのは前提としつつも、マルシーニョが左を取る時は右サイドで起用する機会があると思う。左の方がスムーズにプレーできるだろうし、それは監督も織り込み済みだろうが、それでも右でプレーさせるのであればそれは期待の表れ。シーズンの中でマルシーニョ、家長を含めた中での最適解を探りたい。
 守備においても、快速を生かして相手のサイドバック、サイドハーフに距離を詰めることは期待できる。『シーズンプレビュー』を参照してほしいが、サイドハーフの守備が重要なゾーンディフェンスにおいて、守備でも役割を持ち得る選手だ。この辺りは試合を数試合見て、守備での貢献を確かめたいところ。
 課題と言えるのはフィニッシュワークだろう。逆サイドからのクロスをWGが合わせる形での得点パターンは定石だが、ワイドで張った位置でのプレーを好むため、どこまでエリアに入っての仕事を期待できるかは未知数だ。マルシーニョと合わせて年間15ゴールを取れれば、川崎の上位進出に大きな望みがありそうだ。


FW 23 マルシーニョ

 言わずと知れた川崎の攻撃の要。爆発的なスピードとアジリティで縦勝負のドリブルを仕掛けたと思えば、昨季はカットインからのシュートや内側でクロスへ飛び込むなど、ウインガーとして求めたい仕事の幅を一層広げた印象だ。オフザボールに置いても、幅をとったところから背後へのランニング一本でチャンスを作れるため、相手の守備陣形に与える影響の大きいアクションで、チームの攻撃に大きなプラスαをもたらせる。
 課題は明確で、フィニッシュが近づいたシーンでのプレー判断と精度、及び守備時の出力の調整だ。カウンターで数的有利な場面でゴールに迫った際の、味方を使うのか自らシュートまで行くのかの判断や、フリーでのGK1対1のシーンでのプレー判断には少しムラがあり、この部分がより洗練されればシーズン2桁は堅い選手に進化し得る。また、昨季は3度の1発退場を受けるなど、アプローチをかけるタイミングと判断を誤り、さらには自らのスピードのコントロールができずに危険なチャージを繰り返してしまった。
 一方で、個人的には守備面は楽観的で、長谷部監督の下で守備での重要な役割を担うのではないかと考える。何より、スプリントスピードが速いので鍵となる「サイドハーフのプレッシャー」において相当な圧力をかけれる上、根は真面目な選手であるのか、監督交代のブーストなのかより勤勉さを増した印象を実際に見て感じた。タスクが整理されてくれば、キャンプでも試されていた右サイドでのプレーも板についてくるだろうし、今季は進化したマルシーニョが見れるかもしれない。


MF 41 家長 昭博

 今年で39歳を迎える家長だが、その価値はいまだに唯一無二なものだ。年齢的にも本人の気性的にも、守備負担を多くはかけられないため、守備での貢献の少なさを理由にサポーターから槍玉に上げられることも少なくなかった昨シーズン。個人的には「言うほどサボっておらず、貢献度は他の選手とそう変わらない」と感じている。また、「球離れが悪い選手=悪」「プレースピードが速い方が良い」というような固定観念から、いまいち家長のプレーの良さ・価値を理解されていない側面もある。守備を重んじる長谷部スタイルの中で、どのような評価を受けるか未知数な部分はあれど、チームの攻撃に与える戦術的貢献度は他の選手にはなかなか真似できないもので、オンリーワンな選手だ。圧巻のキープから味方の攻め上がりを促したと思えば、相手と正対する形でボールを持って敵の動きを「ロック」して味方が使えるスペースを生み出す。育成年代において「球離れ!」「プレースピード!」と指導されがちな日本サッカーでは中々生まれにくい選手であり、稀有な才能の持ち主だ。
 課題は先述の通り「守備のタスクをどこまで免除し、どこまでやらせるのか」すなわち「守備システムの中にどう組み込むのか」であろう。また、得点に絡むプレーも全盛期に比べると減った印象もあるため、攻撃における貢献も目に見えたものとして表したい。キャリアの晩年と言える今、どうしても「攻守で採算がプラスになるか」を考慮した起用や、プレー時間のコントロールを考え始める選手にはなってくるが、鉄人とも言える38歳は我々の心配を易々と乗り越えてくるかもしれない。


MF 26 山内 日向汰

 相手の重心を砕くような大胆かつしなやかなドリブルが魅力だ。対峙するDFに簡単に奪われるシーンが少なく、脅威になれる選手の1人だが、自らの強みをいまいち活かしきれず、インパクトを残しきれていない昨シーズンとなった。
 ドリブルは得意なものの、目の前の選手を見てプレーしている側面も見られ、ドリブルで1人かわした後のプレー選択が悪かったり、自らのドリブルによってフリーになった選手を使うタイミングが遅かったりと、判断のエラーによって得点やアシストといった結果に結びつかないシーンが目立った。また、マルシーニョが得意とするような背後へのランニングや大外でのアクションによる戦術的貢献は得意としていないため、マルシーニョに変えて投入した際、戦術的に攻め方を調整する必要が出てきてしまうことも、プレータイムが短くなった要因の一つだろう。周りのサポートの問題もあるので、彼の良さを「どのポジションで」「どのように活かすのか」をチームとして取り組むことができれば、活躍の期待はより大きくなる。大学時代までは中盤中央の選手として活躍してきた選手ではあるが、プロとして激しい競争を強いられる以上、プレー機会を得られる場所でまずは結果を残したい。


MF 18 瀬川 祐輔

 身体能力が高く、攻守において無理が効く選手であるため、鬼木政権では便利屋的な扱いが多かった。サイドでも中央でもプレーが可能で、フィニッシュワークの多彩さが魅力の選手。頭でも左右両足でも、器用にゴールが狙える選手というのが本来の瀬川の特徴だろう。
 前線で起用された際には、走力を活かしたランニングを繰り返して攻守両面への貢献ができるので、昨年には、プレッシングの整理とツートップのシャドー的振る舞いを期待してFWとして起用される試合もあった。ポリバレントにどのポジションにも置けて、置いた場所がどこであっても強度高くプレーできるので、今季も起用ポジションは幅広くなるだろうし、予想はやや難しい。右サイドハーフでの起用となると、本職の選手が少ない上、瀬川自身もプレッシングを通じてゾーンディフェンス全体に効果を発揮できるので、特徴が出やすいかもしれない。他の選手のパフォーマンス次第だが、シャドー的な振る舞いのできるポジションにおいてプレッシングの起点役を担わせることもあるだろう。本人としてはレギュラー確保を目指したいところなので、長谷部監督のスタイルの中でどのような役割を担っていくのかをピッチで表現して、欠かせない役割を担いたい。


MF 28 パトリッキ ヴェロン

 若手ブラジリアンアタッカー。現状は育成枠の域を出ないが、試合でプレーを見たくなるような面白い選手だ。ボールを扱う技術に長け、意表を突いたパスからチャンスメイクも狙える。攻撃の技術・センスを感じさせるが、決定的な役割を担えるほどのレベルにあるかと言うとまだ少し難しく、コンスタントに試合に出るには越えなければいけない壁が少なくない。
 課題の一つは、攻撃におけるプレーのムラやメンタリティだ。試合に入ることができればタッチ数を増やしチャンスの起点になれるが、ボールフィーリングが合わない時や試合の強度についていけない時には消えてしまうキライがある。左右のどちらを主戦場にするのか定まりきっていないことも影響しているのだろう。
 もう一つの課題は守備面。鬼木体制でもそうだったように、長谷部体制においても一定の守備基準を満たさない選手はなかなか機会を得られそうにない中、ヴェロンの守備には課題がある。文脈によらず、フラッとボールに寄せてしまうシーンや、プレッシングをかけた後のポジションの取り直しが曖昧なシーンが見られるなど、改善の余地あり。まだ未来ある若い選手なので、課題を地道に克服していき、「助っ人外国人」として頼れる存在に成長して欲しい。


【センターフォワード】

FW 20 山田 新

 24歳で2024年のJ1日本人最多得点者に輝いた注目のストライカー。「強くて速い」ワイルドなストライカーは、昨季はトップスピードでのドリブルから1人で決定機を創出するなど、力強さに加えて奪われない巧みさも見せ始めている。得点パターンは、相手DFとの地上戦を制してゴール前にボールを運びフィニッシュするパターン、クロスに合わせてヘディングや足でのワンタッチシュートがメイン。
 それで19点を叩き出すのは真のストライカーと言えそうだが、このスタイルでは対峙するDFとのデュエルで勝つことを前提としており、相手CBに優位を取れない試合では消えてしまうことも少なくない。身体的な能力の高さに裏付けられたゴールが多いだけに、能力的な優位が取りづらい世界の舞台を目指す上では、より技術的な巧みさを兼ねたストライカーになりたいところ。相手DFを、能力によらない駆け引きによって出し抜き、味方を生かしながら自身の決定機を活かすような振る舞いができるようになれば代表も見えてくる。この辺りは大黒コーチに期待したい部分だ。
 長谷部体制においてはCFの守備の質は戦術の前提となる重要な部分。昨シーズンは山田の守備に否定的なサポーターも多く見られたし、改善すべきだと私自身も感じるが、今季の山田はかなり改善してくるのではないかと感じる。根拠としては、昨年に比べてFWの守備タスクが明確化されていること、共にプレーする選手たちとの年齢差や新しいコーチ陣との関係性などを踏まえると良いコーチングやフィードバックを受け改善しやすい立場にあること、の2つだ。ストライカーたるもの、エゴを持つべきなので、それがプレーのムラに繋がる部分は致し方ない部分はあるが、もう一段レベルの高い選手になるために、より戦術的な貢献ができる現代的なストライカーへの進化を期待したい。


FW 9 エリソン

 長谷部監督および大黒コーチの下で、最も伸び代のある選手の1人と言えるだろう。タックルしにくる相手を逆に跳ね返すほどの強靭なフィジカルとスピード、振り抜きが速くインパクトの強い左足シュートが明確な武器だが、それを活かしたパフォーマンスとはならなかった昨シーズン。
 課題は明確で、ファイナルサードでのポジショニングとアクションの質、ミドルサードでの組み立てへの関与の質、守備時のプレッシングの判断の質、の3つだ。
 ヘディング・ボレーシュートが巧い選手だが、自身の強みを引き出せるようなクロスへの飛び込み方やポジショニングは不得手で、武器は鳴りを潜めている。マイナスのボールを欲しがって、エリア中央から下がった場所へポジションを取ることも多く、チームに幅をもたらす役割を担いきれない場面も。
 ミドルサードにおいての相手DFを背負ってのプレー精度も改善したく、攻撃の繋ぎ目になると言うよりも奪われないがファールを受けてマイボールで中断させる、というシーンが多い。
 守備においては昨季開幕戦でのボール奪取からのゴールのように、献身性を見せることはできる選手だが、単騎でプレスに行って場所を開けてしまうシーンも見られるため、改善が必要だ。ここまで上げたポイントの、前者2つは大黒コーチ、最後の1つは長谷部監督が担当して整理してあげられるところだろう。昨シーズンは、シーズン途中から改善の予兆も見えただけに、今季の爆発を期待したい。エリソンと山田、両ウイングで40〜45ゴール取ることができればリーグタイトルは大きく近づく。


FW 11 小林 悠

 全盛期のキレを失いつつあるものの、未だ変わらず流石の仕事人だ。出場が短い中で昨季もゴールを記録し、シーズン中盤には4-4-2のプレッシングの先頭として役割をこなし、システム転換期のチームの指針となった選手だ。近年は小さな怪我が増え、稼働率が落ちていることに加え、フィジカル的な衰えも全盛期を知るだけに気になるところ。鬼木体制では、得点が欲しい時間帯に、エリア内でのフィニッシュ役として起用される機会が多かった。一瞬でスペースを見つけ、相手DFを剥がしてフィニッシュまで持っていくプレーそのものは衰え知らずで流石なものがある。
 常に100%の出力が難しいからこそ、プレッシングでは出方とタイミングを見極めてタスクを実行できる強みを身につけたと言える。昨シーズンの守備面での貢献は、長谷部フロンターレにおける選手としての寿命を伸ばす要因となりうる。先述のようにCFの守備がゾーンディフェンスの起点となる。裏を返すと、CFの守備が決まらなければMFとDFの守備ラインは機能不全に陥る。少なくともプレッシングにおいて計算が立つ小林は、長谷部体制においても充分役割をこなせる選手と言える。年末の怪我によりキャンプインが遅れたことは懸念材料。競り合いやポストプレーの質が少しずつ落ちているだけに、上半身の動きにより制限が加わってしまうことは心配だが、コンディションを上げてゴール記録を少しでも伸ばし、チームの勝利を決める得点を今季も見たい。


FW 38 神田 奏真

 昨季のプレーから得た印象は、「巧く」「勢いがよく」「しなやかで」それでいて「賢い」選手だ、というもの。オフザボールの動きが良く、体も無理が効くため、エリアの近くでプレーをさせれば決定機を作り出す確率が高い。ブレイクし始めの小林悠を彷彿とさせる。スペースの認知も良いものがあり、エゴイスティックな部分と周りと連携する部分をバランスよく兼ね備えている印象だ。
 ボールを持ってのプレーも流石静岡学園産といったところで、CFの中ではボールの持ち方やスピードの使い方に好感がある。フィジカル的にも慣れてくるであろう2年目は、よりコンスタントな出場を期待したい。組織的な守備を学ぶことになる今シーズンは、将来的に海外のクラブでプレーする際や代表でプレーする際に大きな財産となるだろう。彼の世代ではポテンシャルNo.1の1人。小林悠が成し得なかった、「A代表に主力として定着すること」を個人的に期待している。


読んでいただきありがとうございました!
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