見出し画像

フランス製のウクレレ「Dupont」との出会い🇫🇷

はじめまして!

ロックバンドSPORTS MENでウクレレを演奏している澤田栄一と申します。

自分は長年、音楽を愛するとともに、ギターやウクレレといったアコースティック楽器の魅力に取り憑かれております。

「澤田のウクレレ日誌 ~Parlor Songs~」では、そんな僕の楽器愛をみなさまと共有していければと思います。

お楽しみいただければ幸いです!

画像29

記念すべき第一回は、自分がここ数年、メインで愛用している 「Dupont」(デュポン)というウクレレについて語ります。

↑上の写真で僕が猫と一緒に抱えている楽器です。

こちら、一般的なウクレレと比べると、少し特殊な見た目をしているかと思います。

実は、その成り立ちもかなり特殊で、ウクレレ発祥の地であるハワイから、さらに2つの海を越えて、フランスのジャズ・ギタリスト、Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)にルーツを持っている楽器なのです。

画像30

この楽器について語ることは、そのまま自分自身の音楽遍歴を語ることにもつながります。

渾身の記事になると思いますので、どうぞお付き合いください!笑

Chapter 1. きっかけはアメリカ民謡🇺🇸

ジャンゴ・ラインハルトといえば、 「マヌーシュ・ジャズ」(ジプシー・スウィングとも)という音楽を確立した伝説のギタリスト。

そんなジャンゴと自分が出会ったきっかけはいくつかあったのですが、特に印象に残っているのが、アメリカの伝統音楽に興味を持って掘り下げていく中で巡り合った、ある1枚のスペシャルなCDでした。

画像17

David Grisman & Tony Rice / Tone Poems
アメリカでDAWGミュージックという音楽ジャンルを確立したフラット・マンドリン奏者のデヴィッド・グリスマンと、同じくニュー・グラス界で活躍したギタリストのトニー・ライス。ブルー・グラス界の二人の巨匠が手がけた器楽デュオ・アルバム。

こちらの作品、全編にわたって最上級のヴィンテージ・アコースティック・ギターとマンドリンのみで構成されているすごいアルバムなのですが、なんと、複数の銘器(銘器中の銘器)を1曲ごとに使い分けており、しかもその使用楽器の写真と解説文がブックレットに詳しく掲載されているという、なんとも贅沢なCDなのです。

画像17

楽器図鑑でしか見たことのない博物館級のレアな楽器のサウンドが沢山収録されていて、楽器マニアとしては垂涎ものですが、とにかく音自体が素晴らしいので、アコースティックなサウンドがお好きな方には大変おすすめの一枚です。

そして、このアルバムの後半に、「Swing ’42」という曲が収録されているのですが、これが、思わず頬がゆるんでしまうようなワクワクするリズム、そしてサウンドで、初めて聴いたとき、耳が「!」と反応しました。

ブックレットで、その該当ページを見てみると…

画像17

そこには、「SELMER(セルマー)」と表記された不思議なルックスをしたギターが載っていました。

傍らには、それを抱えたダンディな髭の男の写真…

これが、現代の日本でも人気の高いジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトと自分が出会った瞬間でした。

フランス製のセルマーのギターは、アメリカ製のいわゆるオーセンティックな楽器(マーティン、ギブソンなど)に比べると、デザインが奇抜で、サウンドにも独特なトーンがあります。

そんなセルマーやジャンゴの音楽の魅力にどんどん惹かれていった自分は、それからマヌーシュ・ジャズを掘り下げて聴いてみたり、セルマーのギターについて調査してみたりするようになりました。

画像13


Chapter 2. 遥かなるフランスにて🇫🇷

ジャンゴが実際に使っていたセルマーのギターがこちらです↓

画像13

この斬新なデザインは、Mario Maccaferri(マリオ・マカフェリ)という人物が発明しました。1930年代のフランスでジャンゴと時を同じくして活躍していたクラシックギター奏者で、楽器製作家でもあった彼が、セルマーという楽器ブランドにアイデアを持ち込んで製作されたそうです。

画像14

1932年に「Jazz Model」として発表された最初のギターは、大きな「D」の形をした「D型サウンドホール」に加えて、ボディ内部にアーチ型の共鳴板(リゾネーター)を持っているのも特徴だったようです。

さらに、「カッタウェイ」といって、のちに登場するソリッド・タイプのエレキ・ギターのように、ボディの肩の部分を片方えぐれさせることによって、高いポジションでの左手の演奏性を向上させたのも、当時としては革新的な改良だったと言われています。

画像15

ジャンゴは、このセルマーの新しい楽器を積極的に演奏に活用して、マヌーシュ・ジャズという音楽を作り上げていきました。

このように、楽器の進化には、優れたプレイヤー、音楽家の存在が欠かせないということもまた、重要なポイントです。

Chapter 3. そして…ハワイとの邂逅🌴

ウクレレのルーツは、言わずもがな、ハワイです。

僕もウクレレを弾き始めた最初の頃は、伝統的なマーティンやハワイの老舗ブランドであるカマカのソプラノ・パイナップル(一番小さいサイズ)を演奏していました。

画像17

しかし、SPORTS MENに加入してリード・パートを演奏をするようになったことで、バンドでウクレレを弾く楽しさを感じる一方、音量・音域・音程の安定感など、小さいウクレレでは難しい面にも直面するようになっていきました。

そこで出会ったのが、現在のメイン器となるデュポン・ウクレレハワイアンコア(ウクレレで使用頻度の高い、ハワイ固有種の木材)モデルです。

精巧な技術で現在でもセルマー・ギターを製作しているフランスの工房で作られたウクレレです。

画像17

画像17

画像17

テナー・サイズという、ウクレレの中では大きいサイズのボディを持ちながら、スケールはコンサート・サイズ(ソプラノとテナーの中間)。フレット数は21とウクレレの中ではかなり多め。そして、D型のサウンド・ホールを採用しているのが特徴です。

何より魅力的だったのは、ピアノで「ポーン」と鳴らしたような音質で、なおかつ、音量も大きかったことです。
(かつて、ジャンゴもセルマー・ギターを評して「ピアノのような音」と形容したようです。)

果たして自分の演奏スタイルやバンドの音楽がマヌーシュ・ジャズと親和性を持っているのかどうかはわからないのですが、このウクレレを選んだ1番の理由は、単純に楽器としてとても優れており、その道具としてのスペックが自分の求めているものと見事にマッチしたことでした。

画像17

ちなみに、その後、ボディの木材がメイプルとスプルースで、スケールがテナー(ワンサイズ上のモデル)のデュポン・ウクレレとも出会いました。

こちらは、調弦を変えてみたり、色々と実験をしてみているところです↓

画像17

画像17

デュポン・ウクレレは、フランスの伝統とハワイの民族楽器が交わることで楽器としての新たな可能性が拓けた、とても魅力的な楽器だと思います。

(もともと、ウクレレの由来がポルトガルのマデイラ島の弦楽器ブラギーニャであることを考えると、この混血も全く不思議ではない現象です。)

最近、ハワイ発祥の民族楽器であるウクレレが、ハワイアン・ミュージックにとどまらず様々な音楽に用いられるようになっています。

これは、楽器の進化という側面でも良い流れであるような気がしています。

自分もその一端を少しでも担えれば本望です。

画像17

デュポン・ウクレレの持っている可能性を引き出せるように、これからも精進していきます!

せっかくなので、実際に演奏している動画を2つほど載せさせていただきます↓

最後まで、ご精読いただきありがとうございました。

今後も、さまざまな「楽器」を掘り下げていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?