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【Doctor Tのスポーツ医学】コロナ流行中でも運動を勧める理由 ~免疫も気分もアップ!~

 こんにちは、Doctor Tです。前回はコロナにかかり治った後の運動についてお話しました(記事はこちら)。今回は、コロナにかかっていなくても運動を勧める理由をお話します。

免疫機能を上げ、気分を晴らしてくれるから!

 運動には免疫を上げる効果があり、それによってウイルスのからだへの侵入を防いだり、ウィルスの増殖を抑えてくれます。他にも抗炎症作用など科学的にそのメカニズムが示されています。

 そして、私が運動を勧めたいもう1つの理由は「動くと気分が晴れる」からです。免疫が上がるとわかっていても実感が湧かないですよね。でも「スッキリする」「いい気分になる」というのはすぐに実感できます。私自身が運動する理由の一番は、これです!コロナで余計にスッキリしない気分を、運動で晴らしてみませんか?そしてこれは巡りめぐって免疫を上げることになるのです!

 ここから少し理論を説明します。

免疫システムをブーストするには

 ハーバード大学は、一般的に免疫を上げるために以下のことを勧めています。(太字は運動が貢献すると考えられる部分)

  • タバコを吸わない

  • 果物や野菜の多い食事を摂る

  • 定期的に運動する

  • 健康的な体重を維持する

  • 飲酒する人は適度に

  • 十分な睡眠を取る

  • 病原体が体に入るのを避ける(手洗いなど)

  • ストレスを最小限にする

  • 推奨されているワクチンをすべて打つ。ワクチンは病原体が体の中で悪さをする前にその感染と戦う免疫システムを発動させます。

運動と免疫とCOVID-19

 アメリカスポーツ医学会も、ガイドラインが推奨する定期的な運動をして心肺機能を維持しておくことは有益だと言っています。

ストレスが免疫に与える"悪影響"

 コロナパンデミックで、旅行や友達との食事など生活の中での楽しみが減ったり、世の中の閉塞的な雰囲気でストレスは増えています。ストレス下に置かれると体内では糖質コルチコイド(ステロイドのひとつ)というホルモンが増え、これは免疫に関わるほぼすべての細胞に作用し免疫機能を抑えてしまいます。

Liberman et al. Regulatory and Mechanistic Action of Glucocorticoid on T and Inflammatory Cells. Frontiers in Endocrinology. 16 May 2018, Figure2を筆者が再編成

 免疫システムは、からだを守るため幾つかのアプローチで異物をやっつけるようになっています。しかし、ストレスはそのほぼすべての細胞の働きを弱めてしまいます。ストレスのインパクトは強烈ですね。

運動が免疫に与える"好影響"

 運動は、感染した細胞を認識し、殺す免疫細胞を何百万と発動させると言われています。この免疫細胞たちが血液や組織内をパトロールし、早期に異常を認識することで感染が進行、悪化する前に対処できる、つまり抵抗力がつくということです。

 また運動は、免疫を維持するためのタンパク質を放出します。IL-6などのサイトカインです。このIL-6は感染した場所に免疫細胞を向かわせるシグナルとなります。

運動はストレスも減らす!

 運動がストレスを発散させる理由はいくつかあります。Mayo clinicのwebsiteからの情報です。私自身、体を動かすと気持ちがスッキリするのを実感しています。

  • エンドルフィンという気分が良くなる脳内物質を増やす。ランナーズハイや体を動かした後の爽快感はこれから来るのです。

  • 瞑想のような効果がある。運動して自分のからだのことに意識を集中させることで日常の嫌なことを忘れられたり、すこし楽観的になれると言われています。

  • 抑うつ気分や不安を軽減する。その結果睡眠が改善することも期待されます。休日起きるのが遅くなってしまった日には運動してその夜も普段どおりに寝れるようにしています。

 こうしてストレスを減らすことによって、免疫を弱めるコルチコイドの分泌を抑えて、免疫を上げることが出来るわけです☝️

運動を始めようと思ったあなた!

 ここまで運動をすることのメリットをお伝えしました。わかってはいるけど、運動の習慣がないとなかなか動けないものですよね。やってみようと思ったあなたは、それで大きな前進です。でも、あと一息!続けることで効果が期待できるのです!

続けることが大切!続けるためのコツ

1. SMARTなゴール設定をする。

Specific 具体的な運動数字で目標を立てる。達成出来たかどうかが目に見えるように。
Measurable 目標体重や回数など測れるもので目標を決める。
Attainable 今の自分が頑張って実現可能なレベルにする。難しすぎず、簡単すぎず。
Relavant 自分にとって意味のあるものやりたいものにする。
Time-limited 期限を決めて目標達成したかを評価する。

2. 一緒に運動する友達を見つける。

 ジムに行くのが楽しみになったり、誰かが待っていると思えば重い腰を上げるきっかけにもなりますよね。私も一人で運動しているとなかなかウェイトを上げられませんでしたが、友人に励まされようやく負荷を上げることができた経験があります。

3. 頑張りすぎない。

 辛くなってやめてしまうより、気楽に長く続けましょう。達成可能な目標で!「今日はストレッチだけ」「ヨガで気持ちを落ち着けるだけ」それでもいいんです。

4. 短い時間を積み重ねる。しっかり時間を取る必要はない。

 時間が取れないというのはよく患者さんから聞くコメントです。まとまった時間を取らないといけないと思っていませんか?そんなことはありません。この短い時間は1分から1分半でもいいんです。HIITヒットというトレーニング方法がありますね。これは1分くらい全力で走り、その後インターバルを取るというトレーニングで安全で心肺機能を高める効果も証明されています。

まとめ

  1. 免疫能力を上げるための生活習慣の一つが定期的な運動である

  2. ストレスは免疫機能を下げる

  3. 運動はストレスを減らす、睡眠を改善するなど間接的にも免疫を改善する

  4. 運動しようと思ったあなたは素晴らしい!

  5. 健康のための運動は短期集中ではなく、sustainable(持続可能)で!

 コロナ感染が拡大してきたので、運動するときは人の少ない場所(できれば屋外)と時間を選びましょう。運動のためにウィルスを拾ってしまうことになりませんように!

安全なジムの選び方はこちら。安全を保障する訳ではありませんが、現行のガイドラインをまとめています。参考に利用してください。


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