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スノースポーツでも脳振盪(のうしんとう)【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】
こんにちはDoctorTです。長めのお正月休みが明けて1ヶ月になりますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
私は初めてクロスカントリースキーをやってみました。普段使わない筋肉を使ったようで、終わってから腰まわりに疲れがきました。
さて、今回もスノースポーツでも見られるケガについてお話したいと思います。
スキーやスノーボードで多いケガは何だと思いますか?
スノースポーツで多いケガ
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マークは脳振盪
頭のケガは少なくない
スキーでは下肢(特に膝)のケガ、スノーボードでは上肢のケガが多いです。ケガというと手足のことにばかり意識が行きがちですが、忘れていけないのが頭部のケガです。
頭部のケガで最も危ないのが、頭蓋骨の骨折や頭蓋骨内の出血です。これはかなりレアです。そこまでひどくなくても、注意が必要なのが脳振盪です。
脳振盪を見逃すな
みなさんは脳振盪のことをどのくらいご存知ですか?
数年前の記事にも書きましたが、CTやMRIで出血など脳の構造に異常がない+受傷後になにか症状があった場合に脳振盪が疑われます。受傷したときの一時的にだけ症状が出て、しばらくして消えてしまうこともあります。これが脳振盪の診断を難しくさせ、その後の適切な対応ができなくなる理由のひとつです。
知識を持って疑うことが大切
脳振盪はその症状が一時的で、その後よくなったように感じてしまうことがあります。そのため本人やその場の目撃者が意識しなければ見逃されてしまいます。しかし、それでも脳の細胞がダメージを受けた事実は変わらないので、次の頭への衝撃に対して非常に敏感になっています。
脳振盪の症状
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意識消失やケガをした前後の記憶喪失も症状にあり、本人は自分に何がおきたかがわからないこともあります。状況を見ていた周りの人が疑うことも大切です。
脳振盪になった脳細胞は敏感
脳振盪は目に見えない(機能的な)異常が起きているという事がわかっています。そして前の脳振盪からの時間が短いほど、脳振盪の経験回数が多いほど、次に頭を打ち付けたときのダメージが大きくなります。症状が強く出て、回復にも時間がかかります。場合によっては出血し命に関わることもあるので、構造が壊れていないからといって軽く見ることはできません。
脳振盪を疑ったら「即」運動を止める
こちら↓の記事にも書きましたが、「もうちょっと…」が後に後悔を招きます。脳振盪を疑ったら、すぐにスキーやスノーボードをやめましょう。
脳振盪を疑ったら医師の診察を受けることを勧めます。出血などの危険な症状がないか、また脳振盪の症状の評価を受けるためです。もし診断を受けた場合は、症状の強さにもよりますが、少なくとも最初の48時間は安静にすることが推奨されています。
安静は体だけではなく脳も休める
体を休めるだけではなく、脳も休める必要があります。頭を使うこと、つまり、仕事や勉強、携帯やパソコン、テレビを見るのも避けるように勧められています。48時間を過ぎたら症状に合わせて、徐々に日常生活に戻していきます。ここから徐々に活動のレベルを上げていきます。
受傷後48時間では、スキーやスノーボードなどまた頭を打つ可能性もある活動への復帰はできません。まだ脳がダメージから完全に回復したわけではないからです。
まとめ
スノースポーツでも脳振盪は起こる
脳振盪は一時的な症状だけのように見えることもある
本人だけでなく周りの人が脳振盪を疑ってあげることも必要
脳振盪を疑ったら、運動は即終了
受傷後48時間は心身ともに安静
私の働くクリニックでも頭部をぶつけたり、首を振られたような受傷で受診される患者さんがいます。特に旅行客が多く、折角の休みを無駄にしたくないと滑りに戻りたがる方もいます。また、ケガをした当日の飛行機が予約されている場合もあり、患者さんに休息するように話をするのが難しいなと痛感する今日このごろです。
ケガをする前に脳振盪について知っておくことで、いざ脳振盪と診断されたときに適切に行動できるようになればと思ってこの記事を書きました。もちろん、頭のケガをしないように予防策を取ることもお忘れなく!
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