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ダブル・ゴール・コーチングセッション#5『勝者の再定義』レポート

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、勝利と人間的成長の両立を目指して、スポーツコーチ同士が継続的に気軽に学べる場として、2023年3月からダブル・ゴール・コーチングセッションをリリースしました。

今回は2023年4月18日(火)に行われた、ダブル・ゴール・コーチングセッション#5勝者の再定義(ELM)の内容をお伝えします。
なお、今後NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブで行われる予定のイベントについては、下記ホームぺージよりご確認ください。

勝者を再定義する必要性

冒頭では、2023年4月11日のニュースで大牟田高校駅伝部の前監督が体罰を理由に退職したものの、保護者からの要望で非常勤で部活動指導に復帰することになったニュースを取り上げました。

今回の報道では、さまざまな背景がある上で良いか悪いかはさておき、体罰が依然として行われていることと、勝利が重んじられすぎていること自体は課題なのではないかという問題提起を参加者へしました。

なぜ勝利至上主義に陥ってしまうのか?~現場のコーチの視点から~



参加者A

いろいろな保護者の考えがあって現場に復帰することを求めたのかなーと思っています。

大牟田高校には陸上をするためにする人たちがたくさんいて、全国大会に出場することで進路が決まるということもあるのではないかなと思います。

つまり、選手の勝利が進路選択に関わってくることが勝利至上主義に陥ってしまう原因なのかなと思いました。


参加者B

私もその通りだと思います。加えて、勝利という価値への思い込みや視野の狭さかなと思います。何のためにスポーツをやっているのか?が勝利のためしかないことは課題かなと思います。

こういう話は自分自身がバスケットボールをしていたときも部員同士で話をしていましたが、何でだろう?ということを本を読んだりしながら考えたのが一年半くらい前ですね。

これって勉強や仕事も同じだと思っていて、最近はビジネスだとパーパス経営なども言われ始めています。

利益を出すことが絶対なんだという考え方だけではないということを重んじている会社も増えています。

最近ではウェルビーイングということが言われはじめていたり、受験やテストも何のためにやるの?ということを考えるって大切ですよね。

テストは試すっていう意味ですけど、多くの場合テストが目的になってしまっていますよね。
この考え方ってダブル・ゴールにも近くて、特に受験はこうした結果至上主義の考え方を子ども達に押し付けてしまって子どもたち自身にストレスを与えてしまっているので社会問題になっているなと思っています。


参加者C

勝利至上主義の原因は、やはり目的と目標が逆転してしまうことによって起こることなのかなーと思います。

何のために?ということがもともとあったのかなかったのかどちらかよくわかりませんが、あったとしても目標が目的の上にいってしまうと、勝つことが一番優先になってしまうのかなと思います。

人間的な成長って多くの指導者が口にすることですし、勝利至上主義のチームでも人間的成長っていうんですよね。

けれど、目的と目標が逆転してしまっていることが多いんですよね。
だからこそ、大会の在り方を見直すっていうことがおこなわれはじめていますが、トーナメントになっちゃうと勝ち上がっていかないといけなくなってしまいますよね。

だからこそ、勝つことだけが価値になってしまうっていう難しさもあるのかなーっていうなところはすごく感じます。

だから、勝つことだけを目指すチームがあってもいいのかなとか、ダブル・ゴールを目指すチームがあってもいいのかなとかそういうことを最近考えたりもしています。

それでも、ダブル・ゴールを目指すからこそ結果的に勝利につながるんじゃないかなということでこうして学びにきています。

勝者の再定義とは?

勝者の再定義とは、結果としての勝者(従来の勝者)から熟達の勝者の考え方に、勝者を再定義しましょうということです。

従来は試合や大会を勝ちぬいて相手よりも高い得点や成績を残した人・チームが”勝者”とされていた一方で、ダブル・ゴール・コーチングでは、”自らを成長させ続けることができる人・チーム”を勝者として定義しています。
詳しい内容については下記の記事をご覧ください。


勝者の再定義がなぜ必要か?

スポーツコーチがなぜ勝者を再定義する必要があるかについては、3つの観点から説明することができます。ひとつとして、結果のみが評価の判断軸になってしまうと選手のパフォーマンス発揮が低くなってしまうことがあります。そのほかにも、子どもの倫理的な価値観をゆがめてしまったり、子ども自身がスポーツを嫌いになってしまいスポーツ離れの原因になるといったことも、過去の研究の中では報告されています。

一方で子どもの視点にたつと、子どもがスポーツをする目的について調査された内容では、大会などで良い成績をおさめることや、体力・技術を向上させることにある傾向があることが報告されていて、子ども自身が結果のみにフォーカスしがちになってしまうことが考えられます。

だからこそ、NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは大人が子どもの未来を考えて指導することの重要性があると考えています。

ここまで話をして感じたこと

参加者A

こういった話を聞いているとまさにその通りだなと感じます。自分はこういったことを気にしながら現場で指導していますが、勝てる人を育てるというのが自分のコーチングにおけるゴールでもあるので勝ちにたいしてこだわりを持てる人を育てたいなーと思っていて県で3番目、4番目のチームくらいにはなってきました。

組織づくりやチームづくりの話も入ってくるので少し話が変わってくるかもしれませんが、ある程度自走するチームになってきた感覚がありますが、ぬるま湯になってしまうこともあるかもしれないので、その辺も考えながらチームづくりをしないといけないなぁと思っています。

また、勝っているチームの人などは説得力も非常にあるなあと感じますが、そのあたり他の方はいかがでしょうか?

参加者B

他の考え方なども実践しながらやっていたのですが、子どもたちが勝ちを求めすぎる傾向があるなと思っています。昔から実績を残していたことなどがチームに残っているので、指導者として再定義しようと指導しても子どもたちがヤキモキしがちだなと思います。

自分は女性で女子の選手を教えているので、女性としてできることや社会にできることを教えたいと思っているが、試合が近づいてくればくるほどそこに意識が向きがちになってしまうので、すごく難しいなと思いました。

WBCもこの間ありましたが、先生方同士でWBCよかったですよねーという話をするんですが、トップレベルだからこそ任せられるんですよということを言われるし、難しいなーと思いました。

どれがいいのかわからないんですが、子ども達への指導でどうバランスを取るのかについては、毎日色々考えたりしています。


参加者C

チームのポリシーやビジョン・ミッションを最初にプレーヤーや他のコーチに共有することは必要なのかなと思いました。

もちろん勝ちを目指していけないということではないと思いますし、むしろ目指すべきだと思いますね。ただし、勝利はファーストゴールであってセカンドゴールも考える必要があるんじゃないかなと思っています。

あとは子ども相手の場合は保護者も関わってくると思います。
だから保護者にも自分たちのチームの方針を伝えることも必要なのかなぁと思いますし、これは会社においても勉強においても必要なことなんじゃないかなと思います。


参加者D

勝者の再定義というところでいうと、チームのビジョンや何を目指しているのかは、保護者も含めて組織に携わる全員に共有する必要があるのかなぁと思います。

最終ゴールとして勝利を目指すなということではなく、勝利のためのプロセスが重要だと思います。

自走ができることは大切なポイントであって、コーチは子どもが自走できるようになるためにどういうサポートができるのか?が大切かと思います。

また、スポーツの部分だけではない部分も大きいのかなと思います。スポーツをやっている時間以外の時間の使い方は重要なのかなと。

今を重要視するのか、将来を重要視するのか選択肢は子どもや保護者が選べばいいと思いますが、チームとしては選択肢を表明してあげる必要があるのかなと思います。

強いチームは人も集まってきやすいかと思いますし目的が明確になりやすいので、全国大会出場を目標に掲げているチームも多いですが『そこに向かっていくのか社会人になったときにどうなるのか?』をコーチがどうみているかは重要なポイントかなぁと思います。

勝者の再定義をチームに落とし込むためには?


Aグループ

幼稚園に高校生を連れて行きたいなと思っています。
競技以外のところから学ぶことは非常に大きいなという話になり、新しい野球競技を北海道で小学生向けに普及している人がいて、それを見に行って参考になったことがたくさんあった。

そういった学びは非常に大きいんだろうなーと思っていて、幼稚園生とかだと言うことをきかない子どもが多いし、楽しいことがとにかく好き。

大人になればなるほど、そういった純粋な気持ちも薄れていくこともあるのかなと思っているので、そういった純粋な気持ちを呼び起こしてくれそうな気がしていますし、幼稚園生などからエッセンスをもらうのも良い案なのかなーと思いました。


ファシリテーター(有田)

気づきを得るからこそ今までの自分から解き放たれるみたいな感覚なんですかね?

Aグループ

そうですね。競技にこだわりすぎなくてもいいんじゃないかなーという気もしていますね。

グループB

幼稚園に教えにいくっていいなーって思いました。私のチームは中高一貫校なのですが、中高一緒に練習していて、それはいい環境だったんだなーと改めて再認識しました。

でもそれがコロナでできなくなってしまって、コロナ禍の中高生ってちょっと違うなーと思っていたのですが、競技にこだわらず色々な学びができる場所をたくさん与えてあげたらいいんだなぁという想いにかられました。

また、ミスに対するルーティーンがチームにはあるが、それに乗り切れない子どもがいたんですが、自分なりのルーティーンがあってもいいんじゃないかな?というアドバイスもらえて非常によかったです。

ファシリテーター(青野)

Aグループからヒントを得られたなと思ったのは、幼稚園生を自分の鏡として映し出すことで、幼稚園生に伝えること自体が自分自身への気づきになって、学びになるんじゃないかなと思いましたし、自分たちの世界に閉じこもらないことって大切なんだなと改めて思いました。


本日のプログラムで思ったこと・感じたこと・やってみたいと思ったこと


参加者A

ルーティーンを個別につくるというのはいいアイデアだと思ったので、ぜひやってみたいと思いました。


参加者B

自分の振り返りができたり、新たな視点が入ってきて次に仕掛けて行きたいとおもったことと、それ以上に自分自身の在り方は非常に大切だなと感じました。

参加者C

印象的なことがたくさんあったが、幼稚園の話が印象的でした。幼稚園生がある種自分の鏡になるなというのは学びになったかなと思います。
ダブル・ゴールの話をしながら、高校生が中学生に教えるみたいなのは、マウンティングが起こらない範囲でやっていくこともいいなと。

参加者D

勝利だけではなく、人間的成長ができる人材を育てるためにはどうしたらいいのか?ということも含め、自分だけではなく大人側が情報を共有することは非常に重要だなと思っています。その中から、子ども達にどういうアプローチをするのか?ということを他の大人とコミュニケーションをとりながらやっていけるといいなーと思いました。


参加者のみなさまありがとうございました!
次回以降のイベントは下記ページよりご確認ください。


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